ベトナム、記憶の風景 @ 福岡アジア美術館

 

ベトナム、記憶の風景
2025年9月13日(土)–11月9日(日)
福岡アジア美術館 企画ギャラリー
https://faam.city.fukuoka.lg.jp/
観覧時間:9:30–18:00(金、土は20:00まで)入室は閉室30分前まで
休館日:水
展覧会URL:https://faam.city.fukuoka.lg.jp/exhibition/23524/

 

福岡アジア美術館では、ベトナムが大国アメリカを退け、既存の世界の在り方を大きく変えた歴史の転換点として知られるベトナム戦争(別名:抗米救国抗戦/第二次インドシナ戦争)終結50周年を記念し、欧米列強による植民地支配と独立への闘い、難民の発生やグローバル化など、近代以降の世界の課題を絶えず経験してきた1930年代から現在までのベトナム激動の100年の歴史を美術作品とともにたどる展覧会「ベトナム、記憶の風景」を開催している。

日本国内過去最大規模のベトナム近現代美術の展覧会となる本展は、時系列でまとめた4つの章とグエン・ファン・チャン絵画保存修復プロジェクトの構成で、ディン・Q・レの《南シナ海ピシュクン》(2009)、ファム・ミン・チーの《人民に永遠の春をもう一度》(1975)など、同館所蔵作品を中心に110点のベトナム近現代美術作品を紹介する。祖国の理想の風景を描きだした優美な絵画から革命を鼓舞する力強いポスター、家族の記憶から歴史を語りなおす現代美術など、ベトナムのアーティストが祖国や自身と向き合いながら生みだした多様な表現を通して、これまで可視化されることのなかった近現代のベトナムを巡る「記憶の風景(メモリースケープ)」が鮮烈に浮かび上がらせる。

「第1章 理想―描かれた祖国のイメージ」では、優れた色彩感覚により「緑色の巨匠」と呼ばれた画家ルオン・スアン・ニーをはじめ、フランス植民地下で近代美術草創期を担ったベトナム人美術家たちが、新たな時代にふさわしい祖国の理想の風景を模索した作品を紹介する。続く「第2章 熱気―駆け巡る戦場のリアル」では、人々の団結や戦意を鼓舞するポスターや、戦場の様子を克明に記録した写真など、ベトナム戦争を巡る熱気を表した作品を紹介する。

戦争終結後を扱う「第3章 発展と郷愁―変わりゆく故郷のすがた」では、グエン・クアン・フイの《無表情な顔》(1997)など、統一国家として新たな国づくりのため都市開発や工業発展が進み、急激に変わりゆく社会のなかで、ベトナムの風景を見つめた作品を紹介。「第4章 追憶―歴史を携えて生きること」では、タオ・グエン・ファンら戦争を直接経験していない若い世代の美術家たちが、戦争の傷跡やトラウマを抱えながらも生きる家族や個人の物語から歴史を語りなおす現代美術を紹介する。そして、特設コーナーでは、ベトナム近代美術における絹絵の巨匠グエン・ファン・チャンの貴重な美術作品を未来に繋げ、日越の架け橋となる、三谷文化芸術保護情報発信事業財団による「グエン・ファン・チャン絵画保存修復プロジェクト」を紹介する。

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