
2024年11月7日から10日の4日間にわたり、東京における現代美術の創造性と多様性を国内外に発信するアートイベント「アートウィーク東京」が開催される。監修に森美術館館長の⽚岡真実を迎えたAWT独自の展覧会プログラム「AWT FOCUS」や、都内の50以上の美術館やギャラリーをつなぐ恒例の無料のシャトルバス「AWT BUS」など、多彩なプログラムを通じて東京のアートのエコシステムの活性化を目指す。
昨年に引き続き大倉集古館を展示会場とする「AWT FOCUS」は、美術館での作品鑑賞とギャラリーでの作品購入を兼ね備えたAWTの独自プログラム。今年の監修を務める片岡真実が掲げる「⼤地と⾵と⽕と:アジアから想像する未来」 のテーマの下、日本だけでなく、韓国、台湾、香港、インドネシア、フィリピン、メキシコ、ブラジルといった各地から57組のアーティストの作品を通じて、政治や経済など人為的な分類や力による統治ではなく、自然の摂理や不可視のエネルギーといった観点から世界を見つめるアジア的世界観を起点に、多様性が共存する未来を想像していく。展示作品は、日本の26のギャラリーに加え、海外に拠点を置くKukje Gallery(ソウル)、TKG+(台北)、Silverlens(マニラ、ニューヨーク)からも出展される(東京税関から保税展示場の許可を取得したことにより、海外からの出展者が美術品の関税等を留保した形で展示可能に)。観覧チケットはPeatixでの扱いのみ。


過去最多となる53の美術館やギャラリーが参加する本年度は、美術館による現代美術に焦点を合わせた企画が出揃った。森美術館では、20世紀を代表するアーティストのひとりとして知られるルイーズ・ブルジョワの「ルイーズ・ブルジョワ展:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ」、東京オペラシティアートギャラリーでは、具体美術協会の第二世代の作家として頭角を現し、87歳になる現在もパリを拠点に旺盛な制作を続ける松谷武判の「松谷武判 Takesada Matsutani」、国立新美術館では、ジャンルを横断しながら幅広い表現を展開してきた田名網敬一の「田名網敬一 記憶の冒険」など、長きにわたる活動の変遷と展開を概観できる回顧展が並ぶ。また、国立新美術館初のパフォーマンス・アーティストの個展となる「荒川ナッシュ医 ペインティングス・アー・ポップスターズ」や、定番の「ジャム・セッション」に第60回ヴェネツィア・ビエンナーレ日本館代表作家の毛利悠子を迎えたアーティゾン美術館の「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×毛利悠子 ―ピュシスについて」といった国際的な活躍を重ねる注目の中堅アーティストによる実験的な試み、質・量ともに日本の現代美術の最も重要な蓄積として知られる巨大なコレクションを通じて現代日本の姿を辿る東京都現代美術館の「日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション」などもAWT期間に開催されている注目のプログラム。
美術館をはじめ都内に広がるアートスペースをつなぐ無料のシャトルバス「AWT BUS」では、東京都とベルリン市の友好都市提携30周年を祝して、「Berlin–Tokyo Express」と題した同市とのコラボレーションを実施する。A〜Fの6つのルートで巡回するAWT BUS内に、両都市を拠点とするマルテ・バーチュ(Aルート)、サンティアゴ・シエラ(Bルート)、ルチア・ケンプケス(Cルート)、アユミ・パウル(Dルート)、ヤン・ヴォー(Eルート)、アンドレアス・ミューエ(Fルート)の各アーティストの作品がそれぞれ展示される。
同じく新たな試みとなるのが「TOKYO HOUSE TOUR」と題した都内の名建築を巡る建築ツアー。コースの監修を国内外で数々の受賞歴を誇る建築 ユニット「SANAA」の共同設立者であり、2022年からは東京都庭園美術館館長を務める建築家の妹島和世が務め、東孝光が1966年に設計した「塔の家」と伊東豊雄が1983年に設計した「花小金井の家」という、個人事業として設計を営む建築家の設計によって建てられた庶⺠の家に着目し、建築とその保存継承、そして東京の暮らし全般に関心のある人を対象にしたツアーを開催する。


AWTの独自の上映プログラム「AWT VIDEO」は、三井住友銀行東館に設けられた出入り自由の特設会場にて、AWT参加ギャラリー所属作家の映像作品を中心に厳選したプログラムを無料で上映。今年は、ニューヨークのスカルプチャーセンターのディレクターを務めるソフラブ・モヘビがプログラムの監修を務め、13名のアーティストによる14作品を「飛行機雲か山脈か」と題したプログラムで紹介する。
また、「AWT TALKS」の一環として、聴講無料のシンポジウム「想像する他者・他者を想像する:現代アートが描く国境を超えた未来」を慶應義塾⼤学三⽥キャンパスで開催。ドイツ有数の美術機関の館長や芸術監督を歴任してきたフランクフルト近代美術館館長のスザンヌ・プフェファーの基調講演を皮切りに、上述した両プログラムをそれぞれ監修する片岡真実とソフラブ・モヘビが、最近のキュレーション・プロジェクトを振り返りながら、現代社会におけるアートの位置づけや批評的アプローチについて議論する。(※基調講演は、当初予定していたアドリアーノ・ペドロサからスザンヌ・プフェファーに変更。)
また、こちらも恒例となったAWT開催期間に南青山に開設される交流の場「AWT BAR」では、ランドスケープアーキテクトの戸村英子が設計を手がける空間で、フランス発祥の老舗レストランガイドが主催する「Gault & Millau 2023」の日本版でベストパティシエ賞を受賞した「EMMÉ」(東京・⻘⼭)のパティシエ、延命寺美也が創作したスペシャルメニューを提供。さらに、アーティストとのコラボレーションによるオリジナルカクテル(参加アーティスト:荒川ナッシュ医、小泉明郎、束芋)を味わうことができる。また、「AWT BAR」でも新たな試みとして、ファッションブランド「TOMO KOIZUMI」と、コンテンポラリーダンサーで振付家の⽔村⾥奈のコラボレーションによるパフォーマンスや、⽇野浩志郎 (goat / YPY) が戸村の設計に応答したサウンドインスタレーション、また、日野の楽曲を⾓銅真実とジュリア・ショートリードがコラボレーションしたライブパフォーマンスを展開。さらに、前述した「Berlin–Tokyo Express」の一環で、アーティストの上田舞による茶会パフォーマンス《TO SEE THE WIND》も開催する。


アートウィーク東京
2023年11月7日(木)-11月10日(日)10:00–18:00
https://www.artweektokyo.com/
会場:都内53の美術館、インスティテューション、ギャラリー、大倉集古館(AWT FOCUS)、AWT BARほか、各プログラム会場
主催:一般社団法人コンテンポラリーアートプラットフォーム
提携:アートバーゼル
特別協力:文化庁
※会場やプログラムにより時間が異なる場合あり
アートウィーク東京モビールプロジェクト
2023年11月7日(木)-11月10日(日)10:00–18:00
主催:東京都、アートウィーク東京モビールプロジェクト実行委員会

AWT FOCUS「大地と風と火と:アジアから想像する未来」
2023年11月7日(木)-11月10日(日)
大倉集古館(東京都港区虎ノ門2-10-3)
開場時間:10:00–18:00(入場は閉場30分前まで)
チケット購入等、詳細は下記URLを参照。
https://www.artweektokyo.com/focus/
AWT TALKS シンポジウム「想像する他者・他者を想像する:現代アートが描く国境を超えた未来」
2023年11月7日(木)10:00-12:30(9:30開場)
登壇者:スザンヌ・プフェファー(フランクフルト近代美術館館長)
片岡真実(森美術館館長/国立アートリサーチセンター長/「AWT FOCUS」監修)
ソフラブ・モヘビ(スカルプチャーセンター ディレクター/「AWT VIDEO」監修)
アンドリュー・マークル(AWTエディトリアルディレクター)
会場:慶應義塾大学 三田キャンパス ⻄校舎ホール
定員:800名(事前申込制・先着順・参加無料)
言語:英日同時通訳
申込方法:Peatixにて事前申込制。当日受付可。詳細は下記URLを参照。
https://www.artweektokyo.com/awt-talks/symposium