セラム『クリクラボ―移動する教室』@ 山口情報芸術センター[YCAM]


セラムがアジア・アート・ビエンナーレ2017で実施した「知識のマーケット」の様子 写真提供:国立台湾美術館

 

セラム『クリクラボ―移動する教室』
2021年9月18日(土)- 12月19日(日)
2021年10月30日(土)-2022年2月27日(日)
※新型コロナウイルス感染症への対応および本展の内容を考慮し会期変更。(9月27日更新)
山口情報芸術センター[YCAM]ホワイエ
https://www.ycam.jp/
開館時間:10:00-19:00
休館日:火(火曜日が祝日の場合は翌日)
企画:レオナルド・バルトロメウス(キュレーター)

 

山口情報芸術センター[YCAM]では、ジャカルタを拠点にアートと教育を中心とした活動を行なうアーティスト・コレクティブ、セラムによる展覧会『クリクラボ―移動する教室』を開催する。

セラム(Serrum)は、アーティストやデザイナー、キュレーターなど、その多くが美術教師としての教育を受けた経験を持つメンバーによって、2006年にジャカルタで結成。コレクティブの名前は、「シェア(share)」と「ルーム(room)」を組み合わせた造語として、「部屋を共有する」という意味を持つ。教育や政治、都市などの問題を中心に、国内外のさまざまな背景を持つ人々とコラボレーションを行ないながら、ビデオ、壁画、グラフィック、漫画、インスタレーション、アートプロジェクト、展覧会、ワークショップ、ディスカッション、ビジュアル・プロパガンダ活動など、多岐に渡るアプローチで取り組んでいる。教育については、主にアートと教育制度の関係に焦点を当て、過去・現在・未来の教育制度を思索するとともに、教育における「学び」の概念や、教師と生徒の役割に疑問を投げかける活動で知られている。

 


セラムの集合写真 写真提供:セラム


ジャカルタでの「クリクラボ」の様子(2014年)写真提供:セラム

 

開館以来、作品制作だけでなく、作品と鑑賞者をつなぐ教育プログラムの開発、そのメディア・テクノロジーに関する知識や経験を、地域課題や地域資源に結びつける取り組みに注力してきたYCAMは、開館20年の節目となる2023年を前に「オルタナティブ・エデュケーション」と題して、地域コミュニティや市民のための学びの場としてのアートセンターの役割を再考するプロジェクトを開始。アートを通して教育問題に取り組んできたセラムの活動を紹介する本展はその第1弾に位置付けられる。本展のタイトルにある「クリクラボ(Kurikulab)」は、インドネシア語で「カリキュラム」を意味する「Kurikulum」と、英語で「実験室」を意味する「Laboratory」を組み合わせた造語で、教育に対するセラムの実験的な姿勢を示している。本展を構成する「クリクラボ」、「理想の学校」、「知識のマーケット」の3つの作品は、いずれも人々との対話を促すもので、さまざまなトピックや形式で展開する。

「クリクラボ」は、教育にまつわるトピックについて意見交換するディスカッション。本展では、会期前に「先生は何のためにいるのか」「学校は何のためにあるのか」といった話題を設定し、そのディスカッションの様子を捉えた記録映像を会場に展示する。また、会期中にも近隣地域から美術や教育分野を専門に活動する人々を招き、日本の教育制度、地域における文化施設、生活の知恵といったトピックについてのディスカッションを行なう。「理想の学校」は、学ぶ側の視点から社会的に固定化された「学校」の概念を、学校の模型を用いながら、物理的な面だけでなく、ルールや制度の側面もふくめて考えていくワークショップ。セラムのアプローチは、校風や学校制度、校舎のデザインという3点を取り上げながら、学校に対する学ぶ側の想像力を探る意図を持つ。「知識のマーケット」は、参加者同士が1対1となって、自身の知識を交換し合うプログラム。「すべての人は先生であり、すべての人は生徒である」という考えが基本となっており、単に知識を一方的に得るだけではなく、「学ぶ側」と「教える側」を相互に入れ替えながら、対話を通じて知識を交換する。

来場者はこうしたイベントに参加できるほか(下記の関連イベントを参照)、会場に展示されたイベントの記録から他者の意見に触れたり、自身の意見をそこに残したりすることもできる。また、会場には来場者がお茶を飲みながら会話できる空間も設けられ、展覧会全体の体験を通じて、多様な価値観や知恵が蓄積される仕組みとなっている。なお、本展キュレーターは、セラムと同じくジャカルタを拠点とするアーティスト・コレクティブ「ルアンルパ」のメンバーでもあるレオナルド・バルトロメウスが務める。

 


「理想の学校」によって完成した学校の模型(2016年)写真提供:セラム


ジャカルタでの「知識のマーケット」の様子(2017年)写真提供:セラム

 

関連イベント ※申込の詳細は公式ウェブサイトを参照。
知識のマーケット
2021年9月18日(土)、11月13日(土)、12月18日(土)14:00–15:00
2021年10月30日(土)、2022年1月15日(土)、2022年2月27日(日)各日14:00–15:00
会場:山口情報芸術センター[YCAM]ホワイエ
定員:各回50名(要申込、先着順)、参加無料

理想の学校(非公開)
2021年10月2日(土)、10月16日(土)、11月6日(土)
※小学生から大学生を対象とする参加者のみで実施。実施後は、記録を会場で公開。

クリクラボ(非公開)
2021年10月9日(土)、10月30日(土)
※教育関係者などを対象とする参加者のみで実施。実施後は、記録を会場で公開。

ミニガイド
2021年10月3日(日)、10月10日(日)、10月17日(日)、11月7日(日)、12月5日(日)、12月11日(土)各日15:00–15:15
会場:山口情報芸術センター[YCAM]ホワイエ
定員:各回10名(申込不要)、参加無料

ギャラリーツアー
2021年9月26日(日)、10月31日(日)、12月12日(日)各日14:00–16:00
2021年10月31日(日)、2022年1月16日(日)、2022年2月23日(水・祝)各日14:00–16:00
会場:山口情報芸術センター[YCAM]ホワイエ
定員:各回20名(要申込)、参加無料

アーティストによるクロージングトーク
登壇者:セラム、レオナルド・バルトロメウス
通訳:岩田晶子
2022年2月27日(日)16:00-18:00
会場:山口情報芸術センター[YCAM]ホワイエ
定員:40名(要申込)、参加無料
※YouTube Liveでのオンライン配信あり。

 

 


 

YCAMオープンラボ2021
2021年11月26日(金)- 11月28日(日)
https://www.ycam.jp/events/2021/openlab/
「オルタナティブ・エデュケーション」をテーマに、関連する実践をおこなっている専門家を国内外から招聘しディスカッションを行なう。アートセンターの役割、アートと都市開発との関係性、学びのための道具としてのアートについて議論を展開。

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