しりあがり寿の勝手にプロポーザル2

第2回『現代”温泉”美術館』
 
もし、温泉が湧いたらどうする? スーパー銭湯やスパやらクアやら、そんなのでもいいけど、もうそういうのってイッパイあるでしょ。ここはひとつ、温泉の上に現代美術館でも造りましょうよ。それで温泉を利用した現代美術の作品をいっぱい並べるのだ。もちろん、せっかくだから温泉も入れるのね。入り口でお客さんは裸になって、現代美術のロッカーに現代美術の鍵で服をしまって、現代美術の受付で現代美術のタオルを受け取って、現代美術と裸で向き合い、触れ合うのです。いいなー、ダメかなー。だって、現代美術ってまだまだ固くて難解なイメージあるでしょ。

なんかもっとゆるい触れ合いもいいよね。例えば、湯舟につかってると湯ケムリの向こうに現代美術さんがいらっしゃる。「おやおや、現代美術さん、ご苦労なことですな。さあさ、背中でも流しましょう」とか言って現代美術さんと背中を流し合うのよ。その三助の現代美術がまた抽象的ながら美しかったりして…またその作品がとてもキレイな音で音楽を奏でたりして…その作品に背中を流されていると、なんだかもうこの世のものとは思えないほどだったり、あるいはその作品は涙のように温泉を染み出させていて、その湯につかってると世界中の悲しみに浸ってるような気がして、もう風呂中、しくしくススリ泣き状態だったりして…。まぁいろいろあるけどさ、現代温泉美術館なんてそりゃあバカバカしいと思うけどさ、世界中でひとつくらいだったらあってもいいと思わない? だって他にいらないもの、いっぱいのさばってるんだもの。

展覧会企画書

■展覧会タイトル
『現代“温泉”美術館』

■企画趣旨 
温泉と現代美術の画期的なコラボレーションにより、
現代美術のすそ野を画期的に広げまくる

■出品内容
・まず温泉を堀あてる
・温泉が出たらその上に美術館をつくる
・でもって美術館の中に現代美術的浴場をつくる
 
■展覧会予算
・温泉掘りあてるのに10億円
・美術館に10億円(テキトー)

■会期・会場
どこでも温泉の出るところ

■観覧料
お風呂入りほうだい
1日券5000円 3時間 3000円
レンタルバスタオル1000円 ゆったり着1000円

■参考資料
「世界の温泉」みたいな本

初出:『ART iT』 No.19 (Spring/Summer 2008)

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