アート・バーゼル 開催

Alighiero e Boetti, Aerei series, at Massimo de Carlo, Art Basel

2012年6月14日から17日まで、規模でも質でも世界一を誇る『アート・バーゼル』が開催される。
一般公開に先立ち始まった内覧会では、ユーロ経済危機を反映してか、以前のような熱狂的な雰囲気は見られないものの、ヨーロッパからだけでなく、ロシア、インドネシア、台湾、中国など世界中から購買力のある有名コレクターが集結、世界に数あるアートフェアの中でも『アート・バーゼル』がその最高位にあることを証明している。

2008年のリーマンショック以前のアートバブル期には、フェア開始から30分以内に作品が飛ぶように売れ、狂乱状態にあった会場は、今回は買い手が強く、一見静かな様相である。「作品を一度見ただけで決める人は多くなく、いくつか見てから買うかどうかを決めているコレクターが非常に多い」とはあるギャラリースタッフの言葉であるが、セールスは静かながら順調に進んでおり、内覧会初日終了時には多くのギャラリーが売上に満足している様子であった。

具体的に売却が決まった作品はART iTの取材によれば以下の通り。小山登美夫ギャラリーがオノ・ヨーコの「DOORS + DROPPING」(2011)をアジアのコレクターに9万2000ドルで、ギャラリー小柳は杉本博司の『海景』シリーズの作品を40万ドルでロシア人コレクターにそれぞれ売却した。マドリードの国立ソフィア王妃芸術センター、テート・モダンで回顧展が開かれたアリギエロ・ボエッティの『Aerei(飛行機)』シリーズの作品は、ミラノのマッシモ・デ・カルロによりそれぞれ3万ユーロから9万ユーロの価格で数名のヨーロッパのコレクターへの売却が決まったとのこと。現在国立ソフィア王妃芸術センターで自らがキュレーションを手がけた回顧展を開催中のローズマリー・トロッケルは、ベルリンのシュプルース&マーゲルスからニット作品「Untitled」(2011)と彫刻作品「Untitled」(1987)を出品、それぞれ38万ユーロ、32万ユーロでヨーロッパのコレクターに売却された。ギャラリー・ダニエル・ブッフホルツは、イザ・ゲンツケンの1992年制作のペインティングを18万ユーロで売却。
ラットホールギャラリーで展覧会を開催中のエラッド・ラスリーの作品はロサンゼルスのデヴィッド・コーダンスキー・ギャラリーに出品されていた3点すべてが即日完売。
一方、これまで大型の新作発表の場として、会場の目玉でもあった『アートアンリミテッド』は過去に発表していた作品が多く、目新しさを感じることができなかった。

5月に行なわれた『アートHK』は『アート・バーゼル』の系列下に入ったことで規模、売上ともに飛躍した。しかし、本家『アート・バーゼル』は単なるアートフェアという枠に留まらない。欧米の美術館が財政難に苦しみ、若手の美術家が新作を発表できる大型の展覧会を自主企画できない現状にあって、世界中からキュレーター、コレクターも集結する『アート・バーゼル』は、ここ数年の現代美術の傾向やトレンドを映し出す役割をも担っている。そうした意味で、美術市場の中心としての役割以上に、近年『アート・バーゼル』は大きな意味を持つようになって来ている。

フォトレポート アート・バーゼル 

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