『Traces of Disappearance』開催中

エスパス ルイ・ヴィトン東京は、第9回目のエキシビションとして、ミュリエル・ラディック(Murielle Hladik)とエヴァ・クラウス(Eva Kraus)の2人をキュレーターとして迎えたグループ展『Traces of Disappearance(消失の痕跡)』を開催します。

「保存と腐朽」や、「永遠性の希求と儚さ」など、相反する要素が共存する「両価性」をテーマとした今回の展覧会は、見る者を「時の経過」の考察へと誘います。人間や、人間によって作られたものを含め、永遠に存在するものなどこの世にはなく、あらゆるものは時の影響を受けます。

今回の展覧会では、畠山直哉(Naoya Hatakeyama)、カスパー・コーヴィッツ(Kasper Kovitz)、アンヌ&パトリック・ポワリエ(Anne and Patrick Poirier)、袁廣鳴(ユェン・グァンミン/Goang-Ming Yuan)の4組のアーティストが、多種多様なモチーフや物質、媒体を用いてこの概念を表現します。

日本人アーティストの畠山直哉は、フランス南部に位置するヴァントゥ山の写真を通して、理想的である一方、地中に潜む見えない力に抗うことはできない風景をテーマに選び、崇高の概念に迫ります。本作からは、剥き出しで荒々しくも崇高な高地がもつ、さまざまな危険を秘めた美しさとともに、戻ってきた安らぎと黙考の静けさが伝わってきます。


畠山直哉

オーストリアの作家、カスパー・コーヴィッツの新作『The Sheer Size of It』では、「一時性」がテーマです。直径7メートルにもおよぶ本作に近づくと、この作品が実は食用のグミ素材で作られていることが分かります。時の経過とともに、素材の色素はまるで夢の残像のように薄まっていく – カスパー・コーヴィッツはこの変化を通して、素材のはかなさや、作品そのものの一時性を表現しています。また、グミ素材を用いて作品に描かれている理想的な場所の情景と、素材の透過性により見える作品の背後に輝く東京の地平線とが透けて融合することで、自然と都市の対比に応じるように、想像と現実からなる絵画が形作られます。しかし、その場所のユートピア的な自然もまたはかなく変化しているのと同様に、絵画の素材は朽ちていきます。


カスパー・コーヴィッツ

記憶の分類システムとその流れ – 記憶がどのように保存、分類、忘却されるのか – に注目したフランス人アーティストのアンヌ&パトリック・ポワリエは、哲学者アンリ・ベルクソンが唱えた「記憶の円錐」にインスピレーションを得て、高さ7メートルにおよぶ円錐型のインスタレーション『The Soul of the world』を制作しました。作品に登場する
鳩は、記憶そのものの不確かさや脆さを、また鳩が飛び交う様子は、記憶の変遷 – 記憶がどのように保存、分類され、また忘却されるのか – を表象しています。アンヌ&パトリック・ポワリエの「生きている」インスタレーションは、捉えがたいものを、目に見えて感じることができる空間となっています。


アンヌ&パトリック・ポワリエ

袁廣鳴(ユェン・グァンミン)は、動くデジタルイメージ作品『Disappearing Landscape – Reason to be a leaf』を発表します。カメラが鮮やかな緑色の葉に沿って動き、一見すると生け垣のように思われるものの、続いて見ていくと、デジタル処理を施された葉の人工的な配列であることが明らかになります。葉脈、葉静脈など葉のすべてのディテールが徐々に消え去り、形式的なかたちのみが残るのです。このシリーズにおいて袁廣鳴(ユェン・グァンミン)は、イメージの重要な特徴を消すことで現実に変化を与え、その重要な特徴なしにイメージとしての存在を維持できるのかという疑問を提起しています。


袁廣鳴(ユェン・グァンミン)

今回、エスパス ルイ・ヴィトン東京で展示される作品群は、「理想の地」(畠山直哉)、「聖地」(カスパー・コーヴィッツ)、「記録された記憶と記録されない記憶」(アンヌ&パトリック・ポワリエ)、果ては「デジタルメディアを用いて再現された人工的な自然界」(袁廣鳴/ユェン・グァンミン)を巡る旅へと来場者を誘います。人間の実存に深くかかわる問いかけが、普遍的な衝撃をもたらすことを認識させてくれる展覧会をお楽しみください。

【展覧会詳細】
『Traces of Disappearance(消失の痕跡)』
会期: 2014年1月18日(土)~ 4月13日(日)
会場: エスパス ルイ・ヴィトン東京
住所: 〒150-0001 東京都渋谷区神宮前5-7-5 ルイ・ヴィトン 表参道ビル 7 階
電話: 03-5766-1094
開館時間: 12:00‐20:00
休館日: 不定休
入場料: 無料
エスパス ルイ・ヴィトン東京
Tel. 03-5410-8150 / Fax. 03-3478-1175
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All photos:
©Louis Vuitton / Jérémie Souteyrat
Courtesy of Espace Louis Vuitton Tokyo

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