シアターコモンズ’23

 

シアターコモンズ’23
2023年2月23日(木)- 3月5日(日)
ゲーテ・インスティトゥート東京、SHIBAURA HOUSEおよびオンライン
https://theatercommons.tokyo/
参加アーティスト:小泉明郎、サエボーグ、佐藤朋子、中村佑子 ほか
チケット購入について:https://theatercommons.tokyo/ticket/

 

演劇の「共有知」を活用し、社会の「共有地」を生み出すプロジェクト「シアターコモンズ’23」が、2023年2月23日より、ゲーテ・インスティトゥート東京、SHIBAURA HOUSEおよびオンラインにて開幕する。パフォーマンス、インスタレーション、ワークショップのほか、メタバースなど遠隔参加も可能なプログラムを展開する本年度は、全プログラム共通の「コモンズパス」と、オンラインのみの参加に対応した「リモートパス」が販売される。

7回目の開催となる本年度のテーマは、「Rebooting Touch 触覚の再起動」。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により往来や接触が制限された「触れられない時代」を経て、人々は移動と接触を再開している。パンデミックで強制同期させられた時計も少しずつ個々の時を刻み始めている一方で、不安定な世界情勢のなか、不確実性の中でどう生き延びていくかという課題は切実感を増している。そのような時代において本年度のシアターコモンズでは、4名のアーティストの演劇的想像力に基づくアプローチを中心に、触覚の可能性を演劇実践の中に位置付け直し、他者や他所と触れ合う(触れ直す)方法を開拓すること、すなわち「触覚を再起動させる」ことに挑む。

 


小泉明郎《火を運ぶプロメテウス》 ©︎Meiro Koizumi

 

シアターコモンズの常連とも言える小泉明郎(1976年群馬県生まれ)は、国家、共同体と個人の関係、人間の身体と感情の関係性を、現実と虚構を織り交ぜた実験的映像やパフォーマンスを通じて探究している。一昨年のシアターコモンズで上演したVR演劇『縛られたプロメテウス』(2019)、昨年のVR彫刻『解放されたプロメテウス』(2021)に続くプロメテウス3部作の最終章として、本年度はVRパフォーマンス『火を運ぶプロメテウス』を発表する。天上界から火を盗み人類に授けたというプロメテウスの神話は、人類とテクノロジーの緊張関係を象徴する。本作において、小泉は実際に遺伝子操作によって人類の身体や知覚そのものが書き換えられた「新しいヒューマン」はどんな痛みや喜びを感じ、自然や宇宙との関係を再構築するのだろうか?という問いを立て、実際にVR体験者の手や触覚に直接作用する方法も用いながら、人間の知覚に揺さぶりをかける。

自らの皮膚の延長としてラテックス製のボディスーツを自作し、装着するパフォーマンスを展開するアーティスト、サエボーグ(1981年富⼭⽣まれ)は、シアターコモンズおよび世界演劇祭テアター・デア・ヴェルトの委嘱を受けて制作した新作、非人間的なキャラクターたちが共生するメタバース空間『ソウルトピア』を発表する。世界中どこからでもアクセス可能な遊戯空間「ソウルトピア」では、誰もがサエボーグがデザインした家畜動物や害虫、微生物や植物などに変身/変異し、人間界とは異なる世界のルールで戯れることができる。そこでは、ジェンダー・年代・言語を超えたコミュニケーションを通じて、物理的な接触をも超越する新たな出会いの形や交流が期待される。

 


サエボーグ《ソウルトピア》 Photo: Kayo Yamashita

 

佐藤朋子(1990年長野県生まれ)は、土地や歴史の膨大なリサーチを新たなナラティブに再編成し、レクチャーパフォーマンスとして語り直す手法を開拓している。シアターコモンズからの委嘱を受けた佐藤は、2021年、2022年と2年連続で港区エリアをフィールドとするリサーチと創作に取り組んできた。第三弾となる今回は、1960年代にオノ・ヨーコ、ジョン・ケージなど数々の歴史的なパフォーマンスが行なわれてきた草月アートセンター(1958-71)の歴史を召喚しながら、レクチャーパフォーマンスを創作する。

映画監督兼作家の中村佑子(1977年東京生まれ)は、繊細な揺らぎを触覚的に掴み取る独自の映像世界や、「母なる場所」をめぐる哲学的エッセイ『マザリング 現代の母なる場所』などで知られる。今回のシアターコモンズでは、エッセイを書くように映像を綴るシネエッセイの手法で紡がれた言葉をベースにして、映像表現と散文表現の新たな地平を開拓するワークショップを実施する。青春時代をパンデミックの中で過ごしている現代の若者たちを対象とする本ワークショップの成果は、会期中にSHIBAURA HOUSE 3Fにてインスタレーションとして展示される。

 


佐藤朋子《オバケ東京のためのインデックス 第二章》 ©シアターコモンズ ’22/撮影:佐藤駿


中村佑子《まなざしはまなざされない》 ©︎Nanami Kozaki / ©︎Ren Segizawa

 

また、シアターコモンズ’23では、「『孵化主義』を実践する-『孵化/潜伏』の時間、からだ、物語」「メタバース時代におけるバーチャル・ドラマトゥルギーのゆくえ」「『世界』を複数化する——東洋思想における『世界』」と題したフォーラムを開催する。いずれのテーマもシアターコモンズ ディレクターの相馬千秋がプログラム・ディレクターを務める世界演劇祭テアター・デア・ヴェルト2023にも共通するものとして、シアターコモンズ’23の参加アーティストや、市原佐都子、スザンネ・ケネディといった世界演劇祭での新作を準備しているアーティストら、複数のアーティストや研究者を交えた議論が行なわれる。各プログラムの詳細や開催日時等は、公式ウェブサイトを参照。
https://theatercommons.tokyo/

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