2014年ターナー賞候補

2014年5月7日、現代美術における最も重要な賞のひとつとして知られるターナー賞の最終候補が発表された。30回目を迎える今回の候補者は、ダンカン・キャンベル、シアラ・フィリップス、ジェームス・リチャーズ、トリス・ヴォナ=ミッシェルの4名。

同賞は1984年に創設され、過去1年間に開催された展覧会などの実績をもとに、イギリスを拠点に活動する50歳未満のアーティストに授与される。昨年は展示及び授賞式典がデリー/ロンドンデリーで開催され、創設以来初めてのイングランド以外での実施となった。今回は会場をロンドンへ戻し、テート・ブリテンにて10月7日より、候補者4名による展覧会を開催され、12月1日に受賞者の発表及び授賞式が催される。受賞者には25,000ポンド(約430万円)、そのほかの最終候補者には5,000ポンド(約86万円)が授与される。審査員はテート・ブリテンのディレクター、ペネロペ・カーティスなど5名が務める。

なお、伊丹市立美術館及び伊丹市立工芸センターで開催中の『プライベート・ユートピア ここだけの場所 ブリティッシュ・カウンシル・コレクションにみる英国美術の現在』では、マーティン・クリード、サイモン・スターリング、ジェレミー・デラー、グレイソン・ペリー、エリザベス・プライスといった過去の受賞者を含む、16名の同賞ノミネート経験を持つアーティストの作品も紹介されている。(その後、高知県立美術館、岡山県立美術館へ巡回。)

ターナー賞:http://www.tate.org.uk/whats-on/tate-britain/exhibitionseries/turner-prize

ターナー賞2014
2014年10月7日(火)-2015年1月4日(日)
テート・ブリテン、ロンドン
http://www.tate.org.uk/visit/tate-britain

ダンカン・キャンベル|Duncan Campbell(1972. ダブリン)
詳細な調査に基づき、ジグマー・ポルケや公民権運動に尽力を注いだバーナデット・デブリン、自動車会社デロリアン・モーター・カンパニー(DMC)の創設者ジョン・ザッカリー・デロリアンなど強烈な個性を持った人物を、事実とフィクションを織り交ぜた映像で描き出す作品で知られる。選考対象となったのは、昨年、第55回ヴェネツィア・ビエンナーレのスコットランド館で発表した「It for Others」(2013)。同作品では、クリス・マルケルとアラン・レネの共同製作『彫像もまた死す』(1953)を素材として、文化帝国主義、文化の商品化に対する社会的、歴史的検討を試みている。これまでに、カーネギー美術館(2012)、アーティスツ・スペース(ニューヨーク、2010)、トラムウェイ(グラスゴー、2010)、チゼンヘールギャラリー(2009)などで個展を開催、マニフェスタ9(2012)や第8回光州ビエンナーレ(2010)などに参加している。2008年にはアート・バーゼル38でバロワーズ賞を受賞している。

シアラ・フィリップス|Ciara Phillips(1976. オタワ)
シルクスクリーンやテキスタイル、写真など、広義の印刷物を用いたサイト・スペシフィックなインスタレーションを制作する。恊働制作にも早くから取り組み、フィリップスの活動拠点グラスゴーのアーティストらとともに「ポスター・クラブ」を立ち上げている。そうした制作および活動には、60年代の消費文化の広告画像やコピーを再解釈したアクティビスト兼アーティスト、コリータ・ケントの影響が見られる。2010年より「Workshop」プロジェクトを継続しており、選考対象となったロンドンのショウルームでの個展では同地のアーティスト、デザイナー、女性団体との恊働制作を行なった。これまで、グラスゴーを中心にヨーロッパ各地の展覧会に参加している。

ジェームス・リチャーズ|James Richards(1983. カーディフ)
テレビやインターネット上のさまざまな映像や音源を用いて「見る」という行為における快楽、官能性、窃視を考察する詩的な映像作品、インスタレーションを制作する。選考対象となったのは、第55回ヴェネツィア・ビエンナーレ企画展では、東京滞在時に図書館で見つけた検閲された画像(性器の箇所が削り取られたロバート・メイプルソープの写真など)を使用した映像作品「Rosebud」(2013)を発表している。これまでに、第12回リヨン・ビエンナーレやパフォーマ11などに参加、ロンドンのICA、サーペンタイン・ギャラリー、テート・モダンなどで作品を発表している。日本国内でも2012年にCCA北九州プロジェクト・ギャラリーで個展を開催している。また、2012年には英国を拠点に活動し、実験的な映像表現を探究するアーティストを対象としたフィルム・ロンドン・ジャーマン賞を受賞している。

トリス・ヴォナ=ミッシェル|Tris Vonna-Michell(1982. サウスエンド=オン=シー)
頻繁に繰り返される旅/移動の体験や個人的な経験と、物語の断片や歴史上の出来事を混在させたパフォーマンス、インスタレーションで知られる。ルクセンブルク・ジャン大公現代美術館(MUDAM)の『Image Papillon』展で発表した「Postscript I (Berlin)」に続く、「Postscript II (Berlin)」を発表したブリュッセルのヤン・モットで開催した個展が選考対象となった。同展示ではヴォナ=ミッシェルの語りに同期した二台のスライド・プロジェクションを使用した作品を発表している。これまでにパフォーマ07や第6回ベルリン・ビエンナーレ(2008)、横浜トリエンナーレ2008に参加、欧米各地で精力的に発表を続けている。2008年にはアート・バーゼル39でバロワーズ賞を受賞。2012年にはヒューゴ・ボス賞の候補者に選ばれている。

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