第31回写真の町東川賞


アン・ノーブル「Chapel of the Snows, McMurdo Station, Ross Island, Antarctica 2008」
From the series, The Last Road ©アン・ノーブル

2015年5月1日、「写真の町」を宣言する北海道上川郡東川町、東川町写真の町実行委員会が「第31回写真の町東川賞」各賞を発表、海外作家賞にアン・ノーブル、国内作家賞に佐藤時啓、新人作家賞に春木麻衣子、特別作家賞に吉村和敏、飛彈野数右衛門賞に福島菊次郎がそれぞれ選出された。

1985年6月1日、北海道・東川町は写真文化を通じて町づくりや生活づくり、人づくりを目指し、「写真の町」を宣言し、毎年夏に開催する「東川町国際写真フェスティバル(東川町フォトフェスタ)」とともに、写真文化への貢献と育成、東川町民の文化意識の醸成と高揚を目的として、これからの時代をつくる優れた写真作品(作家)へ授与する「写真の町東川賞」を設立した。

ニュージーランドが対象国となった今回の海外作家賞を受賞したアン・ノーブル(1954年ワンガヌイ生まれ)は、ウェリントンを拠点に制作活動のみならず、企画、教育といった幅広い活動を行なう。南極についての想像と現実のギャップをテーマにしたシリーズからの写真集『The Last Road』(Clouds、2014)をはじめとする一連の作家活動が評価された。同シリーズのほか、実娘の幼年期の行為に着目した「Ruby’s Room」(1998-2006)で国際的にも高い評価を受けており、新作「針の群れの歌」シリーズでは、蜜蜂と人間の共生をテーマにしながら、複雑な自然のシステムに対する世界的な脅威について、科学者や養蜂家らと共同した作品を制作している。


Above: 佐藤時啓「Shirakami #7」2008年 ©佐藤時啓
Below: 春木麻衣子「みることについての展開図 05」2014年 ©春木麻衣子

国内作家賞は、東京都写真美術館で昨年開催された『佐藤時啓 光―呼吸 そこにいる、そこにいない』及び一連の作家活動が評価された佐藤時啓が受賞。新人作家賞は、TARO NASUで昨年発表された『みることについての展開図』やそこに至る活動実績が評価された春木麻衣子が受賞。北海道ゆかりの作家を対象とした特別作家賞は、北海道北斗市のセメント工場をテーマにした写真集『CEMENT』(ノストロ・ボスコ)が評価された吉村和敏が受賞。地域に貢献のある作家を対象とした飛彈野数右衛門賞を受賞した福島菊次郎は、郷土の瀬戸内を出発点とし、広島の原爆問題を皮切りに、三里塚闘争や公害、原発に至るまで戦後日本の問題を一貫して撮り続けた活動が評価された。

審査委員を務めたのは、浅葉克己(アートディレクター)、笠原美智子(写真評論家)、楠本亜紀(写真評論家、キュレーター)、上野修(写真評論家)、野町和嘉(写真家)、平野啓一郎(作家)、光田由里(美術評論家)、山崎博(写真家)。審査講評は公式ウェブサイト内に掲載されている。

第31回東川町国際写真フェスティバルは、受賞作家作品展が行なわれる東川町文化ギャラリーを中心に8月4日から9月2日まで開催。授賞式は、8月8日に東川町農村環境改善センター・大ホールで実施される。

東川町国際写真フェスティバル
2015年8月4日(火)-9月2日(水)
http://photo-town.jp/


Above: 吉村和敏「焼成炉 Rotary Kiln」 CEMENTシリーズより 2010年 ©吉村和敏
Below: 福島菊次郎「島の家にはほとんど「名誉の家」の門札が掛っていた。 山口県沖家室島」©福島菊次郎

Copyrighted Image