2012年7月29日、『ラ・ジュテ』や『ベトナムから遠く離れて』などの作品で知られる映画監督クリス・マルケルがパリにて死去した。享年91歳。
マルケルは1921年パリ郊外に生まれる。本名はクリスチャン=フランソワ・ブッシュ=ヴィルヌーヴ。第二次世界大戦後、ジャーナリスト兼写真家として生計を立てながら、映画製作に携わる。その後、アラン・レネと共同監督を務めた『彫像もまた死す』(1952)やアルジェリア戦争終結後のパリでインタビューを採った『美しき五月』(1962)などで評価を高める。同62年に製作した『ラ・ジュテ』は、ほぼ全編をスチル写真で構成し、同時代及び後続世代に多大な影響を与えている。そのほか、『ベトナムから遠く離れて』(1966)、『サン・ソレイユ』(1982)、『A.K. ドキュメント黒澤明』(1985年)など数多くの優れた作品を残している。また、1980年代後半より、デジタルテクノロジーを利用した作品及びインスタレーションの発表をはじめる。2005年にはニューヨーク近代美術館にて、19分のマルチメディア作品「Owls at Noon Prelude: The Hollow Men」を発表している。