ピピロッティ・リスト:Your Eye Is My Island -あなたの眼はわたしの島- @ 水戸芸術館現代美術ギャラリー


 

ピピロッティ・リスト:Your Eye Is My Island -あなたの眼はわたしの島-
2021年8月7日(土)- 10月17日(日)
水戸芸術館現代美術ギャラリー
https://www.arttowermito.or.jp/
開場日時:10:00-18:00 入場は閉館30分前まで
休館日:月(祝日の場合は翌火曜)
企画:後藤桜子(水戸芸術館現代美術センター学芸員)

 

水戸芸術館現代美術ギャラリーでは、色彩に満ちた世界をユーモアたっぷりに切り取ってみせる映像と、心地よい音楽や空間設計による映像インスタレーションで国際的に広く知られるアーティスト、ピピロッティ・リストの30年以上にわたる創作活動を概観する展覧会『ピピロッティ・リスト:Your Eye Is My Island -あなたの眼はわたしの島-』を開催する。

ピピロッティ・リスト(1962年スイスのザンクト・ガレン州グラブス生まれ)は、身体、ジェンダーとセクシュアリティ、自然、エコロジーなど現代社会が直面する切実な問題を前に対立、停止、硬直するのではなく、既成概念を転換するユーモアや人間と人間ならざるものの間で交わされる視点の移動、観客が全身を弛緩させて作品に没入することを促す演出などを通じて、心もからだも緩めながら再考する空間をつくりだしてきた。リストは1980年代にウィーンの応用芸術学校、バーゼルのデザイン学校で商業美術や映像表現を学び、フリーランスで広報ヴィデオの制作に携わる傍ら、音楽バンドの舞台デザインや映像制作を手がけ、86年に自身を撮影した短編ヴィデオ作品《わたしはそんなに欲しがりの女の子じゃない》(1986)がスイスのソロトゥルン・フィルム・フェスティバルで受賞したことをきっかけにヴィデオ・アーティストとしての道に進む。1997年には第47回ヴェネツィア・ビエンナーレで、青いドレスに身を包んだ女性がクニフォフィアの花のかたちの鈍器で車の窓ガラスを愉しげに叩き割っていく《永遠は終わった、永遠はあらゆる場所に》(1997)と、波にたゆたう身体や色鮮やかな海中の様子に寂しげな楽曲を掛け合わせた《わたしの海をすすって》(1996)を発表し、ヴェネツィア・ビエンナーレ若手作家優秀賞(プレミオ2000)を受賞。その3年後にはニューヨークのタイムズスクエアで《わたしの草地に分け入って》を上映、そのほか、ポンピドゥー・センター前広場(2007)やニューヨーク近代美術館(2008)でも大規模なインスタレーションを発表。その後もニューヨーク近代美術館(2008)、ニュー・ミュージアム(2014)、チューリッヒ美術館(2014)、オーストラリア現代美術館(2016)、ルイジアナ近代美術館(2018)などで大規模な個展を開催している。日本国内では資生堂ギャラリー(2002)、原美術館(2007)、丸亀市猪熊弦一郎美術館(2008)で個展を開催し、瀬戸内芸術祭やPARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭2015でもサイトスペシフィックな作品を発表しており、その作品は原美術館、京都国立近代美術館、東京都現代美術館、金沢21世紀美術館などに収蔵されている。

 


ピピロッティ・リスト《永遠は終わった、永遠はあらゆる場所に》1997年、クンストハレ・チューリヒでの展示風景、1999年、Photo by Alexander Tröhler、京都国立近代美術館蔵 © Pipilotti Rist. Courtesy the artist, Hauser & Wirth and Luhring Augustinee


ピピロッティ・リスト《イノセント・コレクション》1985‒2032年頃 © Pipilotti Rist, All images courtesy the artist, Hauser & Wirth and Luhring Augustine

 

本展は、アーティストとしての道を進む契機となった短編ヴィデオから、鑑賞者の身体に働きかけ「知覚と感情の融合」を試みる近年の大型映像インスタレーションまで、本巡回展で初公開となる2作品を含むおよそ40点で構成。寝転ぶ、見上げる、覗き込む、映像を浴びるなど、従来の映像展示とは異なる体験、四角いフレームからの解放を企てる作品を通じて、「集まることで個々の人間がひとつの共同体として繋がるような仕組みを見出す」ための展示空間における経験の共有へと鑑賞者を誘う。出品作品には、前述した第47回ヴェネツィア・ビエンナーレで発表した《永遠は終わった、永遠はあらゆる場所に》や《わたしの海をすすって》のほか、没入型の映像体験をもたらすパノラミックなスクリーンに投影される、空や光、水、泥、動植物や虫、色鮮やかな花々、そしてそれらに触れ、浸り、重なり合う人間―人間とその環境 という共通した主題を扱う《もうひとつの身体》(2008/2015)、《不安はいつか消えて安らぐ》(2014)、《マーシー・ガーデン・ルトゥー・ルトゥー/慈しみの庭へ帰る》(2014)、ベッドに寝転んだ状態の鑑賞者に「まるでモネの《睡蓮》を水の下側から見たような景色」を見せる《4階から穏やかさへ向かって》(2016)など主要な作品が含まれる。

本展タイトルの「Your Eye Is My Island -あなたの眼はわたしの島-」は、リスト自身が提案した短い詩のようなもので、そこには複数の意味が込められている。「眼」は、活動初期から一貫して人間の眼を「Blood-driven Camera=血の通ったカメラ」と呼ぶリストの重要なテーマであり、「島」は複数の島で構成された日本という土地を示唆する言葉と捉えることもできる。リストによれば、他者の眼に映ること、まなざしを向けられることによって、私たちは自分自身の存在を発見し、また一方で誰かに対して視線を注ぐこと、心を配ることで、光さえ届かない「ブラックホール」からその存在を救出することができる。この詩的なタイトルが示唆するように、本展もまた、まなざしを介して各々の内面世界と外部的・集合的な世界とが出会う、展示空間におけるコミュナルな体験をもたらすものとなるだろう。

 


ピピロッティ・リスト《マーシー・ガーデン・ルトゥー・ルトゥー/慈しみの庭へ帰る》2014年、クンストハレ・クレムスでの展示風景、2015年、Photo: Lisa Rastl © Pipilotti Rist, All images courtesy the artist, Hauser & Wirth and Luhring Augustine


ピピロッティ・リスト《4階から穏やかさへ向かって》2016年、オーストラリア現代美術館での展示風景、2017年、Photo: Ken Leanfore © Pipilotti Rist, All images courtesy the artist, Hauser & Wirth and Luhring Augustine

 

関連プログラム ※新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の状況により内容が変更・中止になる可能性あり。
講演「Open My Glade -映像インスタレーションと観客のコレオグラフィ」
講師:星野太(美学、表象文化論)
2021年9月4日(土)14:00-16:00
会場:水戸芸術館 ACM劇場
定員:80名(要事前申込、先着順)※8月8日申込受付開始

鼎談「アーティストの視点でピピロッティ・リストを見る -I Can’t Agree With You More!-」
講師:高田冬彦、百瀬文(アーティスト)
聞き手:丸山美佳(批評家、キュレーター)
2021年10月2日(土)14:00-16:00
会場:水戸芸術館会議場
定員:50名(要事前申込、先着順)※9月2日申込受付開始

視覚に障害がある人との鑑賞ツアー『session!』
2021年9月26日(日)14:00-16:00
会場:水戸芸術館内
料金:1,500 円(展覧会の当日入場料を含む)
定員:5名(要事前申込・抽選)
※全盲の白鳥建二さんをナビゲーターに、見える人と見えない人が一緒に展覧会を鑑賞するツアー。

CACギャラリートーカーによる対話のプログラム
来館者と対話をしながら作品を鑑賞するツアーを担う市民ボランティア「CACギャラリートーカー」。非対面式による来場者との対話のプログラムを実施。詳細は後日発表。

アワアワしないアワー
2021年9月24日(金)、25日(土)各日:10:00-12:00
子ども連れやケアの必要な方が鑑賞しやすいよう、手伝うスタッフが見守る時間を設定。
予約不要、 詳細は後日発表。

 


ピピロッティ・リスト《(免罪)ピピロッティの過ち》1988年 © Pipilotti Rist, All images courtesy the artist, Hauser & Wirth and Luhring Augustine

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