アブソルート・アート・アワード2013に、レナータ・ルーカスとココ・フスコ


Renata Lucas Failure (Falha) (2003). Installation view at The 12th Istanbul Biennial. Photo: ART iT

2013年9月20日、アブソルート・アート・ビュローは「アブソルート・アート・アワード2013」の受賞者を発表。作品部門にはレナータ・ルーカス、今回から新たに創設された論文部門にはココ・フスコが選出された。

同賞は、ウォッカで知られるアブソルート社の30年にわたるアート分野との恊働活動を記念して、2009年に創設された。社会における想像力や経験の可能性を拡げるアーティストを対象とし、これまでにケレン・シッター(2009)、リクリット・ティラヴァニ(2010)、アンリ・サラ(2011)が受賞している。なお、アブソルート社は1985年のアンディ・ウォーホルへの依頼をはじめ、エド・ルシェ、ダグラス・ゴードン、エットレ・ソットサス、ローズマリー・トロッケル、ナム・ジュン・パイク、澤口俊輔、太田マリコなど、これまでに500人以上のアーティストに800以上のプロジェクトを依頼している。

今回より、作品部門に加え、論文部門が設立され、各部門受賞者には20,000ユーロ(約265万円)の賞金が授与されるほか、「ドリーム・プロジェクト」と称して、作品部門受賞者には上限100,000ユーロ(約1328万円)の新作制作費(ただし、作品サイズは100㎡以下)、論文部門受賞者には上限250,000ユーロ(約332万円)の新作制作費および出版支援が与えられる。また、選考課程にも変更が加えられ、アブソルート・アート・ビュローが任命した審査委員長との話し合いにより、4名の審査委員を選出、さらに、審査委員長と4名の審査委員は10名の推薦委員を指名し、各推薦委員は各5名のアーティストと1名のライターを推薦する。その後、審査員によって選ばれた各部門最終候補者5名は、それぞれ新作のプロポーザルを提出する。なお、最終候補者にはそれぞれ2,000ユーロ(約26万円)が与えられ、受賞者によるプロポーザルは2013年10月-2014年3月の間での実現を目指す。

今回、作品部門を受賞したレナータ・ルーカスは、1971年にリベイラン・プレト(ブラジル)に生まれ、現在はサンパウロを拠点に活動している。都市空間に介入することで、その空間に潜在する構造を浮かび上がらせ、新たな意味を付与することで空間を変容させていく作品で知られる。近年は、ベルゲンのオルダランド・アートセンター(2012年)、ベルリンのクンストヴェルケ現代美術センター(2010年)、ロンドンのガスワークス(2007年)、ロサンゼルスのレッドキャット(2007年)などで個展を開催し、ドクメンタ13(2012年)や第12回イスタンブールビエンナーレ(2011年)、第53回ヴェネツィアビエンナーレ(2009年)といった国際展や企画展にも数多く参加している。今回のプロポーザルでは、断片的かつ分散した美術館を創り出す試みを提案している。

一方、論文部門を受賞したココ・フスコは1960年ニューヨークに生まれ、現在も同地を拠点に活動している。1988年以来、世界各地でマルチメディアを用いたパフォーマンスを発表、執筆活動のみならず、レクチャーや展覧会企画なども行う。近年のキューバにおけるパフォーマンスの分析を提案したプロポーザルによって、受賞にいたった。

なお、作品部門の最終選考にはルーカスのほか、セス・プライス、ゴールディン+セネビー、アンナ・ボヒジャン、セアスター・ゲイツ、論文部門の最終選考にはフスコのほか、ルイス・カムニッツァ-、ヒト・スタヤル、ラース・バン・ラーセン、ハムザ・ウォーカーが選出された。
審査委員長は先のドクメンタ13のアーティスティックディレクター、キャロライン・クリストフ=バカルギエフが務め、審査委員をベアトリクス・ルフ、スーザン・ヒラー、マリア・リンド、チュス・マルチネスが務めた。推薦委員は、第55回ヴェネツィアビエンナーレでリトアニア館及びキプロス館のキュレーターを務めたライモンダス・マルサウスカスのほか、イネス・カッツェンスタイン、ピー・リー[皮力]、ガビ・ンコボ、ローラン・ル・ボン、テルマ・ゴールデン、アンソニー・フーバーマン、ヤコブ・ファブリシウス、バッサム・エル・バローニ、コラー・ザーシャ・ジャムシェドの10名。

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