■-2015年8月30日[日]「サイ トゥオンブリー:紙の作品、50年の軌跡」[原美術館]

サイ トゥオンブリー:紙の作品、50年の軌跡
2015年5月23日[土]-8月30日[日] 原美術館[東京都品川区]


「Petals of Fire (炎の花弁)」 1989年 144×128 cm アクリル絵具、オイルスティック、鉛筆、色鉛筆、紙 © Cy Twombly Foundation / Courtesy Cy Twombly Foundation

【概要】
原美術館では、20世紀を代表する巨匠サイ トゥオンブリーの個展を日本の美術館として初めて開催します。この展覧会は、2011年に死去した作家が生前自ら作品の選定に関わり、サンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館、欧米の主要な美術館で開催され評判を呼んだ個展を、当館の空間に合わせて再構成したものです。トゥオンブリーの即興性、速度、激情、直感が、いきいきと横溢する紙の作品(ドローイング、モノタイプ)約70点が一堂に会し、その50年にわたる孤高の画業を紹介する画期的な機会となります。なお、別館ハラ ミュージアム アーク(群馬県渋川市)でも出品作品の一部を展示いたします。

【開催要項】
展覧会名   「サイ トゥオンブリー:紙の作品、50年の軌跡」 
(英題 Cy Twombly – Fifty Years of Works on Paper)
会期 2015年5月23日[土]-8月30日[日]
会場 原美術館
主催 原美術館、Hara Museum Fund
特別助成 駐日アメリカ合衆国大使館
助成 テラ財団
企画協力 サイ トゥオンブリー財団

開館時間   11:00 am - 5:00 pm(祝日を除く水曜は8:00 pmまで/入館は閉館時刻の30分前まで)
休館日   月曜日(祝日にあたる7月20日は開館)、7月21日
入館料   一般1,100 円、大高生700 円、小中生500 円/原美術館メンバーは無料、学期中の土曜日は小中高生の入館無料/20 名以上の団体は1 人100 円引
交通案内   JR・京急「品川駅」高輪口より徒歩15 分/都営バス「反96」系統「御殿山」停留所下車、徒歩3分/京急「北品川駅」より徒歩8 分 *掲載時、省略される場合は「品川駅」を優先してください。

原美術館
東京都品川区北品川 4-7-25 〒140-0001
Tel 03-3445-0651(代表) Fax 03-3473-0104(代表)
E-mail info@haramuseum.or.jp 
ウェブサイト http://www.haramuseum.or.jp
携帯サイト http://mobile.haramuseum.or.jp
ブログ https://www.art-it.asia/u/HaraMuseum
Twitter http://twitter.com/haramuseum (@haramuseum)

ギャラリーガイド 日曜・祝日には当館学芸員によるギャラリーガイドを行ないます(2:30pmより30分程度)

関連イベント  
「サイ トゥオンブリー:紙の作品、50年の軌跡」 開催記念キュレータートーク[予約制]
講師 ジュリー シルヴェスター(サイ トゥオンブリー財団)聞き手:安田篤生(原美術館)
日時 5月23日[土] 2:00 – 4:00 pm
場所 原美術館ザ・ホール 日本語英語逐次通訳付き
料金 一般1,000円(別途要入館料)、原美術館メンバー無料(同伴者要参加費)

レクチャー&ビデオ上映 「ビデオと絵画:スクリーンはキャンバスになりえるのか?」
講師 スティーブン サラザン
日時 6月20日[土]14:00-16:00
フィルム、ムービングイメージ、メディアアートを専門とする教授・キュレーターのスティーブン サラザン氏を講師に迎え、ビデオ作品の上映を交えながら、ビデオと絵画の様々な関係性とその歴史を探ります。 本レクチャーでは、Bill Viola, Robert Cahen, Hans Op de Beeck, Pascal Lievre, John Sanborn, Jean-Paul Fargier, 出光真子といった作家の映像作品を取り上げます。
場所 原美術館 ザ・ホール
料金 一般1,500円(別途要入館料)/原美術館メンバー(およびご同伴者2名様まで) 1,000円
英日逐次通訳付き
ご予約はe-mailにて、表題に[ビデオと絵画・申込]、本文に氏名、ご連絡先電話番号、人数を明記し(event@haramuseum.or.jp)までお送りください。

講演会「建畠晢氏、サイ トゥオンブリーを語る」
自らを「トゥオンブリーのミーハー的大ファン」と称する建畠晢氏に、トゥオンブリーの魅力について存分に語っていただきます。
講師  建畠晢(多摩美術大学学長、埼玉県立近代美術館館長、詩人)
日時 7月11日[土]14:00-16:00
場所 原美術館ザ・ホール
料金 参加費:一般1,000円(別途要入館料)、原美術館メンバー無料(同伴者要参加費)
ご予約はe-mailにて、表題に[建畠晢氏講演会申込]、本文に氏名、ご連絡先電話番号、人数を明記し(event@haramuseum.or.jp)までお送りください。

[その他のイベント]
ダンスパフォーマンス 「ミエカクレ(glimpse)」
島地保武×アマンシオ・ゴンザレス×ジョシュ・ジョンソン 

2015年7月24日[金]、25日[土]、26日[日]
ザ・フォーサイス・カンパニーで活躍する三人の男性ダンサー達によるダンス公演。詳細はこちらへ。

【関連展示】
「サイ トゥオンブリー×東洋の線と空間」(英題 Line and Space: Cy Twombly and East Asia)
2015年5月29日[金]-9月2日[水]
ハラ ミュージアム アーク 觀海庵 群馬県渋川市金井2855-1 〒377-0027

別館ハラ ミュージアム アークの特別展示室「觀海庵」において、本展出品作品の一部と、東洋古美術作品を対置して展示いたします。和風の展示空間(設計 磯崎新)での、時代と東西の差を超えた造形の対話をご鑑賞ください。(開館時間、休館日、交通案内などはウェブサイトをご覧ください)。
http://www.haramuseum.or.jp

【出品作品数】
約70点(すべてサイ トゥオンブリー財団所蔵)/作品の一部はハラ ミュージアム アークに出品予定。


「Untitled (無題)」 1970年 70.5×100 cm ワックスクレヨン、ペンキ、紙 © Cy Twombly Foundation / Courtesy Cy Twombly Foundation

【サイ トゥオンブリーとは】
サイ トゥオンブリー(Cy Twombly, 1928-2011)は20世紀を代表するアーティストの一人です。絵画と彫刻の両方で旺盛な制作活動を展開しましたが、とりわけ、《描画された詩》とでも形容すべき独特の絵画作品は他の追随を許しません。アメリカ出身ですが20代の終わりにイタリアへ移住し、少しずつ大西洋の両側で孤高のアーティストとして評価を高めて行きました。その世界的な評価は、高松宮殿下記念世界文化賞(1996年)、ヴェニス ビエンナーレ金獅子賞(2001年)、レジオンドヌール シュヴァリエ勲章(2010年)などからもうかがえます。

【本展の構成、成り立ちと意義】
本展は、サイ トゥオンブリーの類まれなキャリアを、紙の作品(ドローイング、モノタイプ《注1》)によって回顧するもので、1953年から2002年までの50年間に制作した紙の作品約70点を紹介いたします。本展は、2003年にサンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館で開催された展覧会《注2》が原型です。これは、同館初の外国人キュレーターであるジュリー シルヴェスター(現・サイ トゥオンブリー財団)が企画し、トゥオンブリー自身が作品の選定に関わったものです。トゥオンブリーは残念ながら2011年に亡くなりますが、サイ トゥオンブリー財団の全面的協力により、このたび原美術館で開催することとなりました。日本ではいくつかの美術館《注3》がトゥオンブリー作品を収蔵しており、美術館のグループ展には何度か《注4》取り上げられてきましたが、残念ながら美術館規模の個展は日本でまだ行われたことがありません。その意味でも、本展の意義は画期的と言えます。
 なお、出品作品の一部は、原美術館の別館ハラ ミュージアム アーク(群馬県渋川市)の特別展示室「觀海庵」において展示いたします。床の間と違い棚を備えた書院造を引用した和風の展示空間(設計 磯崎新)の中で、通常「觀海庵」で展示する古美術作品(原六郎コレクション)と、トゥオンブリー作品を対置する形で展示いたします。「手で描く/書く」という表現行為に全精力を傾けるトゥオンブリーの作品が、また違った印象を生み出すかもしれません。東西の文化圏や近世と現代という時代の違いを超えた美の対話をご鑑賞いただけることでしょう。


 「Proteus (プロテウス)」 1984年 76×56.5 cm アクリル絵具、色鉛筆、鉛筆、紙 © Cy Twombly Foundation / Courtesy Cy Twombly Foundation

【その作風】
トゥオンブリーが作家活動を始めた1950年代前半のアメリカでは、ジャクソン ポロック(1912-56)に代表される《抽象表現主義》が美術界を席巻していました。したがってトゥオンブリーは抽象表現主義の第二世代的存在と見られることもあります。ポロックやマーク ロスコ(1903-70)といった抽象表現主義の第一世代は、その初期には直接間接にシュルレアリスムの影響を受け、自動書記(オートマティスム)ふうな描き方をしたり、具象とも抽象とも、あるいは象徴とも記号とも言えるような形態を描いた時期がありました。トゥオンブリーの特色である、一見《子供の落書き》のような即興的作風は初期から見られますが、それに一脈通じるものもあります。
ポロックはやがて有名な《アクションペインティング》へ移行しますが、抽象表現主義の傾向はむしろ、後期のロスコのように、色彩の面の広がりによる画面構築=《カラーフィールドペインティング》に向かって行きます。しかしトゥオンブリーは自らのスタイルにこだわり、手で描くという身体的所作によって内なるエネルギーを画面にぶちまけるような即興性と激情性を保持し続けました。特に1957年に拠点をローマに移してからは、60年代のアメリカ美術、すなわち、《ポップアート》や《ミニマルアート》という両極端へ展開していくアメリカのアートシーンとは距離を持ちながら、自分の道を歩み続けました。ある意味、ポロックの《アクションペインティング》の特徴を、アメリカのアートシーンの《外》に居ながら自己流に発展させたと言うこともできます。
ローマに移った後のトゥオンブリーは、地中海の神話や歴史およびさまざまな文学作品(古典から近代まで)にアイデアのヒントを見出します。また一方で、身辺の風景が作品のテーマになることもありますが、普通の意味での風景画になることは決してありません。トゥオンブリーの絵画・ドローイング作品の画面は、即興的に描かれる線や絵具の飛沫に、文字・数字・記号(神話や文学に由来するものも多い)がランダムに組み合わさって構築されます。それは、無秩序なようでいて、《描画された詩》と言えるような特異なイメージの空間と言えます。
本展は紙に描いた作品にフォーカスしていますが、トゥオンブリーの場合、カンヴァスに描く絵画でも鉛筆を使うこともあれば、紙に描く場合に絵具を使うことも珍しくありません。また、クレヨンや、チョークや、画材ではないいわゆるペンキなどを使うこともあれば、ときには紙の上に紙を貼るなどのコラージュも併用し、材料の選び方は奔放とさえ言えます。また、1980年代後半から最晩年にいたる作品は(絵画もドローイングも)、色彩の使い方において華やかさと激しさを増して行きます。そして、本展で紹介する紙の作品は、トゥオンブリーの即興性、速度、激情、直感などが、カンヴァスに描いた絵画作品にも増してストレートに露出しているように感じられます。


「Untitled(無題)」 2001年 124×99 cm アクリル絵具、ワックスクレヨン、鉛筆、コラージュ、紙 © Cy Twombly Foundation / Courtesy Cy Twombly Foundation

【その世界的評価】
トゥオンブリーの一貫して孤高な創作活動は1970年代末に転機を迎えます。1979年、ニューヨークのホイットニー美術館がトゥオンブリーの回顧展を開催し、同じ年に作品のカタログレゾネ(総目録)第一巻も発行されました。同書には、フランスの高名な哲学者・批評家ロラン バルトがトゥオンブリー論《注5》を寄稿しました。こうしてトゥオンブリーは、1980年代に入って国際的に高い認知度を得るようになりました。そして、1994年に今度はニューヨーク近代美術館(MoMA)で回顧展が開かれ、翌1995年、テキサス州ヒューストンのメニル コレクション美術館に、トゥオンブリー作品だけを展示する別館《サイ トゥオンブリー ギャラリー》がレンゾ ピアノの設計で完成しました。そして晩年は、冒頭にも述べたように、高松宮殿下記念世界文化賞(1996年)、ヴェニス ビエンナーレ金獅子賞(2001年)、レジオンドヌール シュヴァリエ勲章(2010年)と数々の賞に輝き、世界的な美術家として揺るぎない名声を獲得したのです。
《注5》 ロラン バルト「美術論集」(みすず書房、1986年)に邦訳あり。

*テラ財団(The Terra Foundation for American Art)について
テラ財団はシカゴを拠点にアメリカ芸術の探究と普及を目指す団体です。作品所蔵と公開から始まった同財団は、文化交流を深めるため、革新的な展覧会や研究、教育普及への援助と協力を行ないます。

《注1》 原画から転写するという点では版画技法の一種だが、原版から同質のものを一定の数を刷れる一般の版画とは違い、1~2枚しか刷れない。複数の手法があるが、一般的には、金属板・ガラス板などに描画し、インク・絵具が乾く前に紙を当ててプレスし、転写する。
《注2》 その後、ポンピドゥーセンター(パリ、2004)、サーペンタインギャラリー(ロンドン、2004)、ピナコテーク デア モデルネ(ミュンヘン、2004)、ホイットニー美術館(ニューヨーク、2005)、メニル コレクション美術館(ヒューストン、2005)でも開催
《注3》 国立国際美術館(大阪)、ベネッセハウスミュージアム(香川)、セゾン現代美術館(長野)、DIC川村記念美術館(千葉)、いわき市立美術館(福島)、など
《注4》 「絵画1977−1987 開館10周年記念」(国立国際美術館、1987)、「アメリカの美術 1945年以後」(栃木県立美術館、1988)、「戦後アメリカ絵画の栄光 1950年代/60年代」(滋賀県立近代美術館、1989)、「現代美術の神話 ソナベント・コレクション」(セゾン美術館、京都国立近代美術館ほか国内巡回、1990)、「芸術家との対話 イヴォン・タランベール・コレクション」(横浜美術館、1998)、など

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「サイ トゥオンブリー:紙の作品、50年の軌跡」
2015年5月23日[土]-8月30日[日]

「そこにある、時間─ドイツ銀行コレクションの現代写真」
9月12日[土]-2016年1月11日[月・祝]

原美術館とハラ ミュージアム アークはTwitterで情報発信中。
http://twitter.com/haramuseum (@haramuseum)
http://twitter.com/HaraMuseumARC (@HaraMuseumARC)

原美術館とハラ ミュージアム アークは割引券一覧iPhoneアプリ「ミューぽん」に参加。
http://www.tokyoartbeat.com/apps/mupon

原美術館ウェブサイト
http://www.haramuseum.or.jp
http://mobile.haramuseum.or.jp

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