
触れる、手繰る手つき
2025年10月3日(金)-11月30日(日)
佐賀大学美術館 ギャラリー1、ギャラリー2、スタジオ
https://museum.saga-u.ac.jp/
開館時間:10:00–17:00(入館は16:30まで)
休館日:月(祝日の場合、翌日休館)
展覧会URL:https://museum.saga-u.ac.jp/exhibition/580
佐賀大学美術館では、「触れる」をテーマに、多様な表現者の手つきを辿る展覧会「触れる、手繰る手つき」を開催する。
現代社会において、人々は日々多様な情報に接している。インターネットやSNSの発達により、遠く離れた場所の出来事をリアルタイムで知ることが可能になった一方で、視聴覚情報が大きな割合を占め、身体を通じた一次情報としての経験は希薄になりつつある。確かなはずの感覚や経験に不確かさを覚え、他者との差異に不安を抱く状況も生まれている。
本展には、榎本浩子、木下由貴、ブブ・ド・ラ・マドレーヌ、メガーナ・ビシニア、三輪途道といった作家に加え、佐賀錦の普及や後進の育成に取り組む佐賀錦振興協議会も参加。素材や道具、歴史や記憶といった対象に触れる感覚から生まれる作品を紹介する。美術家や工芸家の営みは、鑑賞者に心を動かす原初的な体験をもたらす。また「触れる」ことは身体的な接触だけでなく、内面や記憶、文化や歴史といった形のないものに向き合う行為でもある。本展は、その多様な視点を通して「触れる」ことの意味を探り、感覚や創造力を通じて世界と関わる契機を提示する。



榎本浩子(1986年群馬県生まれ)は、日々の出来事を題材に、弱さや傷つきやすさとその修復をテーマに制作や活動を行なっている。 2011年に女子美術大学大学院美術研究科を修了した。主な展覧会に「庭の記憶/土地の修復」(Art & Garden ねこぜ、大分、2023)、「クリテリオム 99 榎本浩子」(水戸芸術館現代美術ギャラリー、2022)、「ここの庭」(ゆいぽーと、新潟、2022)がある。
木下由貴(1986年佐賀県生まれ)は、自然物を信仰の対象とする自然崇拝や神話への関心から各地を巡り、自身が持つ形のない信仰心や内在する原風景と結びつく光景を撮影している。人が潜在的に抱く目に見えない祈りや信仰のはじまりを捉える試みを続ける。主な展覧会に「林良二|木下由貴|二人展」(武雄市文化会館、佐賀、2024)、「Local Prospects 3 原初の感覚」(三菱地所アルティアム、福岡、2017)、「淵と瀬」(金子ビル、福岡、2017)、「内在の遠景」(福岡市内4会場、2014)など。
ブブ・ド・ラ・マドレーヌ(1961年大阪市生まれ)は、1992年にダム・タイプでの活動を開始。メンバーとしてパフォーマンス《S/N》(1994-1996年、15カ国20都市を巡回)に出演後、さまざまなメディアによる作品を発表。同時にHIV/エイズとともに生きる人々やセックスワーカー、女性、セクシュアルマイノリティなどの健康と人権に関する市民運動に携わる。また、クラブシーンでドラァグクイーンとしても活動している。主な展覧会に「花粉と種子」(オオタファインアーツ 7CHOME、東京、2024)、「コレクション2 身体———身体」(国立国際美術館、大阪、2024)、「人魚の領土―旗と内臓」(オオタファインアーツ、東京、2022)など。主な収蔵先に、国立国際美術館、東京都現代美術館などがある。



メーガナ・ビシニア(1978年インド生まれ)は、アニメーション、インスタレーション、パフォーマンス、儀式的な実践など、多様な表現を横断して活動している。風景や場所に結びついた「時間」や「記憶」のあり方を身体的に探り、個と集団、精神性と政治性の境界をゆるやかに溶かすような没入的体験を生み出してきた。現在はサンフランシスコのカリフォルニア芸術大学でアニメーションおよび大学院ファインアートの准教授を務めるほか、実験的アニメーションのサロン「Eyewash」の共同キュレーター、シエラ・フットヒルズに拠点を置くアーティスト・レジデンシー「Upstream」の設立者でもある。
三輪途道(1966年群馬県生まれ)は、写実彫刻を中心に制作を展開。仏像制作の技術を生かし、作家の日常を木彫で表現してきた。土着性を重んじ、自らの足元を掘り下げる姿勢を制作の核としている。50代前半で視力を失って以降は、手の感覚だけで作品を制作し、「ふれて鑑賞する」展覧会を各地で開催している。さらに、視覚障害者と芸術文化をつなぐことを目的に、2021年に「一般社団法人メノキ」を設立。本展には、株式会社ジンズと協働し、自身の作品「みんなとつながる上毛かるた」を用いた「ミルミルつながるプロジェクト」として参加する。主な展覧会に「はじまりの感覚」(アーツ前橋、群馬、2025)、「ヒューマンビーイング-藤野天光、北村西望から三輪途道のさわれる彫刻まで」(群馬県立館林美術館、2024)などがある。
佐賀錦振興協議会は、1993年に佐賀錦が佐賀県より「伝統的地場産品」の指定を受けたことで、さらなる普及や後進の育成を目的として設立された。現在、佐賀市歴史民俗館・旧福田家を拠点に初心者講習会を実施している。本展では、11月14日から16日に佐賀錦手織り体験を行なう。
関連イベント
『NAIZOU クッション』にみんなで触る人魚集会
2025年10月4日(土)13:00–14:30
会場:佐賀大学美術館
講師:ブブ・ド・ラ・マドレーヌ、チーム NAIZOU
参加:無料(事前申込制、小学生以下は保護者同伴)
予約方法:電話(0952-28-8333)
佐賀錦手織り体験
2025年11月14日(金)-11月16日(日)10:00–16:00(最終日は15:00まで)
会場:佐賀大学美術館「SUAM PLUS」 1 階
講師:佐賀錦振興協議会
参加:無料(申込不要、小学生以下は保護者同伴)
ことばで触れる、かたちの世界 -手で鑑賞するワークショップ-
2025年11月22日(土)13:00–14:30
会場:佐賀大学美術館「SUAM PLUS」 1 階
講師:<ミルミルつながるプロジェクト/メノキ×JINS>
三輪途道、福西敏宏(一般社団法人メノキ 副代表理事)、秋本真由美(株式会社 ジンズ 地域共生事業部)
対象:高校生以上(見える人・見えにくい人・見えない人、誰でも参加可能)
参加:無料(事前申込制、定員20名)
予約方法:電話(0952-28-8333)
担当学芸員による展覧会解説
2025年11月16日(日)13:00–14:00
参加:無料(申込不要)