ヒューゴ・ボス賞2014、最終候補者発表

2013年12月13日、ソロモン・R・グッゲンハイム財団は現代美術における重要な成果を収めたアーティストへ与えられるヒューゴ・ボス賞2014の最終候補者6名を発表した。

最終候補に残ったのは、ポール・チャン、シーラ・ゴウダー、カミーユ・アンロ、ハッサン・カーン、スティーヴ・マックイーン、シャーリーン・フォン・ハイルの6名。

同賞は1996年に創設され、今回で10回目を迎える。受賞者は年齢、性別、人種、国籍、制作手法、知名度を問わず、グッゲンハイム美術館のキュレトリアルスタッフや他機関のディレクター、キュレーターなどからなる審査委員会によって選出される。受賞者には賞金100,000ドル(約1028万円)とニューヨークのグッゲンハイム美術館での個展の機会が与えられる。2014年の夏に各候補者の作品への論文を収録したカタログを刊行し、同年秋に受賞者が発表される。

歴代の受賞者は以下の通り。森村泰昌(1996年)や八谷和彦(2002年)もかつて最終候補者に選出されている。

1996年 マシュー・バーニー
1998年 ダグラス・ゴードン
2000年 マリイェティツァ・ポタルチュ
2002年 ピエール・ユイグ
2004年 リクリット・ティラヴァニ
2006年 タシタ・ディーン
2008年 エミリー・ジャーシル
2010年 ハンス=ペーター・フェルドマン
2012年 ダン・フォー

なお、ヒューゴ・ボスは今年6月にロックバンド・アート・ミュージアム[上海外灘美術館]とともに、「ヒューゴ・ボス・アジア・アート」を設立。同10月に発表された第1回目の受賞者にクワン・シャンチ[關尚智]が選出されている。

ポール・チャン|Paul Chan(1973. 香港)
ニューヨークを活動の拠点としながら、ドキュメンタリー映像作品やドローイング、地域コミュニティを基としたパフォーマンス・プロジェクトなど、幅広い実践を行なう。2010年には限定本やe-book、アーティストブックなどを出版する「Badlands Unlimited」を設立した。ドクメンタ13(2012)や第53回ヴェネツィア・ビエンナーレ(2009)といった国際展や、ニューミュージアム(2008)、サーペンタイン・ギャラリー(2007)、ポルティクス(2006)など、欧米を中心に数多くの個展を開催している。日本国内でも横浜トリエンナーレ2008にて、アニメーションを床に投影した「6番目の光」(2008)を発表している。来年にはバーゼルのシャウラガーでの個展を控える。

シーラ・ゴウダー|Sheela Gowda(1957. バドラバティ,インド)
バンガロールを拠点に、絵画や写真を制作している。また、人毛や糸、香料、牛糞、スパイスといった素材を使用して、自身を取り巻く社会的、政治的環境の複雑さに取り組んだインスタレーションも発表している。これまでにドクメンタ12(2007)や第53回ヴェネツィア・ビエンナーレ(2009)をはじめ、数多くの展覧会で作品を発表している。2013年もファン・アッベ美術館で個展を開催、ソロモン・R・グッゲンハイムで開催された企画展『Lasting Images』に出品している。

カミーユ・アンロ|Camille Henrot(1978. パリ)
パリ、ニューヨークを拠点に活動。文化人類学、民族誌学、技術史にまつわるアーカイブからのリサーチに基づいたある種の物語を映像、彫刻に落とし込んだ作品を発表している。今年開催された第55回ヴェネツィア・ビエンナーレでは銀獅子賞を受賞。来年にはニューヨーク、セビリア、ベルリンでの個展が控える。日本国内では、2005年に原美術館、2011年に森美術館でも作品を発表している。来年2月に東京都写真美術館を中心に開催される第6回恵比寿映像祭への出品も決定している。

ハッサン・カーン|Hassan Khan(1975. ロンドン)
カイロを拠点に活動。多岐にわたる表現方法を用いて、学際的な事象を扱った実践を展開している。ドクメンタ13やマニフェスタ8など、数多くの国際展に参加、第54回ヴェネツィア・ビエンナーレでは各賞の審査委員長を務めている。日本国内ではCCA北九州のリサーチ・プログラムの教授として2011年に来日、個展『信頼できる根拠』を開催している。カミーユ・アンロと同じく、来年2月の第6回恵比寿映像祭への出品が決定している。

スティーヴ・マックイーン|Steve McQueen(1969. ロンドン)
※アカデミー賞ノミネートのため、規定により辞退
アムステルダムを拠点に活動。歴史的な事象や抽象的な概念を扱った、観る者の感情的葛藤を喚起する映像作品や彫刻インスタレーションで知られる。ターナー賞の受賞(1999)やドクメンタ、(2002,2007)、第53回ヴェネツィア・ビエンナーレ(2009)への参加など、数多くの業績を現代美術の領域で残している。昨年のシカゴ現代美術館での個展や今年のシャウラガーでの個展でも非常に高い評価を得ている。同時に『Hunger』、『SHAME』などの長編映画を発表しており、前者はカンヌ国際映画祭カメラ・ドールを受賞。新作映画『それでも夜は明ける[12 Years a Slave]』(2013,2014年日本公開予定)でもニューヨーク映画批評家協会賞など数多くの賞を受賞している。日本国内では2006年に個展『Caresses[愛撫]』を丸亀市猪熊弦一郎現代美術館で開催している。

シャーリーン・フォン・ハイル|Charline von Heyl(1960. マインツ,ドイツ)
ニューヨークを拠点に活動。絵画的抽象をさまざまな素材、技術を駆使して探求している。昨年はテート・リバプール、クンストハレ・ニュルンベルク、ボン・クンストフェライン、ボストン現代美術館で個展を開催、ニューヨーク近代美術館で行なわれた企画展『Abstract Generation: Now in Print』にも出品。欧米を中心に精力的な発表が続いている。

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