松江泰治 マキエタ CC @ 東京都写真美術館


松江泰治《TYO 90835》2021年 作家蔵 ©TAIJI MATSUE Courtesy of TARO NASU

 

松江泰治 マキエタ CC
2021年11月9日(火)- 2022年1月23日(日)
東京都写真美術館
https://topmuseum.jp/
開館時間:10:00–18:00(木、金は20:00まで)
休館日:月(月曜が祝休日の場合は開館し、翌平日休館)、12/28–1/1、1/4
企画:伊藤貴弘(東京都写真美術館学芸員)

 

東京都写真美術館では、世界各地の地表を独自の視点で撮影してきた松江泰治の最新作を含むふたつのシリーズを通して、作家の現在地を示すとともに、その表現の可能性を探る個展『松江泰治 マキエタ CC』を開催する。

松江泰治(1963年東京都生まれ)は、画面に地平線や空を含めない、被写体に影が生じない順光で撮影するといったルールを自らに課すことで、画面全体を均質かつ克明に写し、平面性という写真の本質を問い直す作品を発表している。初期作品〈TRANSIT〉(1984–1985)から変わらないコンセプトを貫く一方で、モノクロからカラーフィルムへの移行、デジタル技術の革新による動画制作の開始、デジタル技術を駆使したパノラマ作品の制作など、新しい技術を積極的に取り入れてきた。2002年に〈gazetteer〉シリーズを収録した写真集『Hysteric 松江泰治』(ヒステリックグラマー、2001)で第27回木村伊兵衛写真賞を受賞。これまでに『gazetteer』(2005)、『CC』(2005)、『JP-22』(2006)、『cell』(2008)、『jp0205』(2013)、『LIM』(2015)、『Hashima』(2017)など、数多くの写真集を発表。『JP-22』(ヴァンジ彫刻庭園美術館、2006)、『世界・表層・時間』(IZU PHOTO MUSEUM、2012)をはじめ、国内外の多数の展覧会で作品を発表。2018年には、初期作品から当時新たに挑戦していた作品まで体系的に紹介する初の回顧展『地名事典|gazetteer』(広島市現代美術館)を開催している。

 


松江泰治《LPB 1733》2021年 作家蔵 ©TAIJI MATSUE Courtesy of TARO NASU


松江泰治《SYD 20119》2012年 東京都写真美術館蔵 ©TAIJI MATSUE Courtesy of TARO NASU

 

本展では、松江が近年意欲的に制作し、初公開作品を多数含む世界各地の都市や地形の模型を写した〈makieta〉シリーズと、各作品のタイトルに撮影地の都市コードを付した2001年から制作する代表作〈CC〉シリーズを並置することで、現実と虚構の境界を撹乱し、写真とは何かを問い直す。そのほか、松江が2010年から写真作品と同じ独自のルールで制作してきた映像作品から、色とりどりの野菜や果物が積み上げられたグアテマラの市場を映した作品など、新作を含む4点を発表する。

「CC」とは「シティ・コード(City Code)」の略。1990年から世界各地の地表を集める〈gazetteer(ギャゼティア)〉(1990-)を制作していた松江は、収集した地名に都市の地名が欠けていることに気づき、2001年にギリシャのアテネでの撮影から作品のタイトルに撮影地の都市コードが付した〈CC〉シリーズの制作を開始した。独自のルールで撮影された同シリーズは、一見すると空撮のように見えるが、すべて地上から撮影されており、制作ルールに合う撮影場所が綿密なリサーチを重ねて選ばれている。「makieta(マキエタ)」は、ポーランド語で「模型」を意味する。〈makieta〉は、2007年に〈CC〉の撮影で訪れた南米エクアドルの博物館で、首都キトの都市模型に出会ったことをきっかけに制作がはじまった。都市模型の作品には〈CC〉と同じく都市コード、地形模型の作品には〈gazetteer〉と同様に地名が作品タイトルに付されている。

展覧会図録には、出品作品全図版のほか、日本の1960、70年代の文学や視覚文化の状況を分析した『Residual Futures:The Urban Ecologies of Literary and Visual Media of 1960s and 1970s Japan』(コロンビア大学出版、2019)の著者、フランツ・プリチャード(プリンストン大学東アジア研究科講師)および、本展企画者の伊藤貴弘(東京都写真美術館学芸員)によるテキストを収録。

 


松江泰治《WAW 62222》2021年 作家蔵 ©TAIJI MATSUE Courtesy of TARO NASU


松江泰治《Guatemala 1904》2021年 作家蔵 ©TAIJI MATSUE Courtesy of TARO NASU

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