5_デュート ハルドーノ 「ホームアゲイン」展作家解説[原美術館]

「ホームアゲイン―Japanを体験した10人のアーティスト」展出品作家メールインタビュー。2011年に滞在制作をしたインドネシア出身のデュート ハルドーノは、サウンドインスタレーションやパフォーマンス、ドローイング、コラージュなどを制作しています。予測不能な音のブレやズレが生じるカセットテープをはじめ、レコードや古い楽器などの素材を積極的に作品に取り入れています。聞き手: NPO法人アーツイニシアティヴ東京[AIT/エイト] *この文章は展示室にも掲示されております。


本展記者会見にて 撮影:木奥惠三

デュート ハルドーノ Duto Hardono インドネシア 1985年生
インドネシアのバンドゥン在住。バンドゥン工科大学美術・デザイン学科で学ぶ。ユーモアやウイットに富むサウンドインスタレーション、ドローイング、コラージュ等、多彩な作品を制作。実際に音を聴かせるもの、あるいは音をイメージさせるものの双方がある。東京滞在中(2011)は、東京に溢れる音や、話し声などを無作為に録音したサウンドインスタレーションや、滞在中に収集した物を貼り合わせたコラージュを制作。

問1あなたは東日本大震災直後に東京へ来たわけですが、それは制作に影響しましたか。あったとすればどのような?

何とも奇妙なのですが、いろいろな感情がごちゃ混ぜになりました。正確には、怖いというよりも少し混乱した状態でした。しかし、ワクワクする気持ちに変化はありませんでした。作品への影響はもちろんです。作品は全て東京という都市とそこでの経験に触発されています。それは遠くからのニュースやうわさを聞いている時のことだったり、自身で経験した時のことだったりします。作品であれパフォーマンスであれ、当時起こっていた状況に捧げられています。

問2:あなたはサウンドパフォーマンスもしますし、音声を取り入れた作品も作りますね。日本のテレビ番組の録音もしています。それは異なった文化的背景を何とかして理解するための方法なのでしょうか。それともジョン ケージのように、音をもうひとつの素材として用いているのでしょうか。それともその両方とかそれ以上?


デュート ハルドーノ 「人気批評家」 オープンリール、招き猫、美術雑誌
2011年 サイズ可変 撮影:木奥惠三

基本的に、というか通常、私は音を音それ自体として、考えとして、文章として、そのものに特徴のある素材として使っています。そしてそのことは鑑賞者にある種の美的経験をもたらします。私は抽象的な素材を具体的なものとともに見せたいのです。例えば、音作りや作曲の過程において、どこから音がやってきて、どのように披露されるのか、もしくはその過程で私がどのようにパフォーマンスする必要があるのかといったことを、制作物によって表れる背景として考えたいのです。

問3:原美術館で展示するために、色のついたポストカードを定期的に東京に送っていますが、その目的は何ですか。

このアイデアが生まれたのは、展覧会のテーマが「トラベル、モビリティ、ホーム」だったからです。私は郵便関係の素材を使おうと思っています。ポストカードを使い、ここから東京へ1ヶ月間(28日間)、日曜日と祝日を除いて毎日ポストカードを送ります。ポストカードにはそれぞれ色の変換表から一色ずつ印刷されています。28枚のポストカードがすべて無事に届けば、色の推移を全てスムーズに見ることができます。白から赤への変換を考えています。このプロジェクトを実現させるには、他人を必要とし、信頼する必要があります(例えば郵便局員や私自身など)。私は、失敗や運命、時間や空間、関係性、そして何よりも希望について語ろうとしています。例えばもしその過程でポストカードが無くなったとしたら、その失敗を新しい何かを創り出す隠された動機として解釈したい。「成功」には「失敗」が必要であると言えますし、その反対もまたしかり。結局、私は失敗を二つ犯しました。どうしたものか、2日間ポストカードの送付をうっかり忘れ、次の日にまとめて送ったのです。郵便局のスタンプでそれを確認することができますよ。

問4:異なる素材を特定の順序で、背後にある特定のアイデアに基づいてアレンジしていって、自分がミキサーや編集者のような仕事をしていると思えることはありませんか。あなたの作品にはある種コンセプチュアルな規律がありますが…いかがでしょう。

いろいろな要素を組み合わせて楽しんでいるだけだと思います。恐らく他の方法では上手くいかないかもしれません…良くわかりませんが、試してみてもいいですね。

Tumbler本展特設サイト http://homeagain2012.tumblr.com/
*BLOGにて作家や展覧会の動向を随時更新します。

————————————————————–
「ホームアゲイン―Japanを体験した10人のアーティスト」
8月28日[火]-11月18日[日]

「MU[無]―ペドロ コスタ&ルイ シャフェス」
12月7日[金]-2013年3月10日[日]

原美術館とハラ ミュージアム アークはTwitterで情報発信中。
http://twitter.com/haramuseum (@haramuseum)
http://twitter.com/HaraMuseumARC (@HaraMuseumARC)

原美術館とハラ ミュージアム アークは割引券一覧iPhoneアプリ「ミューぽん」に参加。
http://www.tokyoartbeat.com/apps/mupon

原美術館ウェブサイト
http://www.haramuseum.or.jp
http://mobile.haramuseum.or.jp

原美術館へのアクセス情報はこちら

Copyrighted Image