つくるよろこび 生きるためのDIY @ 東京都美術館

 

つくるよろこび 生きるためのDIY
2025年7月24日(木)-10月8日(水)
東京都美術館 ギャラリーA・B・C
https://www.tobikan.jp/
開室時間:9:30–17:30(金曜は20:00まで)入室は閉室30分前まで
休館日:月(ただし8/11、9/15、9/22は開室)、9/16
展覧会URL:https://www.tobikan.jp/diy/

 

東京都美術館では、アーティスト、建築家、路上生活者、災禍を経験した人々など、それぞれのDIYの実践を通じて、誰もが持つ創造性と生きることのつながりを探る「つくるよろこび 生きるためのDIY」を開催する。

DIY(Do It Yourself/自分でやってみる)とは、目の前の問題を自分自身の工夫で解決していくアプローチのこと。日曜大工や住民主体のまちづくりなど、身近な場面で実践されており、DIYはより良く生きるための方法であると同時に、不便や困難を乗り越えるための手段でもある。その過程では、自ら手を動かすことで得られる気づきや達成感といった「つくるよろこび」も味わうことができる。本展では、DIYの手法や考え方に関心を寄せる、若木くるみ、瀬尾夏美、野口健吾、ダンヒル&オブライエン、久村卓の5組の現代作家と、伊藤聡宏設計考作所、スタジオメガネ建築設計事務所の2組の建築家を紹介。身の回りのものでつくる作品や、多様な人が関わる場のデザインに加え、震災や経済的な事情により多くのものを失った人々の切実な営みにも焦点を当てる。

 

若木くるみ《CANベルスープ》2024年 空き缶を用いた版画 作家蔵
瀬尾夏美《地底に咲く》2015年 ドローイング 作家蔵
野口健吾《庵の人々 神奈川県横浜市港北区》2012年 写真 作家蔵

 

若木くるみ(1985年北海道生まれ)は、版画という技法を拡張し、自らの身体を版として用いるインスタレーションやパフォーマンス作品など、多様な表現を展開する。2009年には岡本太郎現代芸術賞を史上最年少で受賞。近年は、版画ならではの「摺る」という行為に立ち返り、空き缶や歯磨き粉のチューブなど、日用品を版として再利用する作品を手がけている。本展では、主に自身の自宅にある物を使い、身近な素材から新しいイメージを生み出す実験的な版画作品を発表する。

瀬尾夏美(1988年東京都生まれ)は、土地の人びとの言葉と風景の記録を考えながら、絵や文章をつくっている。2012年から3年間、岩手県陸前高田市で暮らし対話の場づくりや制作を行なう。2015年に宮城県仙台市で土地との協働を通した記録活動をするコレクティブ「NOOK(のおく)」を立ちあげ、現在は江東区で「studio04」を運営しながら、 過去の災禍の記録をリサーチし、それらを活用した表現を模索する協働プロジェクト「カロクリサイクル」も手がける。本展では、災禍の記憶を胸に生きる人々の営みを捉えたドローイング、絵画、文章などを展示する。

野口健吾(1984年神奈川県生まれ)は、路上生活者、バックパッカー、巡礼者、インドのチベット難民、ネパール地震に直面した辺境の村の家族など、多様な人々を撮影しながら、写真・映像作品を制作している。本展では、日本の都市の片隅で生きる人々の姿を捉えた「庵の人々」シリーズを展示。創意工夫により生活を築く庵主たちの人間模様とともに、ブルーシートや廃材など身近な素材を組み合わせてDIY的につくられた庵の様相に焦点を当てる。

 

ダンヒル&オブライエン《装置: ムーアの木槌 V1》2024年 作家蔵
久村卓《刺繍BAR / 織物BAR at 藝大部屋》2024年 インスタレーション 作家蔵

 

ロンドンを拠点とするマーク・ダンヒルタミコ・オブライエンは、1998年からアーティスト・デュオとして共同制作を行ない、個々の好みや従来の彫刻制作に伴う複雑な工程にとらわれることなく、協働の難しさと可能性を創造の糧としながら表現活動を展開。独自の装置を作ったり、パフォーマンスや他者との共同作業を取り入れたりしながら作品を生み出している。本展では、彫刻とDIYの垣根を超え、複数のセクションで構成されるインスタレーションを制作する。

久村卓(1977年東京都生まれ)は、ヘルニア発症がきっかけとなり、心身ともに軽さを重視した制作を模索する中で、ハンドメイドからDIYクラフトまで、美術の周縁に位置する技法や素材を積極的に採用するようになる。控え目な手つきで変化を生み出しながら、従来の美術制度の枠組みを問いかけるような作品を制作している。本展では、手芸による「着られる彫刻」や、既製品を装飾として取り込んだレディメイドの手法で制作されたベンチなどを展示する。

伊藤聡宏設計考作所は、長野県を拠点とし、空き家の調査・利活用、地場の職人技術(漆芸・木工など)の紹介、手工芸品の製作、農作物や消費材の自給生産など、建築を軸に地域の環境風土や暮らしに新たな関係性をつくる幅広い活動を行なっている。主な活動に「誰でもできる建築教室」、「麻太の家」、「奈良井とおいち」など。本展では、スタジオメガネ建築設計事務所と協働し、来場者がそれぞれに本展のテーマについて考えるためのプラットフォームを構想する。

スタジオメガネ建築設計事務所は、多摩ニュータウンの商店街に事務所を構え、地域に開き、アートやデザインに従事する人々並びに地域住民と共に、多様な人が関われるオルタナティブ空間「STOA」を自主運営している。地域に開かれた文化の発信拠点を目指すSTOAは、未完成のままに地域と反応しながら変化することを大切にしている。また、消費を⽬的とせず、訪れる⼈が思想に耽ることができる場を⽬指している。本展では、伊藤聡宏設計考作所と協働しプラットフォームを構想する。

 

伊藤聡宏設計考作所 誰でもできる建築教室の様子
スタジオメガネ建築設計事務所 STOAの活動風景(多摩市)

 

関連イベント
アーティスト・トーク(ダンヒル&オブライエン)
2025年7月27日(日)14:00–16:00
登壇:マーク・ダンヒル、タミコ・オブライエン
会場:東京都美術館 講堂
定員:225名
参加費無料、事前申込制(先着順で定員に達し次第申込締切)
※日英逐次通訳、手話通訳つき
https://www.tobikan.jp/diy/event01.html

DIYライブ by 伊藤聡宏設計考作所 + スタジオメガネ建築設計事務所
①7月26日(土)14:00–15:30 伊藤聡宏、宮澤祐子・横溝惇(スタジオメガネ建築設計事務所)
②8月16日(土)14:00–15:30 青木彬(インディペンデント・キュレーター)
③8月22日(金)14:00–15:30 若木くるみ
④9月14日(日)10:30–12:00 瀬尾夏美、野口健吾 聞き手:永井玲衣(作家)
⑤9月26日(金)18:00–19:30 伊藤喜彦(東京都立大学 准教授)
⑥10月5日(日)14:00–16:00 久村卓、ダンヒル&オブライエン
会場:東京都美術館 ギャラリーB(企画棟 地下3階)
定員:各回25名
参加費無料(要当日有効の展覧会チケット)
※日英逐次通訳(⑥のみ)、手話通訳つき
※定員になり次第受付を終了
https://www.tobikan.jp/diy/event02.html

ワークショップ
①8月22日(金)10:00–12:00 若木くるみ|版画ワークショップ
②9月21日(日)13:00–15:00 瀬尾夏美|聞き書きワークショップ
③9月27日(土)14:00–16:00 ダンヒル&オブライン|彫刻ワークショップ
会場:東京都美術館 スタジオ(交流棟2階)
参加費無料
※日英逐次通訳(③のみ)、手話通訳を希望の場合は申込時に申請
※定員になり次第受付を終了
https://www.tobikan.jp/diy/event03.html

キッズ+U18デー
2025年8月25日(月)10:00–15:00(入室は14:30まで)
会場:東京都美術館 ギャラリーA・B・C
対象:18歳以下の方とその保護者(小学校3年生以下は保護者同伴、大人(大学生以上)のみでの入室は不可)
参加費無料
https://www.tobikan.jp/diy/event04.html

織物BAR
7月25日(金)、8月1日(金)、8月8日(金)、10月3日(金)各日13:30–17:30
8月22日(金)、8月29日(金)、9月5日(金)、9月12日(金)、9月19日(金)、9月26日(金)各日16:00–20:00
講師:久村卓
協力:ディー・エム・シー株式会社、古着屋SAJI
会場:東京都美術館 ギャラリーA
参加費無料(要当日有効の展覧会チケット)
https://www.tobikan.jp/diy/event05.html

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