嶋田美子『おまえが決めるな!』@ オオタファインアーツ


嶋田美子《中ピ連を招魂する(海)》2023年

 

嶋田美子『おまえが決めるな!』
2023年4月15日(土)– 6月10日(土)
オオタファインアーツ
https://www.otafinearts.com/
開廊時間:11:00–19:00
休廊日:日、月、祝
展覧会URL:https://www.otafinearts.com/ja/exhibitions/287

 

オオタファインアーツでは、1980年代後半から女性と戦争をテーマに作品を制作し、日本のフェミニズムアートの先駆けとして活動してきた嶋田美子の21年ぶりとなる新作個展『おまえが決めるな!』を開催する。

嶋田美子(1959年東京都生まれ)は、第二次世界大戦の文化的記憶と第二次世界大戦中での加害者・被害者としての女性の役割をテーマに、版画、ビデオ、パフォーマンス、リサーチ、アーカイブなど多岐にわたる表現を試みてきた。近年は戦争期の女性のみならず、アジア圏における家庭やコミュニティ内における女性の存在の虚実に関するフィールドワークも展開している。また、美術史家、アーキビストとしても、戦後日本の政治と芸術、オルタナティブ美術教育、フェミニズムなどを研究対象に活動。2015年にはイギリスのキングストン大学より博士号(美術史)を取得している。近年の主な展覧会に『Fanatic Heart』(Para Site、香港、2022-2023)、『Spirit Labor: Duration, Difficulty, and Affect』(GARAGE現代美術館、モスクワ、2021-2022)、あいちトリエンナーレ2019(※「表現の不自由展、その後」に出品)、『Japan Unlimited』(MQウィーン、2019)。近年の主なキュレーションには、『Anti-Academy』(John Hansard Gallery、サウザンプトン、イギリス、2013-2014)、『中島由夫シンドローム』(ギャラリーターンアラウンド、仙台、2014/アツコバルー、東京、2015)、『ニルヴァーナからカタストロフィーへ − 松澤宥と虚空間のコミューン』がある。また、『Conceptualism and Materiality: Matters of Art and Politics』(Christian Berger編、Brill、2019)に「Matsuzawa Yutaka and the Spirit of Suwa(松澤宥と諏訪のスピリチュアリティ)」、『The Red Years: Theory, Politics, and Aesthetics in the Japanese ’68』(Gavin Walker編、Verso、2020)に「The Undercurrent of Art and Politics in the 1960s: On Gendai Shichōsha(現代思潮社・美学校)」が収録。2023年4月には『おまえが決めるな! 東大で留学生が学ぶ《反=道徳》フェミニズム講義』(白順社)が出版される。

 


嶋田美子《復活》2023年

 

本展において、嶋田は1972年に設立された「中絶禁止法に反対しピル解禁を要求する女性解放連合(中ピ連)」を予言者として捉え直し、写真作品、ペインティング、映像作品を通じて、その「闘う態度と精神」を現代に招魂することを試みる。

中ピ連は、代表の榎美沙子を中心に♀印のついたピンク色のヘルメットをかぶって過激に華やかに活動し、当時週刊誌やバラエティ番組といったメディアに盛んに取り上げられた。しかし、そのマスコミを利用し利用されたイメージから、「過激」で「バカげている」とフェミニズムの中ですら評価されることがなかった。嶋田は、性と生殖に関する女性の「自己決定権」を明確に主張した中ピ連の活動に先見の明と今日的な意義を見てとる。「Sexual and Reproductive Rights(性と生殖に関する権利)」は自分のことを自分で決められるという個人の人権で、それを保障すべきという考えは、現在、「SDGs(持続可能な開発目標)」のひとつ「ジェンダー平等」の達成目標として世界的に認知されている。にもかかわらず、日本では女性の健康や人権はいまだ国や権威のコントロール下のままである(たとえDVによる望まぬ妊娠だとしても中絶には配偶者の同意を必要とすることが法で定められ、中絶手術には保険が適用されず、ようやく薬事承認されようかという経口中絶薬は手術と同等の10万円前後の価格が見込まれると言われる)。嶋田は、半世紀も前にそのことにはっきりと異を唱えた中ピ連を予言者に見立て、「おまえが決めるな!」と、父権的権力から主体的に権利を勝ち取るべく行動したそのスピリットの復活に取り組む。

会期中、4月15日には「アートと社会」をテーマに山本浩貴(文化研究者・アーティスト・金沢工芸大学講師)、5月20日には「フェミニズムの現在と未来」をテーマに清水晶子(東京大学大学院教授)をゲストに迎えたアーティストトークを開催する。

 

関連イベント
「アートと社会」
嶋田美子 × 山本浩貴(文化研究者・アーティスト・金沢工芸大学講師)
2023年4月15日(土)16:00-17:30
会場:オオタファインアーツ

「フェミニズムの現在と未来」
嶋田美子 × 清水晶子(東京大学大学院教授)
2023年5月20日(土)16:00-17:30
会場:オオタファインアーツ

 

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