没後40年 鴨居玲展 見えないものを描く @ 長崎県美術館

鴨居玲《私の村の酔っぱらい》1973年、ひろしま美術館蔵

 

没後40年 鴨居玲展 見えないものを描く
2025年11月22日(土)–2026年2月1日(日)
長崎県美術館
https://www.nagasaki-museum.jp/
開館時間:10:00–20:00(1/2、1/3は18:00まで)※最終入場は閉館の30分前まで
休館日:11/25、12/8、12/22、12/29-1/1、1/13、1/26
展覧会URL:https://www.nagasaki-museum.jp/archives/exhibition_post/21822

 

長崎県美術館では、現在の平戸市田平町に本籍を持ち、戦後の日本洋画壇で異色の存在感を放った長崎ゆかりの画家・鴨居玲の展覧会「没後40年 鴨居玲展 見えないものを描く」を開催する。本展では、初期から最晩年までの油彩画やデッサンに加え、小説家・陳舜臣の連載エッセイ『弥縫録 中国名言集』のために描かれた挿絵原画も特別出品される。

鴨居玲(1928-1985/石川県生まれ)は、抽象絵画が活発な時代にあえて具象画家であることを選択し、人間の内面を抉り出すような独自の世界観を構築した。卓越したデッサン力、そして光と影が織りなす画面構成によって描かれたシリーズは、「自画像」「酔っぱらい」「女性像」「教会」など多岐に渡る。金沢美術工芸専門学校(現・金沢美術工芸大学)で宮本三郎に学び、1959年から1966年にかけてパリ、南米、ローマなどを巡った。1968年に日動画廊(大阪)で初の個展を開催し、翌年に昭和会展優秀賞、安井賞を受賞。再び渡欧し、1971年にスペインにアトリエを構え、マドリード、バルデペーニャス、トレドなどで暮らした後、パリとニューヨークで個展を開催し、1977年の帰国後は神戸にアトリエを構えた。1984年に兵庫県文化賞を受賞。

 

鴨居玲《サイコロ》1969年頃 長崎県美術館蔵
鴨居玲《蛾》1969年 長崎県美術館蔵

 

第1章では、第12回安井賞を受賞した《静止した刻》を契機に40代で画壇に本格デビューし、《サイコロ》のように賭け事に興じる男たちの劇的な群像を繰り返し描くことで初期の到達点である群像表現に至った鴨居の軌跡を辿る。続く第2章では、「自画像の画家」と呼ばれる鴨居が初期から描き続けた自画像、とりわけ1969年の《蛾》以降に見られる目を塗りつぶし口をだらしなく開けた人物像や、死の影と自嘲めいた気配を帯びた最晩年の自画像に注目し、その内面と生へのまなざしの変化を浮かび上がらせる。第3章では、1971年にスペイン・バルデペーニャスに居を構えた鴨居が、貧しくも逞しく生きる村人たちをモチーフに制作した、人生の哀しみと刹那的な生の喜びが交錯する作品群により創作のピークに達し、鴨居芸術の頂点を築いた時期を紹介する。

 

鴨居玲《私の村の酔っぱらい(A)》1973年、笠間日動美術館蔵
鴨居玲《白い人》 1980年 ひろしま美術館蔵

 

第4章では、ヨーロッパから帰国後に神戸でアトリエを構え、苦悩の中で女性像というテーマに至り、神々しい気配を帯びた新たな表現を模索した晩年8年間の展開を辿る。第5章では、無宗教である自らへの問いからスペインやフランス滞在中に繰り返し描かれた「教会」シリーズに焦点をあて、敬虔な信者だった姉と対照的などこにもすがれない孤独がいかに表れているかを示す。第6章では、中国歴史小説で知られる陳舜臣の連載エッセイ『弥縫録 中国名言集』(『週刊読売』1978〜80年)のために鴨居が手がけたコミカルな挿絵に着目し、シリアスな作品とは異なるユーモアあふれる一面に光をあてる。

 

鴨居玲《教会》 1978年 石川県立美術館蔵
《『弥縫録 中国名言集』掣肘》 挿絵 1978-80年 個人蔵

 

関連イベント
学芸員によるギャラリートーク
2025年11月29日(土)、12月27日(土)、2026年1月24日(土)各日14:00–15:00
会場:長崎県美術館 企画展示室
定員:各回先着20名
参加費:無料(要本展観覧券)

ワークショップ「鴨居玲と出会う/油絵に触れる」
①2025年12月20日(土)10:00–15:00
②2025年12月21日(日)10:00–15:00
会場:長崎県美術館 アトリエ、企画展示室
講師:辻本健輝(画家・STUDIO HIZEN LLC 代表)
対象:中学生以上
定員:各回10名 ※応募者多数の場合は抽選
参加費:1,000円(大学生以上は要本展観覧券)
申込方法:フォームから(11/30締切)
※12/4までにメールで抽選結果を送付

レクチャー「鴨居玲の作品を語る」
2026年1月11日(日)14:00–15:00(開場13:30)
会場:長崎県美術館 ホール
講師:森園敦(長崎県美術館学芸員)
定員:先着80名

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