第9回ヒロシマ賞はドリス・サルセドに


Doris Salcedo Untitled (1995). Installation view from MoMA Collection, 2012. Photo: ART iT

2013年9月9日、世界に横行する暴力や差別に対して、芸術の持つ強い抵抗の力を示してきた彫刻家ドリス・サルセドの第9回ヒロシマ賞受賞が発表された。南米のアーティストとしては初の同賞受賞となる。

ドリス・サルセドは1958年ボゴタ(コロンビア)生まれ。日常の家具や衣服を彫刻として再生させながら、暴力による犠牲者の記憶を静かに訴える作品、近年は空間全体を追悼の場へと変容させる大規模なインスタレーションに精力的に取り組んでいる。なかでも、2007年、テート・モダンのタービンホールの床に167メートルにわたる亀裂を出現させたインスタレーション「シボレス[Shibboleth]」は代表作のひとつとして知られる。
ヴェネツィア・ビエンナーレ(1993年)、ドクメンタ(2002年)、イスタンブール・ビエンナーレ(2003年)など数多くの国際展や企画展に参加、2010年から2012年にかけて、メキシコ自治大学付属現代美術館(メキシコシティ)、マルメ近代美術館、国立21世紀美術館(ローマ)、ホワイトキューブ(ロンドン)、サンパウロ州立美術館を巡回する個展『Plegaria Muda』を開催し、2015年以降もシカゴ現代美術館を皮切りにニューヨーク、ロサンゼルスを巡回する大規模な回顧展が開催される予定。

今回の受賞に際し、サルセドは以下のようにコメントしている。

私の作品に対し、このような名誉ある賞を授けてくださり皆様に御礼申し上げます。
この賞を謹んでお受けするとともに、今回の受賞は、私の作品に対する評価というだけでなく、今後もその苦しみが忘れ去られることのないよう、人類への暴力行為の犠牲者の体験をテーマに取り組んでいく責任を意味するものだと受け取っています。

広島は紛れもなく、その悲惨で恐ろしい体験を通じ、今では我々の道徳的拠り所の一つであり、すべての人々に感銘を与える忍耐力と回復力を示す例となっています。

ヒロシマ賞は、1989年に現代美術の分野で人類の平和に貢献した作家の業績を顕彰し、世界の恒久平和を希求する「ヒロシマの心」を現代美術を通して広く世界へとアピールすることを目的として、広島市が創設した。第1回の三宅一生をはじめ、ロバート・ラウシェンバーグ、レオン・ゴラブ&ナンシー・スペロ、クシュシトフ・ウディチコ、ダニエル・リベスキンド、シリン・ネシャット、蔡國強、オノ・ヨーコが受賞し、受賞記念展を開催している。
2014年7月には第9回ヒロシマ賞の授賞式にあわせ、広島市現代美術館にてサルセドによるヒロシマ賞受賞記念展の開催が予定されている。

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