第32回写真の町東川賞


広川泰士 東京都新宿区 2006年8月「BABEL」シリーズより

2016年5月1日、「写真の町」で知られる北海道上川郡東川町は、第32回写真の町東川賞の受賞者を発表した。

国内作家賞は、昨年、写真集『BABEL−ORDINARY LANDSCAPES−』(赤々舎)から発表した広川泰士が受賞。雑誌や広告写真を中心に活躍する広川は、近年、1994年に発表した写真集『STILL CRAZY−Nuclear power plants as seen in Japanese landscapes−』(光琳社)が東京電力福島第一原子力発電所事故後に再評価されている。長年の実績に加え、採掘場やダム、丘陵地の住宅地や原発など、人間による自然の変形と干渉を、淡々と切り取った『BABEL−ORDINARY LANDSCAPES−』で作家自身の新境地を拓いた点が評価された。

新人賞には写真集『Monkey Puzzle』(Nazraeli Press、2015)を発表した池田葉子、北海道にゆかりのある作家に贈られる特別作家賞には、北海道ゆかりの作品を纏めた写真集『Hokkaido』(Nazraeli Press、出版協同社)を2006年に発表しているマイケル・ケンナ、地域に貢献のある作家に贈られる飛騨野数右衛門賞には、山陰の風土をテーマに写真を取り続ける池本喜巳がそれぞれ選出された。

また、海外作家賞には今年の対象国コロンビアで活動するアーティスト、オスカー・ムニョスが、一連の活動およびコロンビア、ブエノスアイレス、パリで開催された展覧会『プロトグラフス』が評価された。「プロトグラフス」とは、写真が撮られ、イメージが永遠に固定される直前の瞬間、いわば潜在的な写真とでもいうべきものを指している。また、2005年には、コロンビアのカリに、アーティストのレジデンスや、美術を語り合う公共の場としての、文化センター「Lugar a Dudas(疑いの場)」を創設している。

北海道・東川町は、写真文化を通じた町づくり、生活づくり、人づくりを目指して、1985年6月1日に「写真の町」を宣言した。以来、毎年夏に開催する「東川町国際写真フェスティバル(東川町フォトフェスタ)」とともに、写真文化への貢献と育成、東川町民の文化意識の醸成と高揚を目的として、これからの時代をつくっていく優れた写真作品(作家)へ贈る「写真の町東川賞」を設立した。

第32回東川町国際写真フェスティバルは、受賞作家作品展の会場となる東川町文化ギャラリーを中心に、7月30日から8月31日まで開催。授賞式は、7月30日に東川町農村環境改善センター・大ホールで行なわれる。また、翌31日には、受賞者や審査員らによる受賞作家フォーラムを開催する。

なお、現在、東川町の写真コレクションを使った企画展『地霊—呼び覚まされしもの 〜東川賞コレクションより〜』(5月15日まで)が十和田市現代美術館で、『写真のフロンティア ヒューマニズムの視座から』(7月5日まで)が北海道立釧路芸術館が行なわれている。

第32回東川町国際写真フェスティバル
2016年7月30日(土)-8月31日(水)
http://photo-town.jp/
会場:東川町文化ギャラリー
開廊時間:10:00-17:30(7/30は15:00-21:00)
会期中無休


池田葉子 徳島県三好市 2012年


マイケル・ケンナ Torii Gate, Study 2 北海道 初山別 2014年


池本喜巳 近世店屋考シリーズ 但見酒店 鳥取県鳥取市弥生町 1999年


オスカー・ムニョス シリーズ「ナルシス」より 2001年-2002年

 

『地霊—呼び覚まされしもの 〜東川賞コレクションより〜』
2016年1月30日(土)-5月15日(日)
十和田市現代美術館
http://towadaartcenter.com/

写真文化首都「写真の町」東川町コレクション展
『写真のフロンティア ヒューマニズムの視座から』
2016年4月15日(金)-7月5日(日)
北海道立釧路芸術館
http://www.kushiro-artmu.jp/

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