2010年記憶に残るもの ニュートーキョーコンテンポラリーズ

東京の次世代を担うギャラリー7軒で組織されるニュートーキョーコンテンポラリーズに、2010年における記憶に残る展覧会を尋ねた。敢えて、自分のところで行われた、もしくはギャラリー作家の展覧会ではないものを挙げてもらうことを条件とし、選んでもらった。

青山|目黒

『平明・静謐・孤高−長谷川潾二郎(はせがわりんじろう)展』
2010年4月17日-6月13日
平塚市美術館
http://www.city.hiratsuka.kanagawa.jp/art-muse/2010202.htm


長谷川潾二郎, 紙袋, (1970)
たまに読み返しては発見のある本の様な作品でした。そこがアートの良いところだと思います。同様に良かったのが、シュウゾウ・アヅチ・ガリバー 、村上友晴、岡崎和郎、ジュン・ヤン、リー・キットでした。


シュウゾウ・アヅチ・ガリバー 『EX-SIGN』
2010年2月27日-4月11日
滋賀県立近代美術館

静けさのなかから:桑山忠明/村上友晴
2010年6月1日-7月4日 (村上友晴展)
名古屋市美術館

岡崎和郎
2010年9月11日-11月3日
神奈川県立近代美術館 鎌倉

ジュン・ヤン『忘却と記憶についての短い物語』
2010年7月24日-9月11日
リー・キット『Well, that’s just a chill』
2010年10月30日-11月20日
ともにShugoarts

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ARATANIURANO

フェリックス・ゴンザレス=トレス 『Specific Objects without Specific Form』
2010年5月22日-8月29日
バイエラー財団美術館、バーゼル
http://www.fondationbeyeler.ch/


Felix Gonzalez-Torres, Untitled (For Stockholm), (1992), Light bulbs, porcelain light sockets and extension cords, Overall dimensions vary with installation, Twelve parts: 42 ft. in length with 20 ft. of extra cord each © Felix Gonzalez-Torres Foundation. Courtesy of Andrea Rosen Gallery, New York.
豊かな田園風景が見える自然光の美しい展示空間の中、トレスの作品が存在感をもちながら、部屋ごとにピカソ、モネから、ジャコメッティ、ポロック、フランシス・ベーコン、リヒターなどバイエラーファウンデーションならではの素晴らしい近現代の作品と対峙しインスタレーションされているのが印象的な展覧会だった。

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ZENSHI

『Traveling Show』
2010年4月15日-9月17日
ユメックス財団ギャラリー、エカテペック
http://www.lacoleccionjumex.org/


Installation view of Traveling Show
中南米最大級のコレクションを誇るメキシコ、エカテペックにあるユメックス財団。年3回くらいのペースでキュレーターを招致し、所有するコレクションを使って企画展を開催している。今回は2011年イスタンブール・ビエンナーレのメイン・キュレーターも務めるブラジル人 アドリアーノ・ペドローサがキュレーションを行った。参加作家は ヴィト・アコンチ や ダグ・エイケンなどそうそうたる顔ぶれ。メキシコのアートフェアに訪れる者達にとっては毎年必見のコレクションである。

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Take Ninagawa

ポール・セック 『Diver, A Retrospective』
2010年10月21日-2011年1月9日
ホイットニー美術館、ニューヨーク
http://whitney.org/Exhibitions/PaulThek


Untitled (Four Tube Meat Piece), (1964),
from the series Technological Reliquaries

ミニマリズムの時代に生きていたにも関わらず、ポップアートへのアプローチと、様々なメディアを使って自身のアーティスティックな言語を生み出したポール・セックの母国アメリカで初めての回顧展となった今展は、歴史に新しい視点をもたらしたと思います。最後の部屋はポール・セックが他界する間際に開催された展覧会の再現で、下の方に位置されたペインティングの展示はとても美しく感動しました。肉に始まり「time is a river」と書かれたペインティングに終わる、人生を問う展覧会でした。
image credit: Untitled (Four Tube Meat Piece), (1964), from the series Technological Reliquaries, Wax, metal, wood, paint, plaster, rubber, resin, and glass, 41 x 41.3 x 13.7 cm. Kolodny Family Collection © The Estate of George Paul Thek; courtesy of Alexander and Bonin, New York. Photograph by Orcutt & Van Der Putten

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MISAKO & ROSEN 

『マン・レイ展 知られざる創作の秘密』
2010年7月14日-9月13日
国立新美術館
http://www.nact.jp/

『ルース・ラスキー』
2010年9月10日-10月23日
レシオ3, サンフランシスコ
http://www.ratio3.org/


Installation view
アートが好きな自分の定番と思っていたマン・レイの世界に新たな発見があったのとマニア心をくすぐる要素がちょろちょろと。
現在交流のあるアーティストとの「それあるある」といったつながりをこの展覧会で見いだせたのが個人的にうれしかった。

罪深き愉しみというのか、ルース・ラスキーの作品から伝統のようなものを通してある種の静けさを思い出した。とはいえ、取るに足りないことでさえも、というよりそうしたものこそが、この作品がとことん同時代的だと気付かせてくれた。だからこそこの作品が素晴らしいのだろう。

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無人島プロダクション


Installation view
個人的なことですが、今年初めて中国に行きました。滞在中に見た展覧会の中でも、上海外灘美術館(ROCKBUND ART MUSEUM)で開催された蔡国強キュレーションの『蔡國強:農民達芬奇(Cai Guo-Qiang: Peasant Da Vincis)』展がダントツによかったです。上海万博に合わせる形で開催されたこの展覧会は、蔡さんが収集した、不思議なロボットや円盤、ヘリコプターなどの発明品を作る中国の発明家たちの作品をベースに蔡さん自身のメッセージが加えられた、美術館内外を使った大インスタレーションでした。
美術館入口脇の外壁に書かれた「農民譲城市更美好」は「農民」を入れることによって、「Better City、Better Life(城市譲生活更美好)」をテーマにした上海万博への対比になっています。万博が「国」のパワーを見せるものならば、蔡さんのこの展覧会では農民をはじめ中国に生きている個人個人のパワーが見える、蔡さんの強いメッセージを感じるものでした。

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Yuka Sasahara Gallery

横山裕一 『ネオ漫画の全記録:「わたしは時間を描いている」』
2010年4月24日-6月20日
川崎市民ミュージアム
http://www.kawasaki-museum.jp/neomanga/


Installation view, Courtesy: Kawasaki City Museum, Photo: monogocoro/Satoshi Tanaka
人工芝が敷かれた展示スペースには、「トラベル」などの原画が円状のガラスケースにずらりと並び、それを囲むように、過去の絵画作品が展示されていた。そのため鑑賞者は会場内をぐるぐると何周も歩きまわりながら見るのだ。
奥の小さい部屋には作家本人が制作に使用する机が置かれており、制作中に聞いている「音」」が入っているカセットテープが展示されていた。
台詞がほとんどない横山裕一の「ネオ漫画」に描かれる「時間」や「空間」が、この展示空間にも再現されているように思えた。

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ニュートーキョーコンテンポラリーズ

ニュートーキョーコンテンポラリーズは、2008年に新丸ビルで開催されたアートイベントを皮切りに発足したアソシエイションです。
次世代を行く7つのギャラリーにより結成されました。
共同でイベントを開催するなど、東京のアートシーンの活性化を目指しております。
それぞれのギャラリーが毎回自身のギャラリーで、個性豊かな展覧会を開催しています。
多くの観客がアートに出向く機会を持つ事を目標としています。
(公式ホームページより)
http://www.newtokyocontemporaries.com/

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