第54回ヴェネツィア・ビエンナーレ バードヘッド インタビュー


From Welcome to Birdhead World Again in Tokyo 2011 – What we take before, now, and in the future is all the same. Courtesy the artists

ART iT あなたたちバードヘッドは今年のヴェネツィア・ビエンナーレに参加しますね。あなたがた自身の作品と「ILLUMInations」という展覧会コンセプトにはどのような関係があると考えていますか。

バードヘッド(以下、BH) アーティスティックディレクターのビーチェ・クーリガーは、彼女の興味を引く数多くの現代のアーティストの作品の中に共通する光への探求を見出していて、それらは理性的であれ熱狂的であれ、ティントレットの後期の絵画を輝かせていたのと同じ光への探求を強烈に想起させるものだと言っていました。ティントレット自身もルネッサンス美術という明確な定義を持つ古典的な秩序をひっくり返すためにほとんど無謀な方法で制作し、同時代の固定概念を覆すことに専念しており、そうした絵画に現れる光の何が彼女の興味を引くのかといえば、合理性ではなく、むしろ美なのだということを言っています。彼女の興味が合理性ではなく美にあることと、彼女の言う無謀さというのとはまさに僕らの長期的なプロジェクトと一致しているんじゃないかな。

ART iT 現在国立新美術館で行われている『アーティスト・ファイル2011』に展示されている「Tang Poetry – On a Gate Tower at Yuzhou」では、街で撮影した標識の写真で唐の陳子昂の詩を再構成していますね。今年のヴェネツィア・ビエンナーレでも宋の文人、辛棄疾の詞を用いた同様のプロジェクトを発表すると聞きました。詩への興味についてもう少し教えてもらえますか。また、それらを写真作品に組み込むきっかけは何かありましたか。

BH 「ドラゴンボール」の話は知っているよね。世界に散らばった7つのドラゴンボール、それらすべてを集めた人は誰でもドラゴンを呼んで、願いをひとつ叶えてもらえる。僕らの場合は現代社会の中で未だに繰り返し使われている、もしくはほとんど消えてしまった漢字を探し集めて、好きな古典の詩のコラージュを作る。「ドラゴンボール」と同じ考え方で、僕らは願いを叶えたんだよ。


Top: Installation view of Welcome to Birdhead World Again in Tokyo 2011 – What we take before, now, and in the future is all the same at National Art Center, Tokyo, 2011. Courtesy the artists. Bottom: From Welcome to Birdhead World Again in Tokyo 2011 – What we take before, now, and in the future is all the same at National Art Center, Tokyo, 2011. Courtesy the artists

ART iT これらの詩を用いた作品において、あなたたちにとって写真を使うことが重要なのはなぜでしょうか。言葉もまたオブジェクトであり、それぞれの歴史を持っていることを強調するからですか。

BH 言葉の物質的な歴史を強調することだけが目的ではないです。現代中国社会の中で使われている漢字を撮影することで古典の詩を完成させる上で重要なことは、詩の有する意味と僕らが継続的に撮影している物理的環境の人々の写真の並置や、それらが互いに構築する雰囲気を通して作り上げられる関連性だね。

ART iT 写真へのアプローチについて聞かせてください。例えば、ある写真インスタレーションのタイトル「What we take before, now, and in the future is all the same」は、個々の写真や「Xin Cun」のような特定のプロジェクトに対してどのような意味を持っているのでしょうか。

BH 僕らは35ミリからシノゴのフィルムまで使って、街を歩き回りながら撮影していて、必要なときは特定の場所で撮影しています。2004年以降に撮影した大量の写真群はすべて僕らの人生のさまざまな部分から生まれたものです。だから、個々の写真は僕らの人生の小さな断片で、ただそれ以上のものではない。写真は同じことを継続的に行うことに重要な意味があるから、こうした習慣的な実践を維持しているんだ。厳密に言えば、写真というメディウムとそれを可能にする僕らの物理的環境との繋がりの更新を通してある種の精神的鍛錬を成し遂げられる。「Xin Cun」のようなプロジェクトはこうしたものの一部として考えられるよね。

ART iT デジタルテクノロジーは写真の制作方法や見方に変化をもたらしました。それによってより大量の写真撮影が可能になり、撮影時にそれほど厳選する重要性も高くなくなり、そのほか、イメージへのアクセス方法も広がっています。こうした写真の側面はあなたたちの考え方に関係したり、制作方法に影響を与えたりしていますか。

BH そういった現代の写真の側面にはまったく興味がなくて、僕らは写真を最初に始めた頃から今までずっとフィルムで撮っています。デジタルテクノロジーの発達のおかげで大量の写真を撮るようになったわけではないし、大量の写真が必要だから撮影するだけだよ。


Installation view of Tang Poetry – On a Gate Tower at Yuzhou (2011) at National Art Center, Tokyo, 2011. Courtesy the artists

ART iT 最後の質問になりますが、ヴェネツィアに出す作品に辛棄疾の詩を選んだのはなにか理由はありますか。また、そこで発表する写真の選択はどのように行ったのでしょうか。

BH ヴェネツィアでは「Song Poetry – Writing on the Wall of the Path to Bo Mountain」と200枚以上の写真のインスタレーションを見せる予定です。写真は規則正しくグリッド状に配置して、それぞれの写真の関係性から喜怒哀楽や静寂といった様々な感情、詩の重要性や展示するすべての写真に含まれているさまざまな空気感がヴェネツィアで完璧な形をなすはずだよ。

第54回ヴェネツィア・ビエンナーレ『ILLUMInations』は6月24日から一般公開。会期は11月27日まで。

特集インデックスに戻る

ヴェネツィア・ビエンナーレ——ILLUMInations: 第54回国際美術展

Copyrighted Image