ブブ・ド・ラ・マドレーヌ『人魚の領土―旗と内臓』@ オオタファインアーツ


BuBu de la Madeleine, A Mermaid’s Territory – Parade #001 (2022)

 

ブブ・ド・ラ・マドレーヌ『人魚の領土―旗と内臓』
2022年4月9日(土)- 5月28日(土)
オオタファインアーツ
https://www.otafinearts.com/
開廊時間:11:00-19:00
休廊日:日、月、祝

 

オオタファインアーツでは、2006年以来16年ぶりとなるブブ・ド・ラ・マドレーヌの個展『人魚の領土―旗と内臓』を開催。2019年にアーツ前橋で開かれた『表現の生態系』で発表したインスタレーション作品《人魚の領土と脱皮》の“その後”とも言える新作と、そこから派生したドローイング群を発表する。

ブブ・ド・ラ・マドレーヌ(1961年大阪府生まれ)は、京都市立芸術大学在籍時から交流のあったダムタイプに1991年からメンバーとして参加し、94年から96年にかけて、15ヶ国20都市で上演されたパフォーマンス《S/N》に出演。その後も国内外のアーティストとの共同またはソロでパフォーマンス、映像、テキストなど、さまざまなメディアによる作品を発表してきた。制作活動に並行し、HIV/エイズとともに生きる人々やセックスワーカー、女性、セクシュアルマイノリティなどの健康と人権に関する市民運動にも長く携わる。また、90年代から現在までクラブナイトでドラァグクイーンとしても活動している。主な展覧会に嶋田美子との二人展『メイド・イン・オキュパイド・ジャパン』(オオタファインアーツ、1997)、『どないやねん!』(フランス国立口頭美術学校、パリ、1998)、『セックスと消費主義』(ブライトン大学、2001)、個展『甘い生活』(2001)、個展『人魚の領土』(2004)、『表現の生態系 世界との関係をつくりかえる』(アーツ前橋、2019)、『JAPAN UNLIMITED』(frei_raum Q21、ミュージアムクォーター、ウィーン、2019)など。2018年には、森美術館のMAMリサーチ『クロニクル京都1990s―ダイアモンズ・アー・フォーエバー、アートスケープ、そして私は誰かと踊る』にも企画協力として参加している。

 


BuBu de la Madeleine, A Mermaid’s Territory – Flags and Internal Organs #002 (2022)

 

かつてオオタファインアーツで開かれた個展のタイトルにも用いられた「人魚の領土」は、ブブの制作活動において2004年から一貫するテーマ。親友の死を経験した後、ブブにとって人魚は、死者の世界である海と陸との狭間で荒波に抗う存在としてあった。2010年代に入ると、セックスワークや家族の在宅介護の日常を通して、自己と他者の身体の境界についてより意識するようになり、人魚の住処であり領土でもある「水」は、地上で社会的な力を奪われた女性やマイノリティが生きる世界の隠喩でもあり得るのではないかと考えるようになっていった。

ある日、乾燥した皮膚が剥がれるのを見て「人魚は脱皮するかもしれない」と考えたことをきっかけに、2019年のインスタレーション作品《人魚の領土と脱皮》では、脱皮後に残される大きな「人魚の皮」を金網で作り、パラパラと剥がれ落ちるウロコには、ブブが着古した衣服や好きだったシーツ、クラブで着たドラァグクイーンの衣装を使用した。翌2020年にブブは、卵巣囊腫と子宮筋腫のために卵巣2個と子宮を摘出。手術の痛みや苦しみを経て、身体が内側から新しく生まれ変わる可能性を実感したことから生まれたアイディアを基に、新作では、身体の表面だけではなく、内臓の脱皮を通じて、生死や性別役割や生殖のイメージを捉え直し、人が生き物としての複雑さや豊かさを取り戻そうと試みる。


BuBu de la Madeleine, A Mermaid’s Territory – Flags and Internal Organs, plan dawing


BuBu de la Madeleine, A Mermaid’s Territory – Flags and Internal Organs, plan dawing

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