しりあがり寿の勝手にプロポーザル 5

第5回 「あなたのプロポーザル」 選考結果発表!(その3)

今回も海の向こう、イタリアからのプロポーザルです。うーんなになに? おお! あのフランク・ロイド・ライト建築で有名なグッゲンハイム美術館のギャラリーを、スケボーで滑り降りるだと!? オモシロイねー。ご存知のように、この建物はカタツムリの殻みたいな構造で、全階のギャラリーがスロープでつながってる。それを利用して、ビューンて滑り降りるわけだ。キモチいいだろうな。その時、スケボーライダーから作品はどう見えるんだろうな。次から次へと、ただ名画が飛び去っていくんだろうか? フツーに鑑賞するのとは違う世界なんだろうな。

この画をオモシロイなー、と思ったのはまさに、作品を「見る側の視線」があるってこと。このテーマはどんどん広がりそうな気がするな。例えば、お馴染みルーブル美術館を子どもの視線と大人の視線で見比べてみるとか、暗闇の中、赤外線ゴーグルで巡ったらどうだろう? あるいは、あらかじめ申告した絵以外は布で隠されてあって、見た絵の分だけ入場料を払うとか、全部の絵が裏にされて飾ってあるとか、観客は全員全裸で作品を鑑賞しなければいけないとか、移動式の水槽の中から鑑賞するとか。そういう「作品と視線」「美術館と入場者」みたいな相対的なカンケーが、なんかオモシロク表現できると楽しいかなーなんて思いました。ボクだったら名画だらけの美術館の中を、わざわざ目隠しして歩くってのをやってみたいな。入場料がもったいないけど(笑)。

展覧会企画書

■応募者
フランチェスコ・スパンピナート
(アーティスト、アート理論家/ボローニャ、ニュヨーク)

■展覧会タイトル
DINEDROMOSCOPE
(ギリシャ語の「渦(dini)」「走行(dromos)」「見ること(skopos)」を組み合わせた造語)

■企画趣旨 
ソロモン・R・グッゲンハイム美術館の観客のための企画。観客は最上階から1階まで、館内の螺旋状のスロープを「Dinedromoboard」に乗って滑り降りる。「Dinedromoboard」は建物の半径曲率に合わせて湾曲させたスケートボード状のボードで、著名なフランク・ロイド・ライト建築は、フェナキスティスコープやゾエトロープのような新種の視覚装置「Dinedromoscope」に変貌。従来のフロアガイドやオーディオガイドなどに加え、速度が空間把握の、そして作品鑑賞の新たな手引きとなる。ただし、安全面から考えて、プロのアスリートに限ったコンテストとすることも検討する。

■出品内容
10〜30個の「Dinedromoboard」
ボード貸し出し所
「グッゲンハイムでサイケデリックな体験をしよう」をキャッチコピーにした印刷物(チ
ラシ、ポスター、看板など)

■展覧会予算
$15,000

■会期・会場
2009年、ソロモン・R・グッゲンハイム美術館50周年記念に合わせて。

■観覧料
通常の観覧料金

初出:『ART iT』 No.22 Winter/Spring 2008

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