ヨーロッパ、ギャラリーの新スペースオープンラッシュ

フリーズ・アートフェア、FIACと秋のヨーロッパフェア開催とほぼ時期を同じくし、ギャラリーの新しいスペースがオープンしている。


Installation view of Louise Bourgeois at Hauser & Wirth London, Savile Row. Foreground: Crouching Spider, 2003.

ロンドンでは、セイディ・コールズHQが2010年10月6日リージェント・ストリート近くのニュー・バーリントン通りに3つめの新スペースをオープン。最初の展覧会はウルス・フィッシャー『Douglas Sirk』、12月11日まで。
Sadie Coles HQ: http://www.sadiecoles.com/

チューリッヒのギャラリー、ハウザー&ヴィルトは、ロンドンに4つめのスペースをセイディ・コールの新スペース近くのサヴィル・ロウにオープン。こちらは今年亡くなったルイーズ・ブルジョワの展覧会でスタートする。昨年9月にニューヨークのスペースをオープンし、さらなる新スペースオープンと勢いづいている。毎年発表される美術界の影響力ランキング、ART POWER 100において、今年度はラリー・ガゴーシアン、ハンス・ウルリッヒ・オブリストに次ぐ3位に急上昇中のイヴァン・ヴィルトがオーナーをつとめる。
Hauser & Wirth: http://www.hauserwirth.com/

マット・コリショー『Creation Condemned』でオープンしたのは、ブレイン・サザン。クリスティーズの現代美術部門を経て、2002年に独立したハリー・ブレインとグレアム・サザンは、同年にホーンチ・オブ・ヴェニソンをオープンした。2007年よりクリスティーズによる経営となったため、オークションハウスによるプライマリー市場への参入と批判を呼んだ。2010年6月にブレインとサザンはホーンチ・オブ・ヴェニソンを退社、今回新しいギャラリーをオープンする運びとなった。
Blain Southern: http://www.blainsouthern.com/

10月20日、今年のART POWER 100の1位に輝いたラリー・ガゴーシアンのガゴーシアン・ギャラリーが、パリ8区シャンゼリゼ近くのポンテュー通りに9軒目となるギャラリーをオープンする。4階建てで、総面積900平方メートルを超える巨大なスペース。パリ在住のジャン=フランソワ・ボダンが、ロンドンの建築グループ、カルーゾ・セイント・ジョンとのコラボレーションで行い、個人の邸宅をギャラリースペースに改装している。オープニングの展覧会は、パリのギャルリー・パトリック・セガンと協力し、ジャン・プルーヴェ『ARCHITECTURE』を行う。
Gagosian Gallery: http://www.gagosian.com/

翌日の10月21日にはギャルリー・シャンタル・クルーゼルがレピュブリック地区に新たなスペースをオープンする。オープニングの展覧会のタイトルはジャン・ルノワールの映画からとった『ゲームの規則』。
Galerie Chantal Crousel: http://www.crousel.com/


Installation view of Louise Bourgeois at Hauser & Wirth London, Savile Row.

各ギャラリーの新スペースオープンの背景には、各地で行われるアートフェアがギャラリーにとって重要になりつつあり、常に作品を多めに持っておくことが必要となったことがあげられる。 また、各展覧会の期間を長くし、複数スペースで展覧会を見せるといった方法がとられるようになっている。

その一方で、フランスでは、サルコジ政権により大幅な文化予算の削減が予想され、文化大臣フレデリック・ミッテランがLe Journal des Artsの取材に対し、文化省がグラン・パレで行う大型美術プロジェクト「モニュメンタ」に対する予算削減の可能性について示唆している。また、イギリスでも今年の5月の政権交代後、今後4年間で文化予算の25%削減が行われることが発表され、美術館、劇場、作家が危機感を表明している。

今回の各ギャラリーの新スペースのオープンは、こうした政府による美術への公的な援助が見直される一方で、ギャラリーなどが美術市場の活況を呈していることを浮き彫りにした。

Copyrighted Image