「あ、共感とかじゃなくて。」@ 東京都現代美術館


 

「あ、共感とかじゃなくて。」
2023年7月15日(土)- 11月5日(日)
東京都現代美術館 企画展示室B2F
https://www.mot-art-museum.jp/
開館時間:10:00–18:00(7/21から8/25まで毎週金曜は21:00まで開館延長)入場は閉館30分前まで
休館日:月(ただし、7/17、9/18、10/9は開館)、7/18、9/19、10/10
企画:八巻香澄(東京都現代美術館学芸員)
展覧会URL:https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/empathy/

 

東京都現代美術館では、家族や友人との人間関係や、自分のアイデンティティを確立する過程に悩むことも多い10代のこどもや若者に向けて、答えのない問いを考え続けることを提案する展覧会「「あ、共感とかじゃなくて。」」を開催する。

自分以外の誰かの気持ちや経験などを理解する力としての共感。相手の立場に立って考える優しさや配慮は、社会を円滑に回すために必要なスキルとして、教育やビジネスの現場でも近年その重要性が強調されている。しかし、安易な共感や共感の強要に違和感を覚えるように、時にそれは同調圧力としてはたらき、拙速に結論を迫るものとなる。本展では、共感しないことは拒絶ではなく、新しい対話や思考の可能性を開くことであると捉えて、「共感をしなくても大丈夫だよ」というメッセージを込めて、10代のこどもや若者に「あ、共感とかじゃなくて。」という言葉を送る。また、10代はもちろんあらゆる世代の人々にも、すぐに結論を出さずに考え続ける面白さを体験し、見知らぬ誰かのことを想像する機会を提供する。

 


有川滋男《ラージアイランド》2018年


山本麻紀子《崇仁小学校で眠る》2020年 撮影:片山達貴 写真提供:一般社団法人 HAPS「京都市 文化芸術による共生社会実現に向けた基盤づくり事業 モデル事業」

 

有川滋男(1982年東京都生まれ)は、映像やビデオインスタレーション、写真作品などを通じて、見えるものに意味を与えて理解しようとする人間の行為を、意図的に中断・撹拌させることで「見る」ことの意味を探求している。現在オランダのアムステルダム在住の有川は、架空の職業を描写した映像作品《(再)(再)解釈》シリーズから旧作を4点と、本展のために制作した新作を発表。就職説明会や展示会を模した会場インスタレーションによって、映像の登場人物の業務内容や採用情報など、鑑賞者に想像を促す。

山本麻紀子(1979年京都府生まれ)は、ある特定の場所のリサーチを通して観察や考察を続け、その場所に関わる人たちとのコミュニケーションを生み出しながら活動し、その一連の過程を、絵、写真、映像、染め、刺繍など、さまざまな形式に展開し、作品を制作している。本展では、山本が2013年から取り組む巨人についてのリサーチを通じて制作した《巨人の歯》(2018)と、近年取り組んでいる挿し木プロジェクトを中心に、家のしつらえを模したインスタレーションを展示する。

渡辺篤(アイムヒア プロジェクト)(1978年神奈川県生まれ)は、当事者性と他者性、共感の可能性と不可能性、社会包摂の在り方など、社会/文化/福祉/心理のテーマに及ぶ制作活動に取り組んできた。本展では、渡辺が代表を務めるアイムヒア プロジェクトによる、ひきこもりやコロナ禍に孤立を感じる人々が撮影した月の写真を集めた《同じ月を見た日》を中心に、心の痛みや苦しみを当事者と共に作品化するシリーズ《修復のモニュメント》から、ひきこもりの当事者であった渡辺自身の体験を表現した作品などを発表する。

 


渡辺篤(アイムヒア プロジェクト)《月はまた昇る》2021年 展示風景:「同じ月を見た日」R16 studio、撮影:井上桂佑


武田力《教科書カフェ》2022年 HUBーIBARAKI ART PROJECT 2022での上演風景

 

演出家、民俗芸能アーカイバーの武田力は、「たこ焼き」や「教科書」など日常的な物事を素材とし、観客とともに現代を思索する作品を展開するとともに、演劇の手法を用いた過疎集落における民俗芸能の復活/継承を各地で手掛ける。本展では、先祖代々引き継いできた民俗芸能をその土地に縁がなかったアーティストが継承する活動を紹介するドキュメントの展示のほか、使い終わった小学校教科書を閲覧し、そこから自身の教育体験を思い出して「問い」を導く対話の場《教科書カフェ》を、関東で初めて上演する(会期中いつでも体験可能)。

中島伽耶子(1990年京都府生まれ)は、物事を隔てる壁や境界線の向こう側を、音や光などを介して知覚しようとし、コミュニケーションの非対称性や対話による分かりあえなさを表現。越後妻有アートトリエンナーレや瀬戸内国際芸術祭での古民家を使った作品のように、常に空間と不可分に関わりあった作品を発表してきた。本展では新作として、ホワイトキューブの展示室を分断し、アトリウムまで突き抜ける壁を制作。壁の向こう側の気配を探りコミュニケーションを試み、見えないからこそ想像できる希望や、境界線の向こう側を無視できる暴力などについて考察する。

また、「家族や友人との人間関係や、自分のアイデンティティを確立する過程に悩むことも多い10代のこどもや若者に向けて」と銘打つ本展では、会場デザインや関連プログラムなどでも、さまざまな試みを実施する。こども達に向けたワークショップなどを行なう「ひょうげんのあそびば」を主催する舞台美術家の長峰麻貴を、全体の会場デザインに抜擢。展覧会を見た後にのんびり休憩したり、自分の時間を過ごせるよう、明るい自然光の差し込む吹き抜け空間(アトリウム)をラウンジとして設える。また、解説やキャプションは作品鑑賞のための補助線となるよう、漢字にふりがなをつけたり、用語の説明をつけたりと、やさしい言葉での解説を目指していく。さらに、関連プログラムには、10代を対象とする「哲学対話」や、3歳から8歳までのこどもを対象に、自分らしさに対する自己肯定感、ジェンダーや個性のダイバーシティを伝える「ドラァグクイーン・ストーリー・アワー」を開催、そのほか、参加アーティストによるプログラムも予定されている。

 


中島伽耶子、新作のためのドローイング、2023年

 

関連イベント
有川滋男《ディープ・リバー》作詞ワークショップ
2023年7月17日(月・祝)13:00-15:30
講師:有川滋男、西井夕紀子(作曲家)
会場:東京都現代美術館 B2F 研修室2
定員:10名(先着事前予約制)※定員に達し次第受付終了
対象:中学生以上
無料、下記URLに参加申し込みフォームへのリンクあり
https://mot-art-museum.jp/events/2023/06/20230614111359/

武田力 アーティストトークと朽木古屋念仏踊り体験
2023年7月22日(土)
アーティストトーク:14:00-14:00(事前予約不要)
会場:東京都現代美術館 企画展示室B2F
念仏踊り体験:15:00-17:00(事前予約制、先着20名)※定員に達し次第受付終了
会場:東京都現代美術館 B2F 講堂
対象:どなたでも
無料(当日有効の本展チケットが必要)
下記URLに念仏踊り体験に参加における注意、参加申し込みフォームへのリンクあり
https://www.mot-art-museum.jp/events/2023/06/20230607145721/

ドラァグクイーン・ストーリー・アワー
〜ドラァグクイーンによるこどものための絵本読み聞かせ〜

2023年7月23日(日)
①13:00-14:00|おはなしクイーン:レイチェル・ダムール
②15:30-16:30|おはなしクイーン:エスムラルダ
会場:東京都現代美術館 企画展示室B2F
対象:3〜8歳のこども(要保護者同伴)※大人だけの参加は不可
定員:各回こども15人程度(抽選申込制 ※申込締切:7/3)※申込締切は既に終了
無料(当日有効の本展チケットが必要)
https://www.mot-art-museum.jp/events/2023/06/20230607103350/

アーティストと一緒に作品を見るツアー(不登校編)
2023年8月28日(月)13:00-15:30
出演アーティスト:渡辺篤
ファシリテーター:石井しこう(NPO法人全国不登校新聞社)
協力:NPO法人全国不登校新聞社
会場:東京都現代美術館 企画展示室B2F
対象:不登校や別室登校など、学校に通うことに辛さを感じている中高生 ※保護者の付き添いも可
定員:10人程度(先着申込制)※定員に達し次第受付終了
無料(本展チケットも不要)、下記URLに参加申し込みフォームへのリンクあり
https://www.mot-art-museum.jp/events/2023/06/20230608155710/

そのほかの関連プログラムは、公式ウェブサイトを参照

Copyrighted Image