クリスチャン・マークレー トランスレーティング[翻訳する]@ 東京都現代美術館


クリスチャン・マークレー《サラウンド・サウンズ》2014-2015年、映像インスタレーション、Photo: Ben Westoby © Christian Marclay. Courtesy White Cube, London, and Paula Cooper Gallery, New York

 

クリスチャン・マークレー トランスレーティング[翻訳する]
2021年11月20日(土)- 2022年2月23日(水・祝)
東京都現代美術館 企画展示室1F
https://www.mot-art-museum.jp/
開館時間:10:00–18:00 入場は閉館30分前まで
休館日:月(ただし1/10、2/21は開館)12/28–1/1、1/11
企画:藪前知子(東京都現代美術館学芸員)

 

東京都現代美術館では、サンプリングやコラージュという手法を駆使して、音楽と現代美術の両領域で聴覚と視覚の結びつきを探る実験的な活動を展開してきたクリスチャン・マークレーの全貌を紹介する展覧会『クリスチャン・マークレー トランスレーティング[翻訳する]』を開催する。

クリスチャン・マークレー(1955年アメリカ合衆国カリフォルニア州生まれ)は、スイスのジュネーヴで育ち、地元のジュネーヴ造形芸術大学で学んだのち、アメリカに渡り、ボストンのマサチューセッツ芸術大学、ニューヨークのクーパー・ユニオンで学ぶ。長年マンハッタンを拠点に活動してきたが、近年はロンドンに拠点を置く。1979年にターンテーブルを使ったパフォーマンスを発表し、レコードをインタラクティブな楽器として扱う先駆的なアプローチにより、実験音楽シーンで注目を集める。1980年代以降には、即興の演奏のほか、現代美術の領域でも視覚的な情報としての音や、現代社会において音楽がどのように表象され、物質化され、商品化されているかといったテーマに焦点を当てた活動を積極的に展開していく。数千にもわたる映画作品から、時計が映っている映像の断片を抽出し、現実の時間軸と対応するように編集、上映される24時間におよぶ映像作品《ザ・クロック》(2010)は、2011年の第54回ヴェネツィア・ビエンナーレにも出品され、金獅子賞を受賞。同年のヨコハマトリエンナーレ2011にも出品されたほか、現在も世界各地で上映が行なわれている。近年の主な個展に『Sound Stories』(ロサンゼルス・カウンティ美術館、2019)、『Compositions』(バルセロナ現代美術館、2019)、『Action』(アールガウアー美術館、アーラウ、2015)、『Festival』(ホイットニー美術館、2010)などがあり、長年にわたり世界各地で作品を発表している。2017年には親交の深い大友良英がゲストディレクターを務めた札幌国際芸術祭2017にも参加している。また、音楽の分野でも重要な活動を続け、『Record Without a Cover』(1985)、『More Encores』(1988)、『Records』(1997)などのリリースのほか、ジョン・ゾーン、エリオット・シャープ、ソニック・ユース、フレッド・フリス、スティーブ・ベレスフォード、オッキュン・リー、前述した大友良英など、数多くのミュージシャンと共演、レコーディングを行なっている。

 


クリスチャン・マークレー《リサイクルされたレコード》1981年、コラージュされたレコード、直径 30.5cm、Collection of the artist © Christian Marclay. Courtesy Paula Cooper Gallery, New York


クリスチャン・マークレー《無題(「架空のレコード」シリーズより)》1992年、改変されたレコード・アルバム・カバー、31.1 cm × 31.1cm、Photo: Steven Probert © Christian Marclay. Courtesy Paula Cooper
Gallery, New York

 

本展では、『視覚と聴覚の経験の等価性を追求し、ある感覚を別の感覚に置き換えることで世界を読み解こうとするマークレーのユニークなアプローチを「Translating [翻訳する/変換する]」という語で言い当てる』(展覧会リリースより引用)。日本の美術館で開催される初の大規模な個展として、コンセプチュアル・アートやパンク・ミュージックに影響を受けた初期作品から、イメージと音の情報のサンプルを組み立てた大規模なインスタレーション、さらには現代社会に蔓延する不安を映し出した最新作まで、その多岐にわたる活動の全貌を紹介する。

既存の映画の音楽や音にまつわるシーンをサンプリングし、構成した映像を4つのスクリーンに投影するマークレーの代表作のひとつ《ビデオ・カルテット》(2002)や、マンガから切り取ったオノマトペの文字が、それぞれの言葉の音響的特性を示すような動きのついたアニメーションとなり、音の大洪水として降り注ぐ《サラウンド・サウンズ》(2014–2015)といった、「音を見る/イメージを聴く」という体験へと鑑賞者を導く大規模な映像インスタレーションも出品。そのほか、会期中には、∈Y∋、大友良英、コムアイ、巻上公一、山川冬樹らが、クリスチャン・マークレーの「グラフィック・スコア(図案楽譜)」を演奏するイベントを複数回にわたって開催。さらに、この演奏のために、ジム・オルークを中心とするバンドも結成される(ジム・オルーク(ギター)、山本達久(ドラム)、マーティ・ホロベック(ベース)、石橋英子(フルート)、松丸契(サックス))。

本展カタログは、出品作の画像や作家へのインタビューのほか、刀根康尚、デヴィッド・トゥープ、ダグラス・カーンら重要な論客たちとの対談や論考、大友良英、中川克志(音楽・音響学)、ライアン・ホームバーグ(美術史・マンガ史研究)らによる書き下ろしの論考を収録。さらに、年表やマークレーの日本での活動に関する資料編も掲載された充実の内容となる。

 


クリスチャン・マークレー《フェイス(恐れ)》2020年、コラージュ、30.2 ㎝ × 30.3 ㎝、© Christian Marclay. Courtesy Gallery Koyanagi, Tokyo


クリスチャン・マークレー《エフェメラ:ミュージカル・スコア》[部分]2009年、28枚の印刷物より、Produced and published by mfc-michèle didier, Paris /Brussels © Christian Marclay & by mfc-michèle didier. Courtesy Paula Cooper Gallery, New York

 

関連イベント
∈Y∋、大友良英、コムアイ、巻上公一、山川冬樹らが、クリスチャン・マークレーの「グラフィック・スコア(図案楽譜)」を演奏するイベントを会期中複数回にわたって開催。詳細は公式ウェブサイトなどで発表。

 

ART iT Interview Archive
クリスチャン・マークレー「The Clock」(2010年12月)

 


 

同時期開催
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