百瀬文 口を寄せる @ 十和田市現代美術館


百瀬文《Interpreter》2022年、紙にインクジェットプリント、サイズ可変

 

百瀬文 口を寄せる
2022年12月10日(土)– 2023年6月4日(日)
十和田市現代美術館
https://towadaartcenter.com/
開館時間:9:00–17:00 入館は閉館30分前まで
休館日:月(ただし、1/2は開館)、冬季休館(12/27-1/1)、メンテナンス休館(1/10-1/19)※2023年4月以降の臨時開館、休館日については現在未定。後日、公式ウェブサイトに掲載。
企画:見留さやか
展覧会URL:https://towadaartcenter.com/exhibitions/momose-aya/

 

十和田市現代美術館では、映像表現を中心に、他者とのコミュニケーションの中で生じる不均衡をテーマとし、身体・セクシュアリティ・ジェンダーをめぐる問題を追究してきた百瀬文の個展『口を寄せる』を開催する。

百瀬文(1988年東京都生まれ)は、2013年に武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻油絵コースを修了。映像表現を中心としつつも、近年は国際芸術祭「あいち2022」で、障害者女性の性を通じて官能や介助といった身体を委ねる経験に取り組んだ「クローラー」、シアターコモンズ’21では、鍼灸師による施術を取り入れたセラピーパフォーマンス「鍼を打つ」も発表している。主な個展に 『I.C.A.N.S.E.E.Y.O.U』(EFAG East Factory Art Gallery、東京、2020)、『サンプルボイス』(横浜美術館アートギャラリー1、2014年)、主なグループ展に『新・今日の作家展2021 日常の輪郭』(横浜市民ギャラリー)、『彼女たちは歌う』(東京藝術大学美術館陳列館、2020)、『六本木クロッシング2016展:僕の身体、あなたの声』(森美術館)、『アーティスト・ファイル 2015 隣の部屋̶̶−日本と韓国の作家たち』(国立新美術館、東京・韓国国立現代美術館、2015-2016年)などがある。2017年にはACCの助成を受けてニューヨークに滞在。2019年にはイム・フンスンと共同制作した『交換日記』が全州国際映画祭に正式招待された。

 


百瀬文《Social Dance》2019年、シングルチャンネル・ビデオ、10分33秒


百瀬文《定点観測[父の場合]》2013‒2014年、シングルチャンネル・ビデオ、10分26秒

 

本展は、女性の声優の存在をテーマにした新作サウンド・インスタレーション《声優のためのエチュード》をはじめ、耳の聞こえない女性と耳の聞こえる男性との触れ合いに生じるすれ違いが映し出されている《Social Dance》(2019)、百瀬の父親が百瀬の書いた173問の質問項目に口頭で答えていくなかで、その回答が父親の意志から離れていく《定点観測(父の場合)》(2013-2014)、鑑賞者がある番号に電話をかけると予期せぬ留守番電話のアナウンスが流れてくる《Here》(2016)、視力検査を題材にした医師と患者の間の応答が映し出されている《The Examination》(2014)など、「声」に関する作品で構成される。

百瀬にとって初の試みとなるサウンド・インスタレーションは、「声」に合わせてひとつの灯が揺らぐ薄暗い空間にスタンドマイクが1本置かれ、キャラクターに声を吹き込むレコーディングスタジオを思わせるものとなる。「声自体にはたして性別はあるのか」と問いかける百瀬は、観客の脳裏に「流動的な身体を浮かび上がらせるための幻燈機のような装置」として新作をつくりあげる。

会期中には、アーティスト・トークや作品上映会を開催。作品上映会では、ポーランドで2021年に成立した人工妊娠中絶禁止法や日本の堕胎罪などの状況が映し出され、個人の身体に対する国家権力による管理がコロナ禍で強化されてゆく様を描いた《Flos Pavonis》(2021)を上映する。

 


百瀬文《Flos Pavonis》2021年、シングルチャンネル・ビデオ、30分 参考作品

 

関連イベント
アーティスト・トーク[百瀬文]
登壇:百瀬文
2022年12月10日(土)14:00-15:00(開場・受付開始時間:13:45)
会場:十和田市民図書館 多目的研修室
無料(要観覧チケット ※事前に十和田市現代美術館で購入)
事前予約優先のため申込を推奨。詳細は下記URLより。
https://towadaartcenter.com/events/momose_aya_talk/

学芸員によるギャラリートーク
担当:見留さやか(十和田市現代美術館学芸員)
2022年12月17日(土)14:00-15:00
2023年1月21日(土)13:00-14:00
会場:十和田市現代美術館 企画展示室
無料(要観覧チケット)
事前予約優先のため申込を推奨。詳細は下記URLより。
https://towadaartcenter.com/events/momose_gallery_talk/

百瀬文 映像作品《Flos Pavonis》上映会
登壇:百瀬文
2023年3月4日(土)17:00-18:00
会場:十和田市現代美術館 休憩スペース(カフェ)予定
無料(要観覧チケット)
事前予約優先のため申込を推奨。詳細は下記URLより。
https://towadaartcenter.com/events/momose_aya_flospavonis/

 

ART iT Archive
「フーガの技法|百瀬文+イム・フンスン《交換日記》を見る」文 / 林卓行(2019年9月)

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