返還映画コレクション(1)――第一次・劇映画篇 @ 国立映画アーカイブ 長瀬記念ホールOZU


マキノ正博『鴛鴦歌合戰』1939年

 

返還映画コレクション(1)――第一次・劇映画篇
2023年11月28日(火)-12月24日(日)
国立映画アーカイブ 長瀬記念ホールOZU(2階)
https://www.nfaj.go.jp/
休館日:月
定員:310名(各回入替制・全席指定制)
https://www.nfaj.go.jp/exhibition/repatriated_film202310/

 

国立映画アーカイブでは、第二次世界大戦後にアメリカ合衆国によって接収されたものの1967年より返還が実現した「返還映画」による特集上映「返還映画コレクション(1)――第一次・劇映画篇」を開催する。「返還映画」を冠した特集上映は返還翌年の1968年以来55年ぶり。

1964年に戦後接収された日本映画約1,400本がアメリカ議会図書館に残存している事実が判明すると、日米双方による事前調査と折衝を経て、1967年11月8日に東京国立近代美術館とアメリカ議会図書館が交換協定文書に調印し、日本側が希望したフィルムの返還が実現することとなった。「返還映画」の中には、戦前・戦中期に心理・情報戦の資料として、アメリカ内外の各地で収集されてきたものや、戦後に民間情報教育局(CIE)の覚書「非民主的映画の排除」によって上映を禁止された劇映画の一部等が含まれる。第一次返還時点の内訳は、劇映画59本、文化・記録映画52本、ニュース映画372本、計483本。一部欠落のある作品や、劣化や損傷の見られる可燃性フィルムも多く、その後の整理・不燃化作業は困難を極めた。現在、国立映画アーカイブでは、1967年の第一次から1990年代の第四次にかけて返還された可燃性フィルムの収蔵時の経緯等について再調査を実施し、収蔵時期の明確になったコレクションから順次(再)公開する方針を固めている。

 


牛原虚彦『進軍』1930年


佐々木康『乙女のゐる基地』1945年

 

本企画では、第一次返還映画のうち『進軍』(1930)から『乙女のゐる基地』(1945)までの劇映画31本に、当初から返還を希望したにもかかわらず、唯一後送された劇映画『鴛鴦歌合戰』(1939)を加えた計32本を、27プログラムで上映。本企画の上映作品には、1930年から1944年にかけて『キネマ旬報』または日本映画雑誌協会によるベスト・テンの入選作品5本や、溝口健二、内田吐夢、島津保次郎、小津安二郎、清水宏などの作品も含まれる。なお、無声映画の上映に際しては伴奏付きの上映回を、また近年、映画史的に再評価の進んだ『月夜鴉』(1939)と『かくて神風は吹く』(1944)に関しては研究者による講演付きの上映回を設けている。

一部作品の概要は以下の通り。日露戦争終結25周年を機に起こった戦争映画ブームのなかで公開された『進軍』(1930)は、牛原虚彦が監督を務め、鈴木傳明と田中絹代が出演する「黄金トリオ」による蒲田撮影所創設10周年記念映画。青年の愛とヒロイズムが、日本映画として初めて空中撮影を伴い演出されたスペクタクルな戦闘シーンを交えて綴られる(※12月16日は神﨑えりの伴奏付上映)。『乙女のゐる基地』(1945)は、兵士とともに軍属の形で働く少女が、激戦下における女性のあるべき姿について悩み、女性の「美徳」を失わず未来へ進む姿を描いている。本作は一部欠落があるため52分の不完全な形での上映となる。『鴛鴦歌合戰』(1939)は、長屋暮らしの浪人を慕う町娘たちの恋の駆け引きと骨董品をめぐる騒動を描いた時代劇ミュージカル。1967年の返還希望リストに挙げられていたが、第一次返還時に未着となった唯一の劇映画で、第二次で改めて送付を依頼した作品。

『月夜鴉』(1939)は、三味線の女師匠が弟子を育てる芸道物として、勝気な年上女性と小心な年下男性の恋愛をスクリューボール・コメディタッチで描いた傑作。井上金太郎は無声映画期に監督昇進後、阪東妻三郎や月形龍之介らと組んで活躍した名匠で、筆名・秋篠珊次郎により脚本も手がけた。11月30日は上映後に映画研究者の木下千花(京都大学大学院人間・環境学研究科教授)が講演。『かくて神風は吹く』(1944)は、敗戦色が濃くなった太平洋戦争末期に情報局の企画、陸海軍の後援により製作された国策映画で、時代劇の看板スターが競演した大作。元寇の海戦を映像化するにあたり、円谷英二率いる東宝特殊技術部を招聘し、終盤の暴風雨シーンなど迫力ある画面を作り上げた。12月2日は上映後に映画研究者の加藤厚子(茅ヶ崎ゆかりの人物館運営アドバイザー)が講演。

 


井上金太郎『月夜鴉』1939年


丸根賛太郎『かくて神風は吹く』1944年

 


同時開催
和田誠 映画の仕事
2023年12月12日(火)-2024年3月24日(日)
国立映画アーカイブ 展示室(7階)
開室時間:11:00-18:30(1/26、2/23は11:00-20:00)入室は閉室30分前まで
休室日:月、年末年始(12/26-1/4)
https://www.nfaj.go.jp/exhibition/makotowada2023/

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