藤原慎治は、生命の終着と再生にかたちを与えようとするアーティストです。たとえば、等身大のヒトガタたちを、展示空間を海のように見立てて配置する。中空のそれらの輪郭には裂け目や穴が施され、命を運ぶ器から中身がもれ出しているようです。あるいは、海辺を歩いて植物の種子や動物の骨などを採取、それを素材にして彼岸と此岸がないまぜになった世界を構成する。山に行けばたくさんのオニグルミの実を拾い、発芽させ育ててみる、そうした一連の行為を作品とする。
生き物とは「その内を時間が流れるもの」*だと言われます。藤原作品の技法や見かけは色々ですが、いつも思い馳せられているのは、そうした生き物によってのみ記憶される時間、そしてまた、同様に一個の生き物としての「私」の船出と帰還です。
本展では、自然から拾い上げた素材による作品、ヒトガタによる近作などを展示し、何年も積み重ねてきたその表現の示す先を紹介します。有限である「私/私たち」の生命ですが、諦念ではなくどうにか希望へと繋ごうとする、いわば様々な祈りのかたちを藤原はここで見せてくれるでしょう。
*海老井英次(国文学者)
◇展覧会概要
展覧会名: 藤原慎治展
開催期間: 平成24年8月4日(土)~9月17日(月祝)
月曜休館(ただし、祝日の場合は開館)
開催場所: 塩江美術館企画展示室
開館時間: 午前9時~午後5時(入館は午後4時半まで)
入館料: 一般300円 大学生150円
(常設展観覧料含む/団体は20名以上2割引)
高校生以下、65才以上の方(長寿手帳等が必要)、障害者手帳等の保持者は無料
主催: 高松市塩江美術館
◇イベントほか詳細は、高松市塩江美術館ホームページをご覧ください。