地球がまわる音を聴く:パンデミック以降のウェルビーイング @ 森美術館


《ヘーゼルナッツの花粉》を展示するヴォルフガング・ライプ、 豊田市美術館(愛知)2003年 Courtesy:ケンジタキギャラリー(名古屋、東京) 撮影:怡土鉄夫 ※参考図版

 

地球がまわる音を聴く:パンデミック以降のウェルビーイング
2022年6月29日(水)– 11月6日(日)
森美術館
https://www.mori.art.museum/
開館時間:10:00–22:00(火曜は17:00まで)入館は閉館30分前まで
会期中無休
展覧会URL:https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/earth/index.html
企画:片岡真実(森美術館館長)、熊倉晴子(森美術館アシスタント・キュレーター)、德山拓一(森美術館アソシエイト・キュレーター)
出展作家:エレン・アルトフェスト、青野文昭、モンティエン・ブンマー、ロベール・クートラス、堀尾昭子、堀尾貞治、飯山由貴、金崎将司、金沢寿美、小泉明郎、ヴォルフガング・ライプ、ゾーイ・レナード、内藤正敏、オノ・ヨーコ、ツァイ・チャウエイ(蔡佳葳)、ギド・ファン・デア・ウェルヴェ

 

2020年以降、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)という目に見えないウイルスの影響により、生活や心境が大きく変化した状況において、自然と人間、個人と社会、家族、繰り返される日常、精神世界、生と死など、生や実存に結びつく主題を扱った作品を通じて、「よく生きる」ことへの考察を深める企画展『地球がまわる音を聴く:パンデミック以降のウェルビーイング』が森美術館にて開催される。。

本展では、「パンデミック以降をいかに生きるか?」「私たちの心はどのように社会を捉え、どのような風景を描いたのか?」「生きることそのものが芸術になるのか?」「自分と宇宙、今日の一瞬と永遠はどう繋がっているのか?」という4つの問いを掲げ、国内外のアーティスト16名が提示する多様な視点を通して「パンデミック以降のウェルビーイング」を考察していく。

展覧会のタイトルに掲げられた「地球がまわる音を聴く」は、オノ・ヨーコのアーティスト・ブック『グレープフルーツ』(1964)に収録されたインストラクションのひとつ。『グレープフルーツ』に収録された数々のインストラクションは、意識を壮大な宇宙へと誘い、私たちがその営みの一部に過ぎないことを想像させ、新たな思索へと導いていく。「パンデミック以降をいかに生きるか?」という問いに対して、想像力こそが未来の可能性を示すものだという認識を、ギド・ファン・デア・ウェルヴェの日々の行為の積み重ねから成る作品、花粉や蜜蝋、牛乳などを素材に生命のエッセンスを導き出すヴォルフガング・ライプの作品、自然やそこに含まれる幾多の生命の本質を森の中で描きつづけるエレン・アルトフェストの作品を通じて再確認していく。

 


ギド・ファン・デア・ウェルヴェ《第9番 世界と一緒に回らなかった日》2007年 ハイビジョン・ビデオ・インスタレーション 8 分40秒 Courtesy:Monitor, Rome; Grimm, Amsterdam; Luhring Augustine, New York 撮影:ベン・ゲラーツ


飯山由貴《海の観音さまに会いにいく》2014年 ビデオ、スライド 撮影:宮澤響 ※参考図版

 

パンデミックは、世界中に健康危機をもたらしただけでなく、それ以前から社会に横たわるさまざまな問題、分断や衝突を可視化する契機にもなった。「私たちの心はどのように社会を捉え、どのような風景を描いたのか?」という問いが与えられたセクションでは、さまざまな状況下で社会や自分自身に向き合うアーティストの作品を通じて、生活や身の回りの環境を異なる視点から観察し、再考することの重要性に向き合うことになる。飯山由貴は、DV(ドメスティック・バイオレンス)をテーマにした新作に取り組み、被害者と加害者の双方からのインタビューを中心としたインスタレーションを発表。小泉明郎は、言語に頼った人間の認識の脆弱性を探究する新作映像を発表する。また、ゾーイ・レナードが、1990年代にエイズで亡くなった友人に捧げたインスタレーションは、日常的な行為が救済につながる可能性や、連帯するコミュニティの力強さを再認識するものになるだろう。

あらゆるものの定義や前提が揺るがされる中で、「生きることとはなにか」という問いに向き合うとき、このセクションでは、他者からの評価のためではなく、自分のために、湧きあがる衝動のまま絵を描く、彫刻を作る、さまざまな表現に取り組んだ堀尾貞治堀尾昭子ロベール・クートラス金崎将司の作品を紹介する。「生きることそのものが芸術」であるかのように制作を続けたアーティストを通じて、「生きることとはなにか」という問いの答えを探る。

 


ロベール・クートラス《僕の夜のコンポジション(リザーブカルト)》1970年 油彩、ボール紙 約12 × 6 cm(各)撮影:内田芳孝+岡野 圭、片村文人

 

最後のセクションでは、「自分と宇宙、今日の一瞬と永遠はどう繋がっているのか?」という問いの下、過去や自然から学び、壮大な時間と空間の流れのなかに自分自身を位置づけようと試みてきた作品を紹介する。ともに東北をテーマとした内藤正敏の写真作品と青野文昭のインスタレーションは、遥か過去と現在を繋ぎ、自然や宇宙、神々や霊的な存在への畏怖の念とともに歩んだ人類の歴史を彷彿させ、新聞を素材に用いた金沢寿美のインスタレーションは、紙面に掲載される大小さまざまな出来事の連なりが、やがては宇宙をも思わせる大きな時間の流れを想像させる。そして、鑑賞する人に呼吸を整え瞑想する空間をもたらすモンティエン・ブンマーのインスタレーション、鏡に映り込むわたしたち自身の存在もまた、曼荼羅の表す壮大な宇宙の一部であることを示唆するツァイ・チャウエイ[蔡佳葳]の作品が展覧会を締めくくる。

 


ツァイ・チャウエイ(蔡佳葳)《子宮とダイヤモンド》(部分)2021年 手吹きガラス、鏡、ダイヤモンド 300 × 600 cm 展示風景:「ツァイ・チャウエイ:子宮とダイヤモンド」リブ・フォーエバー財団(台中) 2021年


金沢寿美 展示風景:「第6回新鋭作家展 影⇆光」川口市立アートギャラリー・アトリア(埼玉) 2017年 撮影:阿部萌夢

 

 


同時開催
MAMコレクション015:仙境へようこそ―やなぎみわ、小谷元彦、ユ・スンホ、名和晃平
2022年6月29日(水)– 11月6日(日)
企画:椿玲子(森美術館キュレーター)
https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/mamcollection015/index.html

MAMスクリーン016:ツァオ・フェイ(曹斐)
2022年6月29日(水)– 11月6日(日)
企画:椿玲子(森美術館キュレーター)
https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/mamscreen016/index.html

MAMリサーチ009: 正義を求めて―アジア系アメリカ人の芸術運動
2022年6月29日(水)– 11月6日(日)

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