1_チアゴ ホシャ ピッタ 「ホームアゲイン」展作家解説[原美術館]

「ホームアゲイン―Japanを体験した10人のアーティスト」展出品作家にメールインタビューを行ない、彼らが東京で何を見、感じ、表現したのかを探りました。
第一回はチアゴ ホシャ ピッタを紹介します。彼は2008年に3カ月間東京に滞在、初めて経験する東京の雑踏に圧倒されるうちに、装飾を排した建築の壁に着目するようになりました。なお、本展開催に合わせた今回の来日はサンパウロビエンナーレ参加のため、一カ月早いものとなりました。
聞き手: NPO法人アーツイニシアティヴ東京[AIT/エイト] *この文章は展示室にも掲示されております。


2012年7月来日時のスナップより。

チアゴ ホシャ ピッタ Thiago Rocha Pitta ブラジル 1980年生
ブラジルのサンパウロ在住。シンガポールビエンナーレ(2006)、サンパウロビエンナーレ(2012)などに出品。東京滞在中(2008)には、都市を構成する建築のシンプルな形状に心引かれ、建築の無機的な要素と、有機的な塩の結晶を融合させたドローイングやインスタレーションを制作した。ピッタは、自然界あるいは人工世界に見出しうる変化・風化・流動等の物理的現象に着目し(塩の結晶は、自然界の変化の象徴としてしばしば使用する素材)、インスタレーションや映像作品へと結実させる思索的な作風が特色。原美術館所蔵作家。

問1:2008年の東京滞在では、建物の壁に雲や雨模様が描かれたドローイングを制作しました。人間と自然の関係性がたびたび作品に表されているように見えますが、それはなぜですか。

東京で制作したドローイングのシリーズは、その後に行った「荒天の日の絵画プロジェクト」のスケッチとして描かれました。そのプロジェクトで制作したのは、時間や天候の変化と共に変わる作品です。ポルトガル語には、時間と天候の両方の意味を表す「テンポ」という言葉もあるのです。

問2:新作では、コンクリートを使った作品を制作しました。それは、カーテンのようにも、船の帆のようにも見えます。これは風、不在、あるいは軽さなどを想像させますが、そのような詩的なものに興味を持っているのですか?

これは、「地質大陸移動の記念碑」というシリーズの一つです。これらは、それぞれが違う物語を持ち、輪郭も異なる石化した帆船です。帆船は、動きを表すほか、航海、旅などを示唆していますが、石化されることで岩のようになり、その動きは固まります。それらは、帆船としての軽やかさと、石化による重量感の両方を伴っています。軽さと重みを同時に持つことは、対極的で緊張関係を持つように想像しがちですが、もしかするとそうした危うさばかりではなく、それらは快適に存在しているかもしれないのです。


チアゴ ホシャ ピッタ 「地質大陸移動の記念碑」 布、セメント 2012年 260 x 58 x 177cm 撮影:木奥惠三

問3:詩やフィクションは作品づくりに関係していますか。

両方とも、作品に関係しています。

問4:東京に滞在した時には、塩が紙に浸食する作品も制作しました。自然界のプロセスや引力、天候など、人のコントロールが効かない要素は作品作りにおける重要なポイントですか。

もし、人が引力や天候さえもコントロールできるようになってしまえば、人には手に余る行為だと思います。私たちが力と呼ぶこうした要素は、決して抑制することはできないのですから、コントロール出来ないと考える必要も無いのです。
また、地球に存在するものが引力によって形成されることは、私にとってそれほど重要なことではありませんが、人がコントロールできないものの先に自由があると考えると、それらは重要な要素だと考えられます。

Tumbler本展特設サイト http://homeagain2012.tumblr.com/
*BLOGにて作家や展覧会の動向を随時更新します。

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「ホームアゲイン―Japanを体験した10人のアーティスト」
8月28日[火]-11月18日[日]

「MU[無]―ペドロ コスタ&ルイ シャフェス」
12月7日[金]-2013年3月10日[日]

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