Nam Bang!

4.4 – 6.21
カスーラ・パワーハウス (シドニー)

Dinh Q. Lê
The Penal Colony: A Mapping of the Mind
2008
4 channel video installation
Courtesy the artist and Casula Powerhouse

何十年か後にさりげなく振り返って見ただけでも、ヴェトナム戦争規模の紛争はいまだに緊張を高めかねない。公式な戦争終結34周年に合わせて開催された本展には、すでに多数のヴェトナム系オーストラリア人から抗議が寄せられている。枯葉剤の発ガン効果に焦点を当てることによって、共産勢力のヴェトコン側を擁護し、自衛戦争としての側面を取り上げていないというのだ。
論争はさておき、出品された絵画、インスタレーション、マルチメディア作品は、当時のかつてない戦争報道を思い起こさせる。紛争の様子を、ほとんど即座にお茶の間に届けたのだ。
参加作家は、ヴェトナム、豪州、韓国、米国、フランスからの約25人。オーストラリアは米国などとともに南ヴェトナムの同盟国として参戦したが、紛争を回顧するシリーズ第3 弾のために作品制作が委嘱された。
豪州はこの戦争の脇役とは言いがたい。戦死者は520人に上り、1980年代半ばまでに、9 万人以上のヴェトナム難民が移住してもいる。
ヴェトナム育ちだが幼いころ米国に移住したディン・Q・リーは、コンダオ島の刑務所の内部に目を向ける。ヴェトナム人政治犯が捕虜として収容され、南ヴェトナム政府と米国の支援者たちによる拷問が行われた場所だ。
パリとデュッセルドルフを拠点とするライザ・グエンは女性の古い写真を使用し、オーストラリア海軍の一員として従軍した退役軍人であるデニス・トルーは、写真、テキスト、コラージュを使って喪失感とトラウマを検証する。
参加作家にはショーン・グラッドウェル、ユー・スンミ、チャン・チョン・ヴーらも名を連ねる。本展キュレーター、ボイ・チャン・フイン・ビーティは次のように説明する。「ヴェトナム戦争の影響のひとつに世界中に広がるヴェトナム系ディアスポラの問題がある。戦争の後遺症について語る際には体験の普遍性を考慮します」どちらの側に付いた者も、戦争を体験し、肉体的、精神的、文化的に傷を負ったのだと、作家たちは言っているようだ。
集団的な傷みの体験はやがては、時の経過とともに築かれた現実の、そして想像上の障壁を越えて、個々人を結束させる。(オリヴィア・ハンプトン)

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http://www.casulapowerhouse.com

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