記者会見リポート「アート・スコープ2009-2011」―インヴィジブル・メモリーズ

東京・原美術館より

9月9日(金)に行われた「アート・スコープ2009-2011」―インヴィジブル・メモリーズ記者会見の模様を簡単にリポートします。まずはホールでの記者会見の模様です。


左より、原俊夫(原美術館館長)、江頭啓輔(ダイムラー・ファウンデーション ジャパン理事長)、出品作家の小泉明郎、佐伯洋江、エヴァ・ベレンデス、[通訳 松下由美]、ヤン・シャレルマン(敬称略)。

後半は展示室に移動し、作家が一人ずつお話しました。簡単にご紹介します。


「多くの人が整然と行き交う東京では、自分が透明人間になったような不思議な浮遊感を感じた」と語ったヤン・シャレルマンさん。秋葉原に滞在し、居酒屋での会話も楽しんだそうです。

「東京の滞在からインスピレーションを受け、内なるエネルギーをイメージして制作しました。素材はスタイロフォーム、内側にはエポキシ樹脂と顔料を塗っており、軽さと強さを持ち合わせた作品です。以前から日本の侍映画が好きなこともあり、刀で竹をスパッと切ったような形です。“過去”と“未来”の間にある静止した“現在”を現わし、聖なる智恵につながる媒介のようなイメージです。一方、2階の展示作品は同じ素材を用いつつも対象的です。流れ星が飛ぶようなカーブを描き、顔料に鉄サビを混ぜて、自然な感じを出しています。」


鉛筆やシャープペンシルを用いた緻密なドローイングを描く佐伯洋江さん。下描きをせず、画面と向き合いながら、一つの線から次の線へと導かれ“旅”をするように制作しています。制作期間は集中が途切れないよう、朝から晩まで画面と向き合うのだそうです。

「ドイツに滞在したのは去年の夏です。一人旅が好きでいろいろ旅行をしていましたが、三カ月の海外生活は初めてでした。滞在中にはたくさん散歩をし、イメージを拾っていく作業を行ないました。作品制作には集中することが必要なので、帰国後今年の春ごろから制作した。ドイツの街から受けたモノクロームで直線的なイメージを、自分の有機的な作風にいかに取り込むかに苦戦しました。」


金属や幾何学的な模様など硬質な素材や要素を用いながら、軽やかな作風が特徴のエヴァ・ベレンデスさん。カーテンや衝立のようなインテリア的な要素も見られます。2009年の春から、6か月の赤ちゃんを連れ、家族で滞在しました。

「ここにあるのは帰国後1年くらいの間に制作した作品群です。来日時には東京の街を歩き回るなか、特に70年代後半~80年代の日本の建築に関心を持ちました。もともとヨーロッパの建築に興味があったのですが、日本の建築を見るとヨーロッパより自由に、相反するスタイルが混在しているように思いました。また、これまで“クラフト(工芸)”と“ファインアート(美術)”は衝突する要素を感じることがありましたが、日本ではうまく混在しているのを感じ、それが自分の作品にとって新しいアングルを与えるきっかけとなりました。」


監督である自分と出演者が対話しながら、ストーリーを展開させる手法を用いた映像作品を制作している小泉明郎さん。オランダなどの海外生活を経て、「日本」をテーマに制作することに関心のある小泉さんは、今回のベルリン滞在では、崩壊した壁のモニュメントや連行されたユダヤ人の名前を刻んだ道端のプレートを見て、歴史や社会について考えさせられたのだそうです。

「今回は映像作品を二つ出品し、内1点はアート・スコープのために制作した新作です。どちらも“特攻”をテーマにしています。2007年に海外から帰国して以来、日本をテーマに制作することに関心があります。“特攻”をテーマにしたのは、自分にとって究極的なものだと感じたからです。自分の中に存在する“矛盾”に形を与える作業を常にしていますが、その矛盾を掘り下げていくと歴史に行き着くのです。」


同日開催されたオープニングレセプションより。
撮影:全て金井塚太郎

「アート・スコープ2009-2011」─インヴィジブル・メモリーズは12月11日[日]まで原美術館で開催中。四者四様の表現をお楽しみください。

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原美術館
「アート・スコープ2009-2011」─インヴィジブル・メモリーズ
9月10日[土]―12月11日[日]

「東日本大震災被災地復興支援『奈良美智×原美術館『My Drawing Room』チャリティ大判カードセット」販売中。

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【次回展覧会】
ジャン=ミシェル オトニエル:マイ ウェイ
2012年1月7日[土]―3月11日[日](予定)

杉本博司 Stylized Sculpture ハダカから被服へ(仮題)
2012年3月31日[土]―7月1日[日]

ハラ ミュージアム アーク
■現代美術ギャラリー
「ボディ アンド ソウル―原美術館コレクション」展
9月17日[土]-2012年1月4日[水]

■特別展示室 觀海庵
「姿色端麗―重要文化財『縄暖簾図屏風』を中心に」
9月17日[土]-10月26日[水]
「時季(とき)の造形」
10月28日[金]-2012年1月4日[水]

原美術館ウェブサイト
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