日産アートアワード2015

2015年11月14日より、2013年に続く2回目の日産アートアワードの展覧会が神奈川・横浜のBankART Studio NYKで開催される。第一次選考を経て選出された7名のファイナリストがそれぞれ新作を発表する。

日産アートアワードは、日産自動車株式会社が創立80周年を迎えるにあたり、「人々の生活を豊かに」というヴィジョンのもと、現代美術における優れた日本人アーティストの活動を支援し、次世代へと続く日本の文化発展の助力になることを目指して2013年に設立した。第1回目の開催となった前回は、8名のアーティストが最終選考に残り、BankART Studio NYKで開かれた展覧会に新作を発表した。グランプリを受賞した宮永愛子は、「このアワードがあったことで、これまでよりも大胆なチャレンジが可能になり、スケールの大きい新作インスタレーション制作という勝負に飛び込むことができた」と振り返る。

今年5月にヴェネツィアで行なわれた今回の第一次選考では、森美術館館長の南條史生を審査委員長とする国際審査委員会が、専門家に推薦された33名の候補者から「詩的で、繊細、デリケートな表現を持ち、そしてこれまでにない美術へのアプローチを期待できる」アーティスト7名をファイナリストとして選出。賞金100万円と最終審査を兼ねた展覧会に出品する新作の制作費100万円が各アーティストにそれぞれ支給された。

グランプリ発表・授賞式は11月24日に開催(招待客のみ参加可)。グランプリ受賞者には賞金300万円(ファイナリストの賞金100万円を含む)に加え、さらなる国際的な活躍の契機になることを期待し、ロンドンのカムデン・アーツ・センターの協力のもと、2カ月間のロンドン滞在の機会が与えられる。また、新設された展覧会来場者の投票によるオーディエンス賞の受賞者の発表も同日行なわれる。会期中には各アーティストによるアーティスト・トークを実施。グランプリ発表後の11月28日には、受賞者によるトークも行なわれる予定。

日産アートアワードhttp://www.nissan-global.com/JP/CITIZENSHIP/NAA/

日産アートアワード2015
2015年11月14日(土)-12月27日(日)
BankART Studio NYK

日産アートアワード2015 ファイナリスト


秋山さやか「あるく 私の生活形 東京駅~相模大野~日本橋~東京駅 2012年 7月19日/ 7月25日, 26日, 27日, 30日, 8月8日,13日/ 8月22日~9月7日」》(部分)2012年 撮影:Hideto Nagatsuka

秋山さやか(1971年兵庫県生まれ):ある土地で生活し、歩いたその軌跡を縫い付けたり、線を描いたりする中から「時間のあしあと」を探る作品で知られる。昨年の上海での個展『もずのはや贄』では、日々変化する自己の生活そのものをむき出しにしたインスタレーションを発表。本展では、横浜に二カ月半滞在した記憶と歩いた軌跡を新作として発表する。


久門剛史「Quantize #1」2014年 Courtesy of Ota Fine Arts

久門剛史(1981年京都府生まれ):「音」と「彫刻」の融合を通じて、場所や事物から記憶や物語を紡ぎ出す空間を創り出すことで知られる。京都の元・崇仁小学校を使用した『still moving』では、かつての教室であった場の記憶の喚起を促すインスタレーションを発表。本展では、会場となるBankARTの空間や音、光を取り入れた作品を発表する。


石田尚志「燃える椅子」2013年 © 2013 Takashi Ishida

石田尚志(1972年東京都生まれ):映像メディアを駆使して、「絵を描く」という行為そのものを「動く絵」として昇華させた作品には、身体や時間の痕跡が記されている。横浜美術館で今春開催された約20年に渡る創作活動を振り返る大規模な回顧展『渦巻く光』に続き、本展でも絵画と映像を融合させたダイナミックな空間の創出を試みる。


岩崎貴宏「リフレクション・モデル [左]瑠璃 [中]銀閣 [右]金閣」2014年 撮影:三嶋一路 © Takahiro Iwasaki, Courtesy of ARATANIURANO

岩崎貴宏(1975年広島県生まれ):現代の風景や歴史的建造物を、さまざまな素材を用いた緻密な構造体の彫刻作品として再構成する。ニューヨークのアジアソサエティで開催された個展『In Focus』では、着物の糸をほどいて風景を構築する新作を発表した。本展では日用品や桧を使い、緻密な建築風景を創り出す。


ミヤギフトシ「17 Notes from the South」2015年 撮影:田村友一郎

ミヤギフトシ(1981年沖縄県生まれ):自身の記憶や体験に向き合いながら、国籍や人種、アイデンティティといった主題について、多様な形態で作品を発表している。本展では、2012年から取り組んでいる「American Boyfriend」プロジェクトを展開し、沖縄とアメリカで撮影した映像などを展示する。同プロジェクトの一部は東京都現代美術館や国立国際美術館を含む国内外の美術館を巡回する『他人の時間』でも発表された。

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毛利悠子「I/O──ある作曲家の部屋」2014年 展示風景:横浜美術館 撮影:田中雄一郎(提供:横浜トリエンナーレ組織委員会)

毛利悠子(1980年神奈川県生まれ):日用品と機械とを再構成した立体物を環境に寄り添わせたインスタレーションは、鑑賞者に磁力や重力、光など、目に見えない力を喚起させる。昨年は札幌国際芸術祭2014、ヨコハマトリエンナーレ2014といった国際展にも参加。本展では、日用品や機械を用いたインスタレーションに取り組む。


米田知子「菊」(「積雲」シリーズより)2011年

米田知子(1965年兵庫県生まれ):記録という写真の根本的な役割を徹底しつつ、歴史や場所の記憶にアプローチした写真作品で知られる。近年は日本や世界の近代化における歴史をテーマにした作品に取り組んでいる。本展では、制作活動の拠点とするイギリスと日本で綿密なフィールドワークを実施し、その歴史の痕跡を収めた写真を発表する。(過去記事|インタビュー「感光される時間の層」2012年2月初出)

関連イベント
アーティスト・トーク
岩崎貴宏、久門剛史、毛利悠子
2015年11月14日(土)15:00-16:30
定員:40名(要予約)

秋山さやか、石田尚志
2015年11月21日(土)15:00-16:00
定員:40名(要予約)

米田知子、ミヤギフトシ
2015年11月22日(日)15:00-16:00
定員:40名(要予約)

グランプリ・アーティストによるトーク
2015年11月28日(土)時間未定
定員:40名(要予約)

ギャラリーガイドツアー
2015年11月14日(土)、21日(土)、28日(土)13:00-13:45
12月5日(土)、12日(土)、19日(土)、26日(土)13:00-13:45
定員:各回先着20名(申込不要)
※当日ギャラリー入り口集合

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