第57回ヴェネツィア・ビエンナーレ日本館

2016年6月15日、国際交流基金は来年開催の第57回ヴェネツィア・ビエンナーレの日本館キュレーターに鷲田めるろ(金沢21世紀美術館キュレーター)、出品作家に岩崎貴宏を選出したことを発表した。

さまざまな素材からつくりあげられた緻密な構造を持つ彫刻により、独自の「風景」を創り出す岩崎貴宏。今回の日本館の展示プランは、「Upside-down Forest / 逆さにすれば、森(仮)」というタイトルで、日本の建築物や工業地帯を参照にしつつ、独自に作り上げた「モデル」を4点、制作し、日本館に特徴的な展示空間にある開口部とピロティを階段でつなぎ、海中と地上を分ける境界として、もうひとつの入り口とするプランを提案している。
キュレーターである鷲田は、岩崎の日本的な手仕事に基づいた表現の特徴にふれ、広島で制作を続ける岩崎が持つ広島や地方都市へのまなざしをヴェネツィアに持ち込むことで、「『日本館』を訪れる多くの来場者に、『日本的』な表現を、独自の方法で広島の歴史や日本の地方の状況と繋いでいる岩崎の作品を楽しんでもらえたらと願う。」と語っている。

岩崎貴宏は1975年広島県生まれ。2003年に広島市立大学芸術学研究科博士後期課程、2005年にエジンバラ・カレッジ・オブ・アート大学院を修了。現在は広島を拠点に活動している。金閣寺、平等院鳳凰堂、厳島神社といった建築をモチーフに、その建築が水面に反射する様子を木製模型で精巧に再現した「リフレクション・モデル」や、エジンバラへの留学をきっかけに制作をはじめた、身のまわりのものやゴミ、タオルや布地のほつれから風景を立ち上げる「アウト・オブ・ディスオーダー」が代表的なシリーズとして知られている。2007年には『六本木クロッシング2007 未来への脈動』(森美術館)、2009年には第10回リヨン・ビエンナーレに参加。近年の主な展覧会に、オーストラリアのヴィクトリア国立美術館(2014)や川崎市市民ミュージアム(2014)、第7回アジア・パシフィック・トリエンナーレ(2012)、ヨコハマトリエンナーレ2011などがある。昨年は日産アートアワード2015のファイナリストに選出され、黒澤明の映画『羅生門』をモチーフにした「リフレクション・モデル(羅生門エフェクト)」と、広島出身で被爆3世でもある自身と祖母、母、姉、甥の人毛を素材とした「アウト・オブ・ディスオーダー(70年草木は生えなかったか?)」を発表。また、国内では黒部市美術館と小山市立車屋美術館の共同企画として、それぞれの会場で個展を開催。アメリカ合衆国のアジアソサエティで個展『In Focus』を開催し、着物の糸を素材とした「アウト・オブ・ディスオーダー」の新作を発表しており、さらなる活躍が期待されている。

鷲田めるろは1973年京都府生まれ。東京大学大学院美術史学専攻博士課程中退。99年より金沢21世紀美術館建設事務局学芸員として同美術館の立ち上げに携わる。2004年の開館時には、レアンドロ・エルリッヒの「スイミング・プール」(2004)やジェームズ・タレルの「ブルー・プラネット・スカイ」(2004)など、コミッションワークを中心に担当。以来、地域や参加をテーマに、現代美術や建築の展覧会、プロジェクトを企画している。これまで、『妹島和世+西沢立衛/SANAA』(2005)、『アトリエ・ワン いきいきプロジェクトin金沢』(2007)、『金沢アートプラットホーム2008』、第1回金沢・世界工芸トリエンナーレ(2010)、『島袋道浩:能登』(2013)、『3.11以後の建築』(2014)、『ザ・コンテンポラリー1 われらの時代:ポスト工業化社会の美術』(2015)内の泉太郎の展示などを手掛けている。美術館での活動以外にも、都市/建築/美術を横断する開かれた場をつくることを目指し、2007年に金沢在住の若手美術・建築関係者とともに非営利団体CAAK(Center for Art & Architecture, Kanazawa)を設立。CAAKは2010年の「かなざわ燈涼会」参加企画として、市内の町家「楳荘」を会場とした『岩崎貴宏展』を開催している。

採用された鷲田の企画案のほか、コンペティション参加者の企画案および講評など指名コンペティションの実施結果は、国際交流基金ウェブサイト内に公開されている。以下、コンペティション参加者名と企画案タイトル。(6月17日加筆)

コンペティション参加者企画案

片岡真実(森美術館チーフ・キュレーター)
アーティスト:篠田太郎
「タイトル未定」

崔敬華(東京都現代美術館学芸員)
アーティスト:藤井光
「寄留者たち Sojourners」

保坂健二朗(東京国立近代美術館主任研究員)
アーティスト:杉戸洋
「杉戸洋 粒子とさまざまな力」(仮称)

鷲田めるろ(金沢21世紀美術館キュレーター)
アーティスト:岩崎貴宏
「Floats」

第57回ヴェネツィア・ビエンナーレ日本館公式ウェブサイト
http://www.jpf.go.jp/j/project/culture/exhibit/international/venezia-biennale/art/57/

第57回ヴェネツィア・ビエンナーレ
2017年5月13日(土)-11月26日(日)
http://www.labiennale.org/

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