開館30周年記念展『ふたつのまどか―コレクション×5人の作家たち』@ DIC川村記念美術館


杉戸洋《Untitled》2019年 作家蔵

 

開館30周年記念展
ふたつのまどか―コレクション×5人の作家たち
2020年3月20日(金・祝)- 7月26日(日)
DIC川村記念美術館
https://kawamura-museum.dic.co.jp/
開館時間:9:30-17:00 入館は閉館30分前まで
休館日:月(ただし、5/4は開館)、5/7(木)

 

開館30周年を迎えるDIC川村記念美術館は、現在活躍する5名のアーティストの目を通じてコレクションを読み解き、時代をこえた作品同士の共鳴を体験する企画展『ふたつのまどか―コレクション×5人の作家たち』を開催する。本展に招聘されたさわひらき、杉戸洋、野口里佳、福田尚代、渡辺信子は、それぞれコレクションの中から特定の作品を選び、自作とともに各展示室でインスタレーションを展開する。

寓話的イメージを日常的な空間に織り込むことで、ありふれた風景を幻想的な情景へと映しかえる映像作品で知られるさわひらき(1977年石川県生まれ)。本展ではグレーの画面に左から右へ幾筋もの線が漂うサイ・トゥオンブリーの抽象絵画を選び、絵画と彫刻、初公開を含む映像作品の約5点とともに展示する。まったく異なる表現方法をとりながら、両者の作品は素っ気なさと親しみやすさ、不器用さと軽やかさ、単純さと繊細さ、無邪気さと丁寧さを併せ持ち、同一空間の中で重層的な時間の深さと広がりをつくりだす。続いて、自作の絵画作品と、それが存在する空間の関係性を探求する杉戸洋(1970年愛知県生まれ)は、ミニマリズムの彫刻家ラリー・ベルの初期キューブ作品を代表する《無題》(1969年)を選び、ガラスの金属蒸着加工により虹色の効果を放つその彫刻に呼応する複数の新作絵画を手がける。さらに、正方形の展示空間を対角線に分断するように高さ3m、幅7mを超える壁状の作品を設計し、置かれる場の光と空間を反映し、空間そのものを認識する装置として機能しうるベルの彫刻とともに、観客の光の存在への意識を喚起する。

 


さわひらき《Souvenir IV》2012年


サイ・トゥオンブリー《無題》1968年 DIC川村記念美術館 ©️ Cy Twombly Foundation

 

巨視的なアプローチから微視的なアプローチまでさまざまな写真表現を試みる野口里佳(1971年埼玉県生まれ)は、ジョアン・ミロを選択した。野口はかつてミロが晩年を過ごしたスペイン、カタルーニャ地方のマヨルカ島を訪ね、明るい光線のなかでその土地の持つ特別な力を感じとり、ミロの作品の根底にあるものに触れたように感じたと語る。本展では、ミロの《コンポジション》(1924年)に応答し、「飛ぶもの」と「宇宙と交信する木」をキーワードとする新作に取り組む。また、本や文房具に精緻で反復的な手作業をほどこした彫刻やオブジェ、コラージュで知られる福田尚代(1967年埼玉県生まれ)は、古書店や雑貨店で求めた書物や小さな品々を用いて、コラージュや箱の作品をつくりだしたジョゼフ・コーネルを選択。コーネルも好んで蒐集した素材である切手を用いて、コーネルの《ラ・シャット・エマイヨール》(1964年頃)と重層的に響き合うような新作《ラ・シャット・エマイヨールへの手紙》を発表する。そして、木枠に布の色彩、質感を選んで組み合わせ、絵画とも彫刻とも言い難い作品を展開する渡辺信子(1948年東京都生まれ)が選ぶのは、彼女自身が最も敬愛するエルズワース・ケリー。ハード・エッジと呼ばれるフラットな色面抽象で知られるとともに、早くから金属板製立体作品を制作し続け、絵画と立体の境界を軽々と超えてきたケリーの作品が、近年、布作品に加え、金属彫刻の制作にも着手する渡辺の作品と同一空間に配置されることにより、興味深い成果を引き起こす。

 


渡辺信子《White and Red》2017年 Arario Gallery 《Dark olive green and White -Corner piece》2017年 作家蔵 photo credit: Arario Gallery, Courtesy of Arario Gallery, Seoul


エルズワース・ケリー《ブラック・カーヴ》 1994年 DIC 川村記念美術館 © Ellsworth Kelly Foundation

 

関連プログラム
作家によるトークイベント
さわひらき(映像作家)
2020年3月21日(土)14:00
会場:DIC川村記念美術館 展示室
※入館料のみ、予約不要。当日14:00にエントランスホール集合

野口里佳(写真家)
2020年4月11日(土)
福田尚代(美術家)
2020年5月23日(土)
杉戸洋(美術家)
2020年6月13日(土)
渡辺信子(美術家)
2020年7月4日(土)
※詳細と予約方法は随時公式ウェブサイトで発表

学芸員によるギャラリートークやガイドスタッフによる定時ツアーなど、関連プログラム詳細は公式ウェブサイトを参照

 


野口里佳《クマンバチ #1》2019年 Commissioned by Reborn-Art Festival 2019 © Noguchi Rika, Courtesy of Taka Ishii Gallery


福田尚代《ラ・シャット・エマイヨールへの手紙》2009-2019年 作家蔵 ©Naoyo Fukuda, courtesy Yukiko Koide Presents

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