南嶌宏死去(1957-2016)

2016年1月10日、美術評論家で女子美術大学教授の南嶌宏が、脳梗塞のため長野県松本市の病院で死去した。葬儀、告別式は近親者によって行なわれた。

南嶌宏(本名南島宏)は1957年長野県生まれ。専門は、現代美術思想研究、旧共産主義の現代美術研究、「反近代論」研究、「反ミュージアム理論」研究など。全国美術館会議理事、国際美術評論家連盟理事などを歴任。いわき市立美術館、広島市現代美術館、熊本市現代美術館などの立ち上げに関わり、熊本市現代美術館では2004年から2008年まで館長を務めた。そのほか、プラハ・トリエンナーレ2008キュレーター、第53回ヴェネツィア・ビエンナーレ日本館コミッショナー(2009)などを歴任。第3回西洋美術振興財団学術賞受賞(2009)。単著に『豚と福音』(七賢出版、1997)、『Beato Angelo』(トレヴィル、1995)、『Santa Maria』(トレヴィル、1995)、共著に『美術批評と戦後美術』(ブリュッケ、2007)、『日本藝術の創跡』(夏目書房、2003)など。そのほか、カタログや雑誌への寄稿多数。また、熊本市現代美術館時代より、美術を通してハンセン病に対する偏見をなくす活動に取り組んでいた。

訃報を受け、ART iTでは南嶌がコミッショナーを務めた第53回ヴェネツィア・ビエンナーレ日本館にアーティストとして参加したやなぎみわにコメントを寄せてもらった。

2007年に熊本現代美術館で開催された『ATTITUDE 2007 人間の家 真に歓喜に値するもの』に参加したのが南嶌さんとの出会いだった。世界中から集まった異領域の作家たちは、あっという間に打ち解けて交流し、美術館には常に和やかな空気が流れていた。皆、南嶌さんの真っ直ぐな熱意に応え、それを支えようとしているのが感じられた。作家がキュレーターを守る稀有な展覧会の後、私の中で南嶌さんは、アートによる共生世界を信じる表現者としてあり続けている。あまりに突然の訃報に驚くばかりだが、遠近、今昔、生死の混在したあの展示空間で、ずっと語っておられるような気がしてならない。(やなぎみわ)

ART iT Archive
追悼-中原佑介 人間と物質のあいだに 文/南嶌宏(2011年3月掲載)
崔在銀:「アショカの森」のボルヘス 文/南嶌宏(2010年10月掲載)

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