しりあがり寿の勝手にプロポーザル 4

第4回 「あなたのプロポーザル」 選考結果発表!(その2)

いよいよ、なんですな。ゲイジツの秋ですな。てなカンジで今回ご紹介するのは、ポーランド出身のモニカさんの案でーす。大学の卒業制作として、すでに実施した展覧会ということだけど、オモシロイので特別に選びました。えーと、つまり、ギャラリーに設置されたケースの中に、アーティストがゲームのマニュアルを置いて、観客がその指示に従ってプレイする、というもの。で、このゲームというのがどれも相当シュールで、なんだか不思議。指示通りにみんなやったなら、ギャラリーのそこかしこに、段ボールを掲げて立ってる人や、永遠の愛を誓ってるカップルや、ティーバッグと格闘してる人がいることになる。

作者の意図からは離れて、実際の現場は「アートに奉仕する精神と羞恥心の戦いの場」だったり「感心していいのか笑っていいのか、困惑の場」だったり、とても微妙な空気が流れる濃密な空間になる気がするなー。ボクだったらどんなマニュアル作るかなー? 「参加者は全員、隣の人に3回おじぎしてポーッと言うこと」「その場で現在自分が身につけている中で一番大切なものを取り出し、それを詩に詠むこと」「会場内の任意の照明のスイッチをON、またはOFFにすること」「自分の父あるいは母のモノマネを10分間続けること」などなど……。いやー、みんな参加してくれたらオモシロイ会場になるだろうなー。恥ずかしがる人、途中で苦笑して止める人、真剣に悩む人、献身的な真面目さで取り組む人…実際そこに現れるのは、とっても「人間くさい」場だったりするかもね。

展覧会企画書

■応募者
モニカ・レンヅネル (インディペンデントキュレーター、東京)

■展覧会タイトル
マニュアルCC

■企画趣旨 
これは、作品の著作権の一部を開放するクリエイティブ・コモンズライセンス(CC)を利用したゲームである。アーティストが作ったマニュアルにが作ったマニュアルに従い、観客は、形式や時間、場所を選ばす、自ら作品を再現できる。芸術作品の非物質化、作者の不明瞭さ、完成品に対するアイディアの優越性、ある種のユーモアに対する概念的追求に共感し、この企画は生まれた。2007年、ヤギェウォ大学(ポーランド)の卒業制作として発表した。

■出品内容
展示ケース内にマニュアルカードを展示。観客はそのコピーを自由に持ち帰れる。

■展覧会予算
展示ケースの製造費、カードの印刷代。
カード の指示に従って作品を作るには費用はほとんどかからないことが前提。

■会期・会場
展覧会またはイベントとしていつでも/アクセスしやすい会場で

■観覧料
¥500

■参考資料
作家たちによるマニュアルカードの見本

初出:『ART iT』 No.21 (Fall/Winter 2008)

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