Women’s Lives 女たちは生きている―病い、老い、死、そして再生 @ さいたま市プラザノース ノースギャラリー


 

さいたま国際芸術祭2023 市民プロジェクト「創発inさいたま」
Women’s Lives 女たちは生きている―病い、老い、死、そして再生
2023年10月9日(月)-10月22日(日)
さいたま市プラザノース ノースギャラリー
https://www.plazanorth.jp/
開場時間:11:00–18:00
会期中無休
キュレーター:小勝禮子
出品作家:一条美由紀、菅実花、岸かおる、地主麻衣子、須惠朋子、本間メイ、松下誠子、山岡さ希子
展覧会URL:https://womenslives.mystrikingly.com/?fbclid=IwAR27Gbb0FBCy-fVfXqdv70dcvYjehvAmTgH1XtQLtM_t7UIVFX70uNvafoI

 

さいたま国際芸術祭2023の市民プロジェクト「創発 in さいたま」の企画として、女性の生活・人生をテーマに制作するアーティスト8人の表現を通じてライフコースを再考する展覧会「Women’s Lives 女たちは生きている―病い、老い、死、そして再生」が、さいたま市プラザノース ノースギャラリーで開催される。

本展は、30代から60代以上まで幅広い世代のアーティストによる生命と死をめぐる多様な表現を紹介。特に妊娠や出産、育児の経験がキャリアの中断に繋がりやすい女性の人生を、当事者でもある女性のアーティストによる表現によって前向きにとらえ直し、ジェンダーの視点から社会意識を変革することを目指す。また、ふだん意識の隅に追いやられがちな病気や死というネガティブな体験にもアートを通して向き合い、そうした経験が誰にでも降りかかりうることを意識し、魂を慰め身体をケアする、生命の再生への希望を共有し、人々がそれぞれマイノリティの視点から人生に向き合うきっかけを提示する。

本展キュレーターは、2000年代初頭より近現代のアジア圏における美術をジェンダーの視点から見つめ直す展覧会を手がけてきた小勝禮子。栃木県立美術館在籍時には「奔る女たち-女性画家の戦前・戦後1930-1950年代」(2001)「前衛の女性1950-1975」(2005)「イノセンス-いのちに向き合うアート」(2010)「アジアをつなぐ-境界を生きる女たち1984-2012」(福岡アジア美術館、沖縄県立博物館・美術館、三重県立美術館にも巡回、2012-2013)、「戦後70年:もうひとつの1940年代美術」(2015)などを企画。同館退職後も東京都美術館の都美セレクショングループ展2019「彼女たちは叫ぶ、ささやく―ヴァルネラブルな集合体が世界を変える」を企画、美術をこれまでの伝統的な男性中心の記述から解放し、女性を含めた芸術史を記述し直すことを目指すウェブサイト「アジアの女性アーティスト:ジェンダー、歴史、境界」を管理・運営するなど、一貫した活動を続けている。現在は、京都芸術大学、実践女子大学、学習院女子大学でも教鞭を執る。

 


一条美由紀《カピバラは占い師に向いている》2023年


菅実花《Pre-alive Photography 13》2019年


岸かおる《spare-part》2013-23年 撮影©️田村政実

 

出品作家は、一条美由紀、菅実花、岸かおる、地主麻衣子、須惠朋子、本間メイ、松下誠子、山岡さ希子の8名。一条美由紀(1960年福島県生まれ)は、紙や薄く透ける布、アクリルなどを支持体に、理性と本能に引き裂かれつつ不安と恐れに苛まれる現代の人間の姿を木炭や油彩で描く。30代半ばで渡独し、デュッセルドルフ・クンストアカデミーのローズマリー・トロッケルのクラスで学んだ一条は、結婚後の不妊治療などにより17年間制作を中断したのち、50代で制作活動を再開し精力的に作品を発表している。近年の主な展覧会に個展「Yesの意味は無限にありどれを選んでも正解である。」(ATELIER・K、神奈川、2023)、個展「Personal Structural Color」(ART TRACE GALLERY、東京、2021)、「彼女たちは叫ぶ、ささやく -ヴァルネラブルな集合体が世界を変える」(東京都美術館、2019)などがある。また、2023年10月には個展「人と間と性」(Hideharu Fukasaku Gallery Yokohama、神奈川、2023)が控える。

菅実花(1988年神奈川県生まれ)は、19世紀の文化やヒューマノイドロボットや高度生殖医療といった近年のテクノロジーを参照しながら、人形、写真、映像などを用いて「人間と非人間の境界」を問う作品を発表している。近年の主な個展に「OPEN SITE 7|菅実花『鏡の国」(トーキョーアーツアンドスペース本郷、東京、2022)、「第15回shiseido art egg 菅実花展 仮想の嘘か|かそうのうそか」(資生堂ギャラリー、東京、2021)、「The Ghost in the Doll」(原爆の図丸木美術館、埼玉、2019)などがあり、2020年には「VOCA展2019 現代美術の展望-新しい平面の作家たち」(上野の森美術館、東京)にてVOCA奨励賞を受賞している。

岸かおる(1956年広島県生まれ)は、女性の在り方や生き方、人の生老病死の問題から、国家、イデオロギー、戦争、核開発、環境問題と幅広いテーマに取り組んでいる。京都工芸繊維大学を卒業と同時に結婚して子育てに専念した岸は、2009年に50代で広島市立大学大学院に入り直し制作活動を開始、専業主婦の時代に培った料理や裁縫といった技術を利用した制作を行なう。近年の主な展覧会に「カナリアがさえずりを止めるとき」(広島市立大学芸術学部CA+Tラボ、2020)、「彼女たちは叫ぶ、ささやく -ヴァルネラブルな集合体が世界を変える」(東京都美術館、2019)、個展「連」(ギャラリー交差611、広島、2018)がある。

 


地主麻衣子《わたしたちは(死んだら)どこへ行くのか》2019年


須惠朋子《ニライカナイを想う》2021年


本間メイ《Bodies in Overlooked Pain》2020年

 

地主麻衣子(1984年神奈川県生まれ)は、個人的な物語をテーマとしたドローイングや小説の制作から、映像やインスタレーション、パフォーマンスなどを総合的に組み合わせることで「新しい種類の文学」の創作を試みている。近年の主な展覧会に「VOCA展2023 現代美術の展望-新しい平面の作家たち」(上野の森美術館、東京)、「新・今日の作家展2020 再生の空間」(横浜市民ギャラリー、2020)など。2021年には死と葬いを映像で記録することをテーマにした文化人類学者金セッピョルとの対話が収録した書籍『葬いとカメラ』を出版。「遠距離現在 Universal / Remote」(熊本市現代美術館、2023)、個展「MAMプロジェクト031:地主麻衣子」(森美術館、東京、2023)が本展と同じく2023年10月に開幕する。

須惠朋子(1975年東京都生まれ)は、土佐麻紙に岩絵の具で描く日本画の技法をベースに、自作の絵の具・粗い砂、泥絵の具と樹脂膠を混ぜた独自のメディウムで、琉球諸島に伝わる理想郷、ニライカナイをモチーフに描いた作品で知られる。近年の主な個展に「神の島より 須惠朋子」(Walls Tokyo、東京、2023)、「須惠朋子展 生命の還る処-神の島に導かれて-」(学習院女子大学文化交流ギャラリー、東京、2022)、主なグループ展に「美の精鋭たち2022 十花の毒」(宇フォーラム美術館、東京、2022)、「第8回 東山魁夷記念 日経日本画大賞展」(上野の森美術館、東京、2021)など。

本間メイ(1985年東京都生まれ)は、近年、女性の身体にまつわる事象を女性が主体的に選択することを提唱するリプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利)をテーマとした作品に発表。個人の制作活動に並行して、Back and Forth Collectiveなど、コレクティブや複数のアーティストとともに共同制作やプロジェクトに取り組む。近年の主な展覧会に「ケアリング/マザーフッド:「母」から「他者」のケアを考える現代美術」(水戸芸術館現代美術ギャラリー、茨城、2023)、「Membelah Menyatu (Split and Unite)」(Soemardja Gallery、バンドン、インドネシア、2022)、「1」(ROH projects、ジャカルタ、インドネシア、2021)、個展「Bodies in Overlooked Pain -見過ごされた痛みにある体-」(黄金町エリアマネジメントセンター、神奈川、2020)など。

 


松下誠子《彼女の目は羊の目-1》2023年


山岡さ希子《パブリック・ダブル1,2》2012年、《ザ・ボディ・メインテナンス》2018年、《アドバイザーとしての死》2023年

 

松下誠子(1950年北海道生まれ)は、制度や規範、支配的な言説から個人を守るものとしての「セキュリティ・ブランケット(安心防衛毛布)」を根底的なテーマに、パラフィンやワックス、羽根などをさまざまな素材を使い、パフォーマンスやインスタレーションなど、多岐にわたる表現を展開している。近年の主な展覧会に個展「良心をさがして – 落下する玩具 -」(太郎平画廊、東京、2023)、個展「Mother’s Voice –Image for the animation」(ATELIER・K、神奈川、2022)、ジョイス・ラムとの二人展「あなたが眠りにつくところ」(藤沢市アートスペース、神奈川、2023)、「彼女たちは叫ぶ、ささやく -ヴァルネラブルな集合体が世界を変える」(東京都美術館、2019)などがある。

山岡さ希子(1961年北海道生まれ)は、自身がコントロールしきれない素材や他者との出会い、時間などについての経験そのものに関心を持ち、パフォーマンスやドローイングを中心とした表現を発表している。パフォーマンスを「行為と時間と関係性の彫刻」と定義する山岡にとって、その表現はアンケートやインタビューなどを含む幅広い形式を含んでいる。また、2016年にはパフォーマンスアートのデジタル映像記録のアーカイヴ「Independent Performance Artists’ Moving Images Archive (IPAMIA)」を設立し、データの公開や関連分野の研究活動を通じて「社会における継続的な知の共有」を目指している。近年の主な展覧会に個展「わたしは自由ではない」(グリゼット、東京、2022)、「見えない経験、組織されない身体」(旧大宮図書館、埼玉、2021)、「Re-Base: When Experiments Become Attitude」(台湾現代文化実験場(C-LAB)、台北、2018)、「Translation Theme Park」(ウプサラ市立美術館、ウプサラ、スウェーデン、2015)など。

 

関連イベント
出品作家全員による自作についてのリレー・トーク
2023年10月9日(月)
14:00-|松下誠子、一条美由紀、岸かおる、山岡さ希子
16:00-|菅実花、本間メイ、地主麻衣子、須惠朋子
モデレーター:小勝禮子
会場:さいたま市プラザノース ノースギャラリー

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