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エルヴィン・ヴルム 人のかたち
2025年4月12日(土)-11月16日(日)
十和田市現代美術館
https://towadaartcenter.com/
開館時間:9:00–17:00 入場は閉館30分前まで
休館日:月(祝日の場合はその翌日。ただし4/28、5/6、8/4、8/12は開館)
企画担当:中川千恵子(十和田市現代美術館キュレーター)
展覧会URL:https://towadaartcenter.com/exhibitions/erwin_wurm/
十和田市現代美術館では、オーストリアの重要な作家のひとりであり、石膏や金属といった伝統的な彫刻の素材だけでなく、写真や衣服、絵画といった多様なメディウムを用いて、彫刻表現の特性を探究し、その固定化された概念を拡張してきたエルヴィン・ヴルムの日本の美術館での初個展「エルヴィン・ヴルム 人のかたち」を開催する。
エルヴィン・ヴルム(1954年オーストリア、ブルック・アン・デア・ムーア生まれ)は、彫刻の概念を徹底的に拡張し、時間、量塊と表面、また具象と抽象の関係について問いかける作品を制作してきた。ウィーン応用美術大学とウィーン美術アカデミーで学び、現在はウィーンとリンベルクを拠点に活動。主な個展に、「Deep」(国立マルチャーナ図書館・コッレール博物館、イタリア、2024)、「Trap of the Truth」(ヨークシャー彫刻公園、イギリス、2023-2024)、「Erwin Wurm Photographs」(ヨーロッパ写真美術館、フランス、2020)、「Erwin Wurm」(カンティーニ美術館、マルセイユ、フランス、2019)、「Erwin Wurm」(ローマ現代美術館、イタリア、2005)、「Fat Car andJakob-Jakob Fat」(パレ・ド・トーキョー、パリ、2002)など。第57回ヴェネツィア・ビエンナーレ(2017)では、オーストリア館にてブリギッテ・コヴァンツとの二人展を開催。十和田市現代美術館では、ヴルムによる庭つきの赤い屋根の家《ファット・ハウス》と赤い車《ファット・カー》を、2010年から屋外に常設展示している。
エルヴィン・ヴルム《ファット・ハウス》2010年 撮影:小山田邦哉
エルヴィン・ヴルム《ファット・カー》2010年 撮影:小山田邦哉
本展では、彫刻の最も原初的なモチーフである人の身体を起点に作品を紹介し、身体、フォルム、空間の狭間で絶えず変容する境界を探求。彫刻、写真、絵画、テキスタイルといったさまざまなメディウムを通して、量塊と表面、物質的なものと不条理なものの関係性を考察する。出品作として、オーストリアで2024年に公開された最新作の大型インスタレーション《学校》を、本展のために制作・展示。細長く歪められた形の学校の教室の内部に、明治維新以降に学校で使用されていた教材や、子どもたちが目にしていたと考えられる印刷物を掲示し、学校という制度やそれを含む社会自体が圧力を持っていること、「正しさ」や社会の規範が時代の変化によって移ろいゆく曖昧なものであることを示唆する。さらに、奇妙なポーズの滑稽な聖職者を被写体にした「司祭と修道女」の写真シリーズや、人間の第二の皮膚として衣服を応用した《吊されたセーター》、彫刻の表面と量塊の関係を表した「皮膚」シリーズの《立っている花 2》、平面性をラディカルに追求した絵画の「平らな彫刻」シリーズなど、多様なメディウムによる作品を展示する。十和田のまちなかの施設や店舗では、作品の指示に従って観賞者が1分間だけ静止したポーズを取り、個人的なものであるはずの「からだ」が自分の意思を離れ、彫刻化される「1分間の彫刻」シリーズを展開する。
ヴルムは本展のステートメントで、「私の制作活動の中核にあるのは、矛盾です。スケールや歪み、身近なオブジェクトを実験的に扱うことによって、鑑賞者に身体性とアイデンティティの限界を見直すよう誘います。「人のかたち」展において、身体は、単なる表現の対象を超えて──圧縮し、拡張し、再定義され──変容の場となるのです」と寄せている。
参考図版 エルヴィン・ヴルム《学校》2024年 撮影:Rainer Iglar / Salzburg – Vienna Courtesy: Albertina Modern, Vienna
参考図版 作家スタジオでの「皮膚」シリーズと「平らな彫刻」シリーズ Erwin Wurm, Bildrecht Wien, 2025 撮影:Ulrich Ghezzi
関連イベント
エルヴィン・ヴルムによるギャラリートーク(2025年4月12日)
2025年4月12日(土)14:00–14:40
会場:十和田市現代美術館企画展示室
無料 ※要企画展チケット
英語から日本語への逐次通訳付き
https://towadaartcenter.com/events/erwin_talk_20250412/
参考図版 エルヴィン・ヴルム「平らな彫刻」シリーズより《Masse(塊)》2021年 撮影:Markus Gradwohl
参考図版 エルヴィン・ヴルム「平らな彫刻」シリーズより《Hour(時間)》2021年 撮影:Markus Gradwohl