川辺ナホ「Flos Filicis:羊歯の花」@ WAITINGROOM

Fern and Carnation – Immigrés, donc travailleurs, 2026, lithograph on c-print, set of 9 (each 400 × 400 mm) ©︎Naho KAWABE, courtesy of the artist and WAITINGROOM

 

川辺ナホ「Flos Filicis:羊歯の花」
2026年4月4日(土)-5月3日(日・祝)
WAITINGROOM
https://waitingroom.jp/
開廊時間:12:00–19:00 (日曜は17:00まで)
休廊日:月、火、祝(ただし、5/3は開廊)
展覧会URL:https://waitingroom.jp/exhibitions/flos-filicis/

 

WAITINGROOMでは、綿密なリサーチと多様な素材の組み合わせで知られる川辺ナホの個展「Flos Filicis:羊歯の花」を開催している。

川辺ナホ(1976年福岡県生まれ)は、マテリアルの変換をテーマに、映像や写真、複数のオブジェを組み合わせたインスタレーション、ガラス板と炭の彫刻など、メディアを横断して作品を制作している。1999年に武蔵野美術大学映像学科を卒業後、2006年にハンブルク美術大学芸術学科ディプロマコースを修了した。現在はドイツと日本を拠点に活動している。近年の主な展覧会に、国際芸術祭「あいち2025」(愛知芸術文化センター)、「ルール炭田の日本人:越境者たち」(ケルン日本文化会館、ドイツ、2024)、「第21回 アーティスト・イン・レジデンスの成果展 都市の現象学―いったい何が私たちの未来をこれほど不確かで、魅力あるものにしているのか?」(福岡アジア美術館、2024)、個展「Black and Green」(TOM REICHSTEIN CONTEMPORARY、ハンブルク、ドイツ、2022)、川辺ナホ・宇多村英恵の二人展「STRATA 複数の地層」(WAITINGROOM、東京、2022)などがある。また、川辺は今年発表された第4回福岡アートアワードで優秀賞を受賞。福岡市美術館では受賞作品展(3月28日から6月21日まで)が開催されている。

 

Left: Japaner im Revier, 2024, digital c-print, set of 3 (each 420 × 297 mm) Right: Arabesque, 2020, charcoal, lacquer spray, glass, 413 × 313 mm ©︎Naho KAWABE, courtesy of the artist and WAITINGROOM

 

本展は、炭と電気資材を組み合わせた新作インスタレーション作品と2シリーズのフォトコラージュ作品を中心に、炭を用いた平面作品や複数のドローイング作品で構成される。展覧会タイトルの「羊歯」は、いわゆるシダ植物を指し、石炭紀に生きたシダの植物遺体は化石燃料となって、近代から発達し続ける巨大なインフラを動かすエネルギーとなっている。胞子生殖を行なう羊歯植物は花を咲かせることはなく、ゆえに「羊歯の花」というタイトルは本質的な逆説を孕む。羊歯植物が花を咲かせる可能性、すなわち化石燃料の終わりなき消費によって理想郷へと到達する(不)可能性について川辺は、「無限のエネルギーによる労働からの解放、技術進歩による幸福なユートピアの出現。そのような豊かさの約束は羊歯の花のようなものだったのではないか。」と語る。近代の進歩神話の起源となった羊歯植物と、現代のテクノロジー社会の基盤となった炭鉱産業が複雑に絡み合うその様相を、本展の新作インスタレーションは空間として浮かび上がらせる。

一方、新作のフォトコラージュは、炭鉱産業の移民労働者としてドイツに渡った日本人に関する2022年からのリサーチをもとに制作。石板印刷を用いて、羊歯植物と抵抗や労働運動のモチーフとされてきたカーネーションという2つの植物を象徴的に織り交ぜ、産業的な力学と労働者の生活を有機的につなぎ合わせる。また当時の雑誌や新聞、ところどころに紛れ込んだ現代のカラー写真とともに、1960年代頃の日本人労働者の生活を、物語性を帯びた架空の家族アルバムとして提示することで、炭鉱労働という大きな歴史の枠組みの中から個々の生の姿を掬い上げつつ、再びその枠組みへと織り戻そうと試みる。

 

関連イベント
オープニングレセプション
2026年4月4日(土)18:00–20:00(作家在廊)
会場:WAITINGROOM

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