第27回高松宮殿下記念世界文化賞


横尾忠則「原始宇宙」2000年 キャンバスにアクリル、コラージュ、2273x5460mm(3枚組)、豊島横尾館の展示

2015年9月10日、世界の優れた芸術家を顕彰する高松宮殿下記念世界文化賞(公益財団法人 日本美術協会主催)の第27回受賞者がベルリン、ローマ、ニューヨーク、ロンドン、パリ、東京の各都市で発表された。絵画部門の横尾忠則、彫刻部門のヴォルフガング・ライプを含む各部門の受賞者には、顕彰メダルと感謝状、賞金1500万円が贈られる。

絵画部門を受賞した横尾忠則は1936年兵庫県生まれ。60年代より、前衛、ポップ、日本の土着性を融合させたグラフィックデザインで注目を集めると、第6回パリ青年ビエンナーレ展版画部門グランプリ、大阪万国博覧会「せんい館」パヴィリオンデザイン、ニューヨーク近代美術館での個展、ヴェネツィア・ビエンナーレ『アウテンティコ・マ・コントラファット』展出品など国内外で精力的な活動を展開する。既に絵画を発表していたが、
81年に「画家宣言」し、本格的に美術家としての活動を開始。2002年には東京都現代美術館と広島市現代美術館で大規模な個展『森羅万象』をはじめ、毎年のように美術館規模の個展を開催。2012年には横尾忠則現代美術館を神戸に開館。翌2013年には瀬戸内海の豊島に豊島横尾館を開館している。昨年はバルセロナのピカソ美術館で『ポスト・ピカソ』に出品。現在もアメリカを巡回中の企画展『インターナショナル・ポップ』やテート・モダンで今月より開催される『ザ・ワールド・ゴーズ・ポップ』に出品している。

彫刻部門はヴォルフガング・ライプ(1950年ドイツ・メッツィンゲン生まれ)。テュービンゲン大学で医学を学び博士号を取得するも、「現代医学は人間の身体についての自然科学にすぎない。大事なのは肉体だけではない」と、24歳のときに芸術に身を転じる。白い矩形の大理石板の表面をシャーレ状に削って牛乳を満たした「ミルク・ストーン」で注目を集めると、以来、花粉や米、蜜蝋など生命や自然に密着した素材を用いた作品を制作している。こうした制作活動には、子供時代に両親とともに住んだインドや、日本の禅など東洋の文化、思想からの影響も見られる。日本国内では京都国立近代美術館やワタリウム美術館のグループ展に出品、2003年には本格的な回顧展を東京国立近代美術館、豊田市美術館、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館で開催している。


ヴォルフガング・ライプ「ヘーゼルナッツの花粉」1992年 350x400cm、ポンピドゥー・センターのインスタレーション © Wolfgang Laib

建築部門はドミニク・ペロー(1953年フランス・クレルモン=フェラン生まれ)。パリ市の都市計画庁を経て、81年に独立。89年には36歳の若さでパリの『フランス国立図書館』(1995年完成)の国際コンペを勝ち取り、本体の建物を地中に埋め、その中心に憩いの空間である庭園を造るというアイディアを、芸術監督のガエル・ロリオ=プレヴォとともに実現。以降、ドイツ・ベルリンの『自転車競技場・オリンピック水泳プール』、ルクセンブルクの『欧州連合司法裁判所』、フランス南部アルビの『アルビ・グランド劇場』などを手掛ける。2008年にはポンピドゥー・センターで個展を開催、2010年にはヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展でフランス館のキュレーターを務めた。日本では、新潟・十日町の能舞台『バタフライ・パビリオン』、大阪・梅田の『大阪富国生命ビル』を設計している。

音楽部門はロンドン在住の世界的ピアニストで、マールボロ音楽祭芸術監督を務めるなど若手音楽家の育成にも尽力している内田光子(1948年静岡県生まれ)。内田は今年11月にサントリーホールで2年振りのリサイタルを開催。演劇・映像部門は世界最高のバレリーナと称され、これまでに30回以上の来日、2011年の東日本大震災時には被災者のためのチャリティー公演を実施しているシルヴィ・ギエム(1965年パリ生まれ)。今年いっぱいでの引退を表明しているギエムは、今年12月の最後の公演を日本で予定している。

なお、同日発表された第19回若手芸術家奨励制度の対象団体には、本部をベルリンに置くミャンマーのヤンゴン映画学校が選出された。ヤンゴン映画学校は、2005年にリンジー・メリソンがベルリンに設立。欧米諸国から、経験豊富な映画製作者を活動拠点のミャンマー・ヤンゴンに派遣し、無料指導を行なっている。現在では卒業生がプロダクション会社「ヤンゴン映画サービス」を設立し、国際的な非政府組織のドキュメンタリー製作も請け負うなど、民主化が進むミャンマーでのメディア文化の担い手に成長していくことが期待されている。ヤンゴン映画学校にはベルリンの受賞発表の席上にて奨励金500万円が贈られた。


ヤンゴン映画学校「調査ドキュメンタリー」の授業風景

授賞式典は、東京、元赤坂の明治記念館で10月21日に開催。10月22日には「受賞記念建築講演会2015 ドミニク・ペロー 建築を語る」、10月23日には「受賞記念アーティスト・トーク 横尾忠則×浅田彰」が鹿島KIビル大会議室で行なわれる。参加申込詳細は公式ウェブサイトを参照。

高松宮殿下記念世界文化賞http://www.praemiumimperiale.org/

受賞記念建築講演会2015「ドミニク・ペロー 建築を語る」
2015年10月22日(木)16:00-17:30(開場:15:30)
会場:鹿島KIビル 大会議室(東京都港区赤坂6-5-30)
申込等詳細は下記URLを参照。

受賞記念アーティスト・トーク 横尾忠則×浅田彰
2015年10月23日(金)13:30-15:00(開場:13:00)
会場:鹿島KIビル 大会議室(東京都港区赤坂6-5-30)
申込等詳細は下記URLを参照。

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