2010年バロワーズ賞は、サイモン・フジワラとクレア・フーパーに。

 アート・バーゼルは、主に3つの異なったセクションから構成されている。
 全世界から300前後のモダンおよびコンテンポラリーのギャラリーが選ばれ、メイン会場の2フロアを使ってプレゼンテーションされる「アートギャラリーズ」。2000年からスタートし、大型のインスタレーションや彫刻作品、ビデオ作品、またプロジェクト等を展示する「アートアンリミテッド」。そして世界各地の若手ギャラリーからエマージング・アーティストを選び、それぞれが個展形式でプレゼンテーションされる「アートステイトメンツ」である。

 今年の「アートステイトメンツ」では、1966年生まれ以降の26人の注目アーティストが選ばれた。300以上のエントリーからアート・バーゼルの委員会が選考、毎年2名のアーティストにバロワーズ賞が贈られる。

 1999年に始まったバロワーズ賞は、バーゼルに本社を持つ保険会社バロワーズ社がスポンサーとなっている。「アートステイトメンツ」に参加したアーティストの中から毎年2名が選ばれ、3万スイスフラン(約240万円)が贈られる。過去の受賞者には、ローラ・オーエンズ(1999年)、マシュー・リッチー(1999年)、モニカ・ソスノヴスカ(2003年)、ティノ・セーガル(2004年)、ケレン・シッター(2006年)、ヤン・ヘギュ(2007年)らがいる。
 
 今年はサイモン・フジワラとクレア・フーパーに決まった。

 サイモン・フジワラは、建築家である日本人の父とダンサーである英国人の母の間に生まれ、現在はメキシコシティとベルリンで活動している。自伝的な物語と、レクチャースタイルのパフォーマンス、インスタレーションで今年のカルティエ・アワードも受賞した。今回の作品は、1970年代初期のフランコ政権下で両親が経営していたバルを再現。一日一度行われたパフォーマンスでは極めて個人的な家族の歴史を語りながら、政治的に困難な時代に生きる人間の矛盾とアイデンティティの問題を扱った。


Simon Fujiwara Welcome to the Hotel Munber(2010) installation

 もう一人のクレア・フーパーはロンドン在住のイギリス人。ドローイングによる肖像画なども制作しているが、作品の多くはフィルムによる映像作品である。都市の中のデザイン、モダニズムの美しさとは何か、といった主題をドキュメンタリー的手法で表現している。今回展示された「NYX」(22分)は、ロンドンを舞台に若い移民の男性を追いかける形で撮影しながら、アルコールやドラッグがもたらす都市の暗部と、夜の地下鉄構内のカラフルなデザインイメージが複雑に絡み合う作品であった。


Claire Hooper NYX (2010) Video installation

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