オスカー・ムリーリョ「地政学―マニフェステイション」@ タカ・イシイギャラリー


Oscar Murillo, manifestation (2020-2021) © Oscar Murillo Photography by Tim Bowditch and Reinis Lismanis. Courtesy of the artist and Taka Ishii Gallery

 

オスカー・ムリーリョ「地政学―マニフェステイション」
2021年9月4日(土)– 10月2日(土)
タカ・イシイギャラリー(complex665)
https://www.takaishiigallery.com/
開場時間:12:00–18:00
休館日:日、月、祝

 

タカ・イシイギャラリーでは、その独自の視覚言語を展開した制作活動により国際的に高い評価を受け、現在、森美術館のMAMプロジェクトでも作品を発表しているコロンビア出身のアーティスト、オスカー・ムリーリョの新作を中心に構成した個展『地政学―マニフェステイション』を開催する。

オスカー・ムリーリョ(1986年ラ・パイラ生まれ)は、自分自身の経験を起点に、絵画をはじめ、ドローイング、彫刻、映像、インスタレーション、ライブイベント、書籍制作、そして、さまざまなコミュニティとの協働的なプロジェクトなど、多角的な実践を通じて、グローバリゼーションや文化交流の条件や力学について探究してきた。コロンビアの工業都市ラ・パイラに生まれたムリーリョは、少年時代に両親とともにロンドンに移り住む。2007年にウェストミンスター大学で美術の名誉学士号を取得し、卒業後は中等教育に携わったのちにパートナーの故郷であるベネズエラに移住。その後、ロンドンに戻り、2012年にロイヤル・カレ ッジ・オブ・アートの修士課程を修了した。2000年代後半よりロンドンを中心に作品の発表を重ね、2013年にサウス・ロンドンギャラリーで個展『if I was to draw a line, this journey started approximately 400km north of the equator』を開催。2015年にはオクウィ・エンヴェゾーがアーティスティックディレクターを務めた第56回ヴェネツィア・ビエンナーレ企画展『All the World’s Futures』に参加する。その後も、コロンビア国立大学美術館(ボゴタ、2015)ヤラト現代美術センター(バクー、ジョージア、2016–2017)、ハウス・デア・クンスト(ミュンヘン、2017–2018)、K11アート・ ミュージアム(上海、2019)、ケンブリッジ大学ケトルズヤード(2019)、クンストフェライン・ハンブルグ(2019–2020)、アスペン美術館(アメリカ合衆国コロラド州、2020)、森美術館(2021)などで個展を開催。第20回シドニー・ビエンナーレ(2016)、あいちトリエンナーレ2016、第13回シャルジャ・ビエンナーレ(2017)、第10回ベルリン・ ビエンナーレ(2018)、『ソンズビーク20–24:Force Times Distance』(アーネム、オランダ、2021)などの国際展やグループ展に参加している。

 


Oscar Murillo, manifestation (2020-2021) © Oscar Murillo Photography by Tim Bowditch and Reinis Lismanis. Courtesy of the artist and Taka Ishii Gallery

 

タカ・イシイギャラリーでの初個展となる本展では、ムリーリョ作品に特徴的な要素と技法が組み合わされたペインティングのシリーズ「マニフェステイション」を中心に発表する。「マニフェステイション」のペインティングには、ムリーリョが異なる場所や時間において制作したさまざまな要素を接ぎ合わせたものを下地とし、複数のエネルギーが結合された作品の基盤が形成される。先行するシリーズと同様の手法を取り入れ、顔料を染み込ませたキャンバスをスタジオの床に2枚重ね、からだ全体を使った動きでキャンバスからキャンバスにその跡を移しながら表現している。さらに、太い線状の油彩で、鮮やかな色の層が足すことで、作品表面に深みと、厚く塗った色彩の力強い筆跡が加わり、作品の表面にダイナミックな、ほとんど彫刻的な質感を与え、結果として、複層的で陰影のある複雑な絵画が成立している。

シリーズのタイトルである「マニフェステイション」は複数の意味を持ちながらも数カ国の言語において「政治的抗議」の意味でもっとも多く使われており、これがタイトルとなることによって、作品と、自分がどういう人間かを表明する非常に身体的で具体的な実践とが結びつけられている。つまり、身体を使ったアクションが政治の力に変わっているのである。

ムリーリョは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的パンデミックの危機に際して、2020年3月からコロンビアの故郷ラ・パイラで、作品制作と人道支援活動の両方に従事してきた。また、2021年に入ると、コロンビアでは大規模な抗議活動が起こり、それを封じようとする国家の暴力によって人々の暮らしはますます困窮したものとなっている。これまでにも、自身の経験に基づいた制作活動を展開し、その絵画制作の方法を「エネルギーのダウンロード」と呼ぶムリーリョがこの期間に描いた新作が、本展で初めて公開されることとなる。

 

 


 

MAMプロジェクト029:オスカー・ムリーリョ
2021年4月22日(木)– 9月26日(日)
森美術館
会期中無休
企画:矢作学(森美術館アシスタント・キュレーター)

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