2013年ターナー賞候補者発表

2013年4月25日、現代美術における最も重要な賞のひとつとして知られるターナー賞の最終候補として、リネッテ・イアドム・ボアキエ、デヴィッド・シュリグリー、ティノ・セーガル、ローラ・プロヴォストの4名が発表された。29回目を迎える今回はアイルランド島で最も古い都市のひとつでUK文化都市2013のデリー/ロンドンデリーで授賞式典が行なわれる。イングランド以外での授賞式典は今回が初めて。ロンドン以外の都市では、2007年のリバプール、2011年のゲーツヘッドに続き3度目の開催となる。
ターナー賞は1984年に創設され、過去1年間に開催された展覧会等の実績を基に、イギリスを拠点に活動する50歳未満のアーティストに授与される。昨年はエリザベス・プライスが受賞。受賞時のスピーチでアートに対する公的助成金の減少について触れた。2000年以降の受賞者には今年のヴェネツィア・ビエンナーレのイギリス代表に選ばれたジェレミー・デラーや、昨年のドクメンタ13に参加していたスーザン・フィリップスなど。また、デリー/ロンドンデリー出身で1994年と2003年の最終候補者であるウィリー・ドハティは、同都市で今年10月から個展を開催する。
今後、最終候補に残った4名の候補者による展覧会がエブリントン(デリー/ロンドンデリー)にて10月23日より開催され、その後、テート・ブリテンディレクターのペネロペ・カーティスを含む5人の審査員の審議を経て、12月2日に受賞者の発表および授賞式典が行なわれる。

TATE:http://www.tate.org.uk/

リネッテ・イアドム・ボアキエ|Lynette Yiadom-Boakye(1977. ロンドン)
ガーナ出身の両親を持つイアドム・ボアキエは、写真やスケッチなどを用いることなく、架空の場面に黒人を描いた絵画で知られる。彼女の卓越した技術と豊かな想像力によって描かれた被写体は、絵画史において黒人はどのように描かれてきたのか、また、現実社会における人種問題を鑑賞者に想起させる。昨年ロンドンのチゼンヘールギャラリーで開催された個展『Extracts and Verses』が選考対象となった。同賞に黒人女性アーティストがノミネートされるのはイアドム・ボアキエが初。
オクウィ・エンヴェゾーがアーティスティックディレクターを務めた光州ビエンナーレ(2008)をはじめ、リヨン・ビエンナーレ(2012)、ニューミュージアム・トリエンナーレ(2012)などに参加。ロンドン、ニューヨーク、ケープタウンなどで個展を開催している。昨年末にはピンチューク・アートセンターが主催する次世代アート賞を受賞している。

デヴィッド・シュリグリー|David Shrigley(1968. マックルズフィールド)
グラスゴーを拠点に活動するデヴィッド・シュリグリーは、日常生活の観察に基づいた、機知や皮肉、遊び心に溢れたドローイング、写真、彫刻、アニメーションなどで知られる。新聞の日曜版への漫画掲載、テレビ用に制作された短編映像作品などにより幅広い層に認知されている。昨年、ロンドンのヘイワード・ギャラリーにて初の回顧展『David Shrigley: Brain Activity』を開催し、同展が今回の選考対象となった。
欧米を中心に数多くの個展を開催、企画展に参加するほか、インディペンデント(1999-2001)やガーディアン(2005-2009)などの新聞や雑誌に漫画を掲載している。

ティノ・セーガル|Tino Sehgal(1976. ロンドン)
ティノ・セーガルは、アーティストとして活動を始めた2000年以降、ものとしての作品はいっさい制作せず、特定の状況を構築し、居合わせた観客に体験させるパフォーマンス作品を発表している。専門的な訓練を受けたパフォーマーやダンサーのみならず、アマチュアや子どもがパフォーマンスを演じる状況は、観客の記憶のなかにのみ作品として存在する。選考対象となったのは、昨年ドクメンタ13で発表されたプロジェクト「This Variation」と、テート・モダンのタービンホールで行なわれたパフォーマンス「These associations」。
2005年にドイツ代表として参加したヴェネツィア・ビエンナーレをはじめ(2003年にも同ビエンナーレ企画展に参加)、マニフェスタ(2002)やテート・トリエンナーレ(2006)、リヨン・ビエンナーレ(2007)など数多くの国際展に参加。そのほかフランクフルト現代美術館やロンドンのICAなどで作品を発表している。2005年には横浜トリエンナーレにも参加している。

ローラ・プロヴォスト|Laure Prouvost(1978. リール)
ロンドン在住のローラ・プロヴォストは、強固な物語構成、短いカットを重ねる編集手法、モンタージュ、意図的な言語の誤使用による予測不可能な映像作品の制作および映像インスタレーションで知られる。2011年にはマックスマーラ・アートプライズ・フォー・ウィメンを受賞。同賞のコミッションとしてロンドンのホワイトチャペル・ギャラリーとレッジョ・エミリア(イタリア)のマラモッティ・コレクションで発表されたインスタレーション「Farfromwords」と、テートとグリズデールアーツのコミッション作品「Wantee」が選考対象。
2000年代中頃よりホワイトチャペル・ギャラリーやフリーズ・プロジェクツなど、ヨーロッパを中心に継続的に作品を発表している。日本でも2008年に横浜のZAIMや101 Tokyoコンテンポラリーアートフェアで作品を発表している。

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