日本初期写真史 関東編 幕末明治を撮る @ 東京都写真美術館


制作者不詳《東京向島》1882‐97年(明治中期)頃 鶏卵紙に手彩色 東京都写真美術館蔵

 

日本初期写真史 関東編 幕末明治を撮る
2020年12月1日(火)- 2021年1月24日(日)
東京都写真美術館 3階展示室
https://topmuseum.jp/
開館時間:10:00-18:00 入館は閉館30分前まで
休館日:月(ただし、1/11は開館)、年末年始(12/29-1/1)、1/12
企画:三井圭司(東京都写真美術館学芸員)
※新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大防止の観点から、木曜金曜の夜間開館(18:00-20:00)は休止中。最新情報は公式ウェブサイトを参照。

 

東京都写真美術館では、写真史や画像保存を専門とする高橋則英(日本大学藝術学部写真学科教授)の監修のもと、幕末明治期における関東地方の写真文化を三部構成で紹介する展覧会『日本初期写真史 関東編 幕末明治を撮る』を開催する。

東京都写真美術館は2006年度から2017年度にかけて、幕末明治期の写真を調査、考証する展覧会を4つの地方編(「関東」「中部・近畿・中国」「四国・九州・沖縄」「北海道・東北」)とそれらをまとめた『夜明けまえ 知られざる日本写真開拓史 総集編』を開催。写真の起源に焦点を当てたこうした企画は、美術的のみならず、歴史的な意義を持ち、100年以上の時を超えて存在する初期写真からさまざまな物語を読み解くことができる。本展では、約190点の初期写真および写真器材を通して、写真家の出身地(開業地)や制作地を手がかりに、関東地方(東京、神奈川、埼玉、千葉、栃木、茨城、群馬)に根付いた写真文化の広がりを展覧する。

 


左:ハーベイ・ロバート・マークス《慎兵衛(清太郎)像》1851-52年頃 ダゲレオタイプ 川崎市市民ミュージアム
右:ナダール《第二回遣欧使節 副使 河津祐邦》元治元(1864)年 鶏卵紙 東京都写真美術館


下岡蓮杖《(相撲)》1868-71年頃 鶏卵紙 東京都写真美術館蔵


江崎礼二《江崎写真館》明治中期(1882-97)頃 鶏卵紙に手彩色 東京都写真美術館

 

第1章「初期写真抄史」では、写真発明の起点を18世紀末にまで遡り、ダゲレオタイプやカロタイプなど最初期の写真技法の紹介から、写真技術の日本への伝播、写真館の登場を扱う。開港した横浜に登場した日本初の写真館で写真術を取得した鵜飼玉川は、日本人初の写真家として江戸で写真館を開業。文久(1862)年に、下岡蓮杖が横浜、上野彦馬が長崎にそれぞれ写真館を開業し、彼らを師とする第二世代が慶應から明治初年にかけて開業、さらに弟子を輩出するかたちで写真文化が日本に定着していった。第2章「関東の写真家」では、フェリーチェ・ベアトやベアトの元で研鑽した日下部金兵衛による手彩色によるカラー写真をはじめ、浅草、銀座などに開業した写真館、熊谷、水戸、日光、千葉、富岡に開業した写真館など、東京と関東一円を起点として普及していった写真文化を紹介する。第3章「初期写真に見る関東」では、横浜居留地内のニュース雑誌『ザ・ファー・イースト』と契約したミヒャエル・モーザーが日本中を取材した写真をはじめ、地域や公的機関の要請に基づいて写真を制作するようになった関東各地で誕生した写真家たちの残した写真を通じて、ペリー来航時の肖像写真から建設中の東京駅まで、幕末明治期の日本を概観する。

東京都写真美術館は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大を防止する観点から、本展の会期を当初予定されていた2020年3月から変更し、休止期間に本展担当の三井圭司(東京都写真美術館学芸員)によるギャラリートークをオンラインコンテンツとして公開した。このように活用されるインターネットを含む近年のデジタル技術の発達は、「写真」とその環境に劇的な変化をもたらしているが、一方で、写真が「モノ」としての質量をもっていたことや、一枚一枚に技術者の手による工程が含まれていたことを想像することは難しくなりつつある。そのような状況において、本展は、初期写真ならではの質感や存在感といった魅力を改めて体験する機会となる。

 


東京駅(丸の内)


宮内幸太郎《第二回全国写真師大会記念撮影》明治44(1911)年 コロタイプ印刷 東京都写真美術館

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