秋の夜長の束芋がたり

群馬・ハラ ミュージアム アークです。

このたび、ヴェネチアビエンナーレの日本館で、我が国の代表として個展を開催中の作家・束芋氏をお招きして、トークイベントを開催する運びとなりました。

現在開催中の「ボディ アンド ソウル―原美術館コレクション」展では、束芋作品《真夜中の海》をご覧いただくこともできます。束芋作品は、大掛かりなインスタレーションを特徴としておりますので、作品を観賞後に作家の言葉を直接聞くことができるこのたびの機会は、稀有なチャンスといえるでしょう。

さて、ハラ ミュージアム アークにおいて初めて束芋作品を展示したのは、2003年のことでした。ギャラリーB一棟を使った小個展「束芋―夢違え」をご記憶の方もいらっしゃることでしょう。

束芋は当時、「夢違え」というタイトルを付けたことについて、以下のように語っていました。
「夢違え」の意味は、「悪い夢を見た時、災いを免れるように呪(まじな)いをすること」(広辞苑より)だそうです。この言葉から私が思い浮かべるのは、現在の社会状況をまるで夢に見たことのように非現実的にしか受け取れず、それが自分とは関係ないことのように「国がなんとかしてくれる、なんとかするべきだ」とまるで呪文のように唱え、自分に負わされるはずの責任から少しでも遠くに逃げようとする人の姿です。そして、どこかで自分自身もその人達と変わらない感覚でいることを恐ろしく感じ、罪悪感からか、その行為自体を多少なりとも美化させたく思い、この言葉を選びました。

その際に発表された《にっぽんの御内》は、ねずみ型のマウスを使って鑑賞者が作品の展開に参加できるインタラクティヴな仕様が好評を博し、やがて原美術館のコレクションに加えられました。

また、原美術館においては、2006年に全館を使った個展「ヨロヨロン 束芋」を開催。そのカタログには、作家による手書きの言葉が寄せられました。

この「ヨロヨロン 束芋」展において発表された《真夜中の海》も、個展開催後、当館のコレクションに加えられましたが、原美術館ギャラリー1という、吹き抜けの空間を使い、中二階のバルコニーから階下の作品を観賞する個展時の仕様は、さながら断崖絶壁の上から荒海を見下ろすような展示であり、再現が困難だったため、ハラ ミュージアム アークでの展示においては、ハラ ミュージアム アークの展示室に合った、全く異なるインスタレーションの検討を前提として、所蔵されることになりました。


原美術館 「ヨロヨロン 束芋」展(2006年)より《真夜中の海》


現在ハラ ミュージアム アークで公開中の《真夜中の海》

束芋は2008年、ハラ ミュージアム アークでの《真夜中の海》のインスタレーションにおいて、初めて鏡を使用しましたが、鏡を使った演出は、2010年に横浜美術館と国立国際美術館を巡回した「断面の世代」展でも展開を見せ、やがてひのき舞台である本年度のヴェネチアビエンナーレへと継承されました。

このたびのトークイベントにおいては、「ヨロヨロン 束芋」展の担当学芸員、青野和子が聞き手となり、《真夜中の海》からヴェネチアビエンナーレまでの軌跡を中心に、映像での作品紹介も交えながら、束芋氏ご自身の言葉でじっくりと語っていただきます。
秋の夜長、特別な一夜をごゆっくりとご堪能ください。

【開催要項】
イベント名:秋の夜長の束芋がたり―《真夜中の海》からヴェネチアビエンナーレまでー
日時:2011年11月5日[土]午後5時―6時30分
会場:ハラ ミュージアム アーク  カフェ ダール 〒377-0027 群馬県渋川市金井2855-1
聴講料:1500円 (ワンドリンク付き)
*当日は, 束芋作品《真夜中の海》を含む開催中の展覧会「ボディ アンド ソウル―原美術館コレクション」展、「時季(とき)の造形」を午後4時45分までご覧いただけます。
定員:60名 (要・事前予約・先着順受付)
語り手:束芋
聞き手:青野和子(原美術館主任学芸員)
ご予約、お問い合せは、ハラ ミュージアム アークまで Tel: 0279-24-6585
E-mail: arc@haramuseum.or.jp

ウェブサイト: http://www.haramuseum.or.jp   
携帯サイト: http://mobile.haramuseum.or.jp   
ブログ: https://www.art-it.asia/u/HaraMuseum 
ツイッター: http://twitter.com/HaraMuseumARC
交通案内: JR上越線「渋川駅」より「伊香保温泉行」バスにて15分、「グリーン牧場前」下車。お車の場合 関越自動車道「渋川・伊香保I.C.」より8km、15分。

【束芋 Tabaimo】
1975 年兵庫県生まれ。現在長野県在住。1999 年京都造形芸術大学卒業。 1999 年、大学の卒業制作として制作した映像インスタレーション«にっぽんの台所»がキリン コンテンポラリー・アワード最優秀作品賞受賞。以降、内外で目覚ましい活躍を続けている。主な個展に2003 年ハラ ミュージアム アーク「束芋 夢違え」、2006 年原美術館「ヨロヨロン 束芋」(東京)、カルティエ現代美術館(パリ)、2010 年タイラー プリント インスティテュート(シンガポール)、パラソル ユニット(ロンドン)、横浜美術館、国立国際美術館など。2001年横浜トリエンナーレ、2002年サンパウロ ビエンナーレ、2006年シドニー ビエンナーレ、2007年ヴェネチア ビエンナーレ(イタリア館)など大型国際展への参加多数。本年6月1日より11月27日まで開かれているヴェネチア ビエンナーレでは、我が国の代表として日本館で個展を開催している。また随筆や本の装丁、新聞小説の挿絵など、さまざまなジャンルで才能を発揮している。

当日ご覧いただける展覧会のお知らせ
■現代美術ギャラリー 「ボディ アンド ソウル―原美術館コレクション」展(只今開催中)
■特別展示室觀海庵 「時季(とき)の造形」(10/28より)
休館日:木曜日(11月3日、12月29日は除く)、1月1日[日]
※荒天時、都合により臨時休館する場合があります。

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